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更新日:2020.12.18食トレンド

ミシュラン三つ星の和食店が新感覚の和食の店をオープン【NK】東京・神楽坂|ニュースな新店

2021年度版ミシュランでも見事三つ星を獲得した【神楽坂 石かわ】。13年間三つ星を持ち続ける料理人石川秀樹氏に"天才"と言わしめた料理人がシェフを務める店がオープンした。その名は【NK】。炭と薪を駆使し、登場する料理は、日本料理にボーダーレスなエッセンスを加えたモダンなもの。極上ワインとともにめくるめくコースを楽しみたい。

NK

若き料理人の自由な感性から生まれる新感覚の和食

あまたの名店がしのぎを削る美食の街、東京・神楽坂。そのランドマークたる毘沙門天 善國寺の裏手に、2020年8月、一軒のレストランが静かに産声を上げた。名は【NK】。

ひっそりとした細い路地を奥に進み、控えめに記された店名を頼りに扉を開けると、真っ白なコックコートに身を包んだ若きシェフが笑顔で出迎えてくれた。角谷建人さん、34歳。巨匠・石川秀樹さんをして「天才」と言わしめた料理人である。

    【石かわ】グループで11年にわたって研鑽を積んできた角谷建人さん。

    【石かわ】グループで11年にわたって研鑽を積んできた角谷建人さん。

何が、「天才」という言葉を促したのだろう。単刀直入に訊ねてみると、角谷さんは次のように教えてくれた。

「いつかは店をやらせてみようと思ってくださっていたのかどうかはわかりませんが、あるとき石川が言ったんです。毎日食べてやるから、普通の和食じゃないものを作って持ってこいと。でも、僕は和食出身の料理人なので、やっぱり和食のエッセンスを大切にしたい。それで、和食をベースにしながら、勉強を兼ねて個人的に食べ歩いてきたフレンチや中華の要素を取り入れて、和や洋で括れないようなボーダーレスな料理を提案することにしたんです。すると、石川は面白がってくれたみたいで。有名テーマパークをもじり、僕にカク.ランドというニックネームまで付けてくれました(笑)」

なるほど、そういうことだったのか。というのも、【NK】の正式名称は【Nanpeidai Chef’s table featuring Kakuland】。【NK】が系列の西洋料理店【Nanpeidai】のシェフズテーブルであるということは理解できたが、“Kakuland”については謎だったのだ。

    薪の香りをつけたイクラとスダチのクリーム。

    薪の香りをつけたイクラとスダチのクリーム。

【NK】で提供される料理のメニューは、14皿ほどで構成される“おまかせコース”1本のみ。

一枚板のカウンターに向かって腰を落ち着けると、存在感のある焼き台が視界の中心に入り込んできた。角谷さんは、その前に立って薪や炭で火を起こし、料理に応じて奇想天外な演出を施していく。

思わず歓喜の声を上げてしまったのは、「薪の香りをつけたイクラと酢橘のクリーム」。フレンチの定番“キャビア×サワークリーム”の組み合わせにインスピレーションを得たというそれは、薪で燻した出汁で漬け込んだイクラと、その味わいを引き立てるために脂肪分の少ない酢橘風味のクリームを合わせたもの。イクラを噛んで薄い皮がぷちんと弾けた瞬間の薫香の広がりや、その厚みのある旨みとクリームの甘みや酸味との一体感が実に素晴らしい。「難しいことは何もしていないんです」と角谷さんは頭をかいて謙遜するが、まさにセンスが結晶した一皿だ。

スパイスに果物!? 型破りな驚きが待っている

    『甘鯛の松笠焼き』。基本に忠実に、皮をぱりっと、中をふっくらジューシーに仕上げているのはお見事。

    『甘鯛の松笠焼き』。基本に忠実に、皮をぱりっと、中をふっくらジューシーに仕上げているのはお見事。

角谷さんによる“わくわくする世界”はまだまだ続く。

例えば「甘鯛の松笠焼き」。和食ではお馴染みの一品だが、これも予定調和ではない。アフリカのミックススパイス“ラッセルハヌート”が香り、付け合わせに醤油ベースのジュレを纏ったドラゴンフルーツが用いられている。こちらの想像を軽々と超える組み合わせに、一瞬、奇を衒っているのかと勘ぐってしまったが、実際に口にして、すぐに反省することになった。ラッセルハヌートが松笠焼きの香ばしさを盛り立てていること、ドラゴンフルーツのほどよい甘さとねっとりした具合が、甘鯛の味わいとパリッとした鱗の食感を引き立てていることを実感し、角谷さんの自由な発想に拍手喝采したくなった。

    おまかせコースの前半に登場する『生からすみの冷たい素麺』。

    おまかせコースの前半に登場する『生からすみの冷たい素麺』。

また、「生からすみの冷たい素麺」にも心動かされた。

ボッタルガの冷製パスタを彷彿とさせるその料理は、卵の黄身でのばした生からすみのソースと、酢橘や胡麻油、塩昆布で味付けされた麺を合わせたもの。ハーモニー自体は和テイストだが、オリーブオイルやエディブルフラワーを取り入れると、和だか洋だかわからない “枠にとらわれない料理”になる。

固定概念にとらわれすぎず、もっと自由に発想していい。角谷さんの料理には、そんなメッセージも込められているのかもしれないと、ふと思った。

ワイン好きにはたまらない隠れ家

    ジュヴレ・シャンベルタンやシャサーニュ・モンラッシェなども、運が良ければグラスで味わえるかもしれない。

    ジュヴレ・シャンベルタンやシャサーニュ・モンラッシェなども、運が良ければグラスで味わえるかもしれない。

さて、美味しい料理とくれば、美味しいお酒が欠かせない。

【NK】には美食家たちを満足させるアイテムが揃っている。ワイン、日本酒、焼酎、ウイスキーとある中で、特筆すべきはワインの充実ぶりだ。店の入口付近には大きなワインセラーがあり、そこには【石かわ】グループ全店のボトルが勢揃いしている。お宝ワインも満載だ。

しかも、一般的にはボトル売りされているような銘柄が、ここではグラス売りされる。ワイン好きにはたまらないだろう。

    カウンター8席のほか、ウェイティングスペースも設けられている。

    カウンター8席のほか、ウェイティングスペースも設けられている。

想像を超える驚きを与えてくれる【NK】。オープンから4か月ですでに予約が取れない状態が続いているというが、それは仕方のないことと言えそうだ。

営業時間:18:00~/20:30~、土曜17:00~/20:00~の2部制
定休日:月曜、日曜、祝日
コース価格:2万9000円~

※最新の営業時間はお店に直接お問い合わせください。

この記事を作った人

撮影/大鶴倫宣、取材・文/甘利美緒

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