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更新日:2025.12.01旅グルメ 連載

スペイン・マドリード【マンダリン オリエンタル リッツ マドリード】 連載第83回

スペインの首都マドリード。大都市にもかかわらず、ヨーロッパの他の都市と比べて訪れる人は少なかった場所ですが、最近、旅慣れた人やアート関係者、そして食通などを中心に人気が高まっています。そういえばマドリードにはミシュランの星付きレストランが29件。スペイン料理にまた新しい動きが起きているのでしょうか。

ホテルの6階の部屋からプラド美術館を望む

マドリードはコンパクト・シティで、プラド美術館、王宮、国立ソフィア王妃芸術センター、スペイン広場などなど、メジャーな観光地はたいてい歩いて回ることができます。滞在場所を決めたら、そこを中心に歩いて街を体感できる気楽さも人気の一因かもしれません。治安もいいですし。

    スペイン・マドリード

    スペイン・マドリード

今回は【マンダリン オリエンタル リッツ マドリード】に宿泊し、ホテルライフを楽しみながら街を散策しました。

マドリードを代表するこのホテルには、これまた今のスペイン料理界を代表するシェフ、キケ・ダコスタ氏が監修する象徴的なレストラン【ディエッサ(Deessa)】があります。このレストランを中心に、屋外レストラン【エル・ハルディン・デル・リッツ(El Jardín del Ritz)】、アフタヌーン・ティーでも有名な【パームコート(Palm Court)】、そして美術館のようなバー【ピクトゥーラ(Pictura)】があります。ダコスタ氏はそれら全体をハーモナイズさせる監修者だということです。

キケ・ダコスタ氏は1972年生まれ、バレンシア地方の出身で、現代スペイン料理界を代表するシェフの1人。故郷デニアにある本店はミシュラン3つ星を獲得、とくに米(アロス)料理では多くの賞賛を得ている人です。

今回は【マンダリン オリエンタル リッツ マドリード】のメイン・ダイニングでの食事風景を中心にホテル、そして街の魅力について紹介したいと思います。

街の中心に建つ優雅な迎賓館

まず【マンダリン オリエンタル リッツ マドリード】ですが、スペイン国王アルフォンソ13世の命で建設された迎賓館のようなホテルで、いまはマンダリン オリエンタルが運営を引き継いでいます。随所にベル・エポック様式の意匠が散りばめられ、王宮に暮らすような優雅さに満ちています。

  • エル・ハルディン・デル・リッツ

  • エル・ハルディン・デル・リッツ

着いた日のランチは、天気もいいので白亜の建物の庭にあるレストラン【エル・ハルディン・デル・リッツ】で取りました。シャンパーニュでパエリアをいただきます。パエリアはダコスタ氏の故郷バレンシア地方が発祥とされている料理です。日本でも人気ですね。

それとペルーを代表する伝説のシェフ、ガストン・アクリオ氏のレシピによるセビーチェというメニューもあったので、それもいただきました。解放感と緑の安らぎのなかでいただくランチはとても気持ちのいいものです。

  • スペイン・マドリード

  • スペイン旅

  • スペイン旅

  • スペイン旅

少しシエスタをとり、夕方から街を散策しました。有名な生ハム博物館やサン・ミゲル市場などは人で溢れており、マッシュルームやチュロス専門店なども大賑わい。驚いたのはバールが増えていて、どこも満員です。夏の終わりの週末ということもあったのでしょうが、堅苦しいマドリードのイメージを払拭するには十分な散歩でした。

  • プラド美術館

  • ピカソのゲルニカ@国立ソフィア王妃芸術センター

次の日は美術館めぐりをしました。これはマドリードの旅の醍醐味のひとつ。実はこのホテルは隣がプラド美術館で、なんとホテルの最上階にいけば美術館を眼下に望むことができるのです。(写真トップ)

ベラスケスやゴヤといった名作が多く収蔵されたこのプラドをはじめ、ピカソのゲルニカが見られる国立ソフィア王妃芸術センターもすぐそば。

マドリードは本当にコンパクト・シティで、多くの見どころはすべて徒歩でいける場所にあるので、ひとつのホテルに宿泊して、のんびり街を散策するには穴場的な価値のある街なのです。

  • マドリード

  • コシード

王宮まで行ったついでに、郷土料理の老舗【La Bola】でコシードをいただきました。これは有名な郷土料理で、肉や豆を煮込んだシンプルなものです。煮込んだ壺ごと食卓に持ってきてくれ、まずはスープをのみ、それから中身を食べるというスタイル。郷土料理の豪快さがよくわかります。これだけでお腹がいっぱいです。

    パームコート

    パームコート

    パームコート

夜はホテルの【パームコート】で軽目の食事をいただきました。ここではホテルの伝統的な料理を現代風にしたものを中心に、アラカルトでオーダーが可能です。天井が高く奥にシャンパン・バーがあって、優雅な雰囲気です。

メイン・ダイニングでのディナー

    ディエッサ

次の日もホテルで過ごし、街を散策したあとにメイン・ダイニングの【ディエッサ】でディナーをとりました。国王アルフォンソ13世のサロンだった場所がこのレストランになっており、現在ミシュラン2つ星を獲得しています。

コンテンポラリー・メニューと題されたコースをいただきます。メニューにはApporoximtionと書かれていて、これは海、陸、森という自然の要素を食事に近づけるといった意味なのだそう。

    ディエッサのフィンガー・フード

シャンパーニュは「ルイナール ブラン・ド・ブラン」。砂浜の石や貝を模した皿に乗せられたフィンガー・フードは海のエキスの詰まったアイス。そこからスタートです。

  • ジルダ

  • 海のプリン

最初に出てきたのは、コックル(二枚貝)添のジルダと題されたもの。ジルダとは、バスク地方発祥のピンチョス(串刺しの軽食)のことで、青唐辛子、オリーブ、アンチョビに加えて小さな貝が一緒にささっているのが一般的なもの。それが海の香りの強いスープとして出されます。

2皿目は海のプリンですね。トーストしたポークチョップやきのこなどの塩味のあるブリュレ。甘い料理に塩気のあるものを使うのもダコスタ氏の特徴のひとつです。滑らかで香ばしい。

  • ビーツとディルのスープ

  • 赤エビ

3皿目はビーツとディルのスープです。冷静スープにケフィア(発酵乳)、アイスクリーム、サーモンが入っていて、ちょっと北欧っぽいイメージです。

そして、前菜に相当するものの最後は赤エビ。これはメニューにはなかったものですが、特別に用意していただきました。これはダコスタ氏の本店でも出す彼の代表作のひとつ。殻ごとやいたエビに、エビのジュ、ハーブ、青野菜などのスープといただきます。口の中が海感満載になりますね。

    魚卵の食べ比べ

次に登場したのは、魚卵の食べ比べです。マルーカの卵(ボッタルガ)に、キャビアはオシェトラ、アルビノ(白い魚卵)、それとハイブリッドなものが3種類。オシェトラはクラシックな感じですが、アルビノは実にミルキー、ハイブリットはそれぞれの味のいいとこどりの感じがします。
綺麗な酸を感じるマウロ ゴデーリョの白をソムリエが勧めてくれたので、それとあわせていただきます。

    海のエキスを感じる一皿

後半の最初は、最初のジルダに似た感じの海のエキスを感じる一皿。牡蠣の深い味に海藻などでつくられたクラッカーを合わせます。

パンも重要なコースのひとつと考えられており、出されたオリジナルのエキストラオリーブのパンには油脂のあまみや発酵の香りがします。

    舌平目

メインの一つでしょうか。白トリュフの香りをまとった舌平目です。熟成酒が使われたソースは優しく香り高く、深みのある一皿です。

    赤タコのリゾット

そして赤タコのリゾット。ダコスタ氏は米(アロス)料理の名人と言われた人で、これも彼の真骨頂の一つでしょう。出汁に干しダコの戻し汁が使われていますが、これはパエリアではなく、アロス・メロッソ(少し汁気のあるもの)で提供されます。海の記憶と発酵の香りにつつまれる深い味わいです。
モロッコのシラーでつくられたタンデムの赤を合わせてもらいます。

    鴨の料理

最後に登場したのは鴨の料理。「アルブフェラ産からマドリッドへの鴨」と題されています。アルブフェラ産の鴨は彼の故郷バレンシアを代表する食材で、そこにマドリードの名産であるベリーを掛け合わせた、ということのようで、これは彼の新しい場所での挑戦も感じられる一皿でした。

    デザート

すばらしいディナーでした。
デザートを2品、余韻を楽しみながらいただき、それからバー【ピクトゥーラ】へ移動しました。

    ピクトゥーラ

まるで美術館かと思うような美しいバーでソファに深く腰掛け、カクテルをいただきながら、このホテルに刻まれた歴史に思いを馳せてみます。長い余韻はいつまでも続くような気がします。

    ピクトゥーラのカクテル

【マンダリン オリエンタル リッツ マドリード】
住所: Plaza de la Lealtad 5, Madrid, 28014, Spain
電話: +34 91 701 68 88
https://www.mandarinoriental.com/en/madrid/hotel-ritz

この記事を作った人

小西克博/ヒトサラ編集顧問

北極から南極まで世界100カ国を旅してきた編集者、紀行作家。

大学卒業後に渡欧、北極から南極まで約100ヶ国を食べ歩く。共同通信社を経て、中央公論社で「GQ」創刊に参画。2誌の創刊編集長、IT企業顧問などを経て、現職。

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