試さずにはいられない! 「ヤザワミート」と【龍天門】出身のシェフがタッグを組んだ本格中国料理店|五反田【彬龍華66】
最高級黒毛和牛の卸として肉好きには言わずと知れた「ヤザワミート」が、2023年1月、初の本格中国料理店をオープン。それだけでも食指が動くのに、ウェスティンホテル東京の【龍天門】で腕を振るった中里卓氏を総料理長に迎え、あの担々麺を復活させるというじゃないですか! 筆者のミーハー心に火が灯り、喜び勇んで現地を訪ねてまいりました。
都会の喧騒を忘れさせる、モダンなチャイニーズレストラン
【彬龍華66】があるのは西五反田エリアの目黒川・谷山橋近く。ヤザワミートのファンにはお馴染みの【ミート矢澤】や【あげ福】と同じ通り沿いで、五反田駅から歩いて5分もかからない駅近ながら、周囲には落ち着いた雰囲気が漂っています。
シンプルながら風格を纏った【彬龍華66】の外観
エントランスから入ってメインダイニングへ進むと、黒を基調としながら赤やゴールドを差し色にしたスタイリッシュな空間が出現。円卓にかけられた純白のクロスが映え、「ここぞ」というときに相応しい趣です。
席数は46。テーブル席のほか、個室や半個室、生け簀を眺められるカウンター席もあります
黒毛和牛の目利きと中国料理界におけるトップシェフとの縁組
厨房を覗いてみると、そこには総料理長・中里卓氏の姿がありました。
中里氏は、赤坂プリンス、ウェスティンホテル東京など、数々のラグジュアリーホテルで経験を積み、グランド ハイアット 東京の【チャイナルーム】で料理長を務めた人物。また、2007年には台湾における料理の祭典「台湾美食展 世界厨芸邀請賽」で銀賞を、2019年には東京都知事賞を受賞するという、輝かしいキャリアもお持ちです。
中里卓氏は勉強熱心。斬新なアイデアを生み出して、伝統的な中国料理をさらなる高みへと昇華させます
なぜ、和牛の精肉卸「ヤザワミート」とタッグを組んで【彬龍華66】を手がけることになったのか。
聞けば、ヤザワミートの“行列請負人”として度々メディアでも取り上げられる井上彬さんと同じ中国料理店で働いていた縁で同社とめぐりあい、素材や料理に対する基本姿勢に共感。ウェスティンホテル東京の【龍天門】で働いていたときに師事した広東料理の“名匠”陳啓明氏を最高顧問に迎え入れ、本格的な中国料理のレストランを立ち上げるに至ったそうです。
今まで筆者は【ミート矢澤】【焼肉ホルモン稲田】【BLACOWS】【今福】【鉄板バル チェローナ】とヤザワミートが展開するレストランを訪ねてきましたが、いずれにおいても同社の飽くなき探究心に心を動かされてきました。それゆえ役者が揃ったこの【彬龍華66】には名店の誕生を確信せずにいられません。
【彬龍華66】の個室。このほかに誰にも会わずにたどり着ける秘密の裏導線を設えた部屋もあります
あの伝説の担々麺がグレードアップして復活!
では、肝心のお料理をご紹介しましょう。
何はともあれ、まずは「担々麺」。今から27年前、米・カリフォルニア州のウォルナッツ・コンテストでグランプリを獲得したクルミ入りの担々麺が、再現されているのです。今でこそクルミのペーストをブレンドするという手法は珍しくなくなりましたが、当時は常識破りであり、中里氏のアイデアが元祖。【龍天門】で提供されるようになると、多くの人が殺到しました。それだけを求める人があまりに多かったので、メニューから外されて“裏メニュー”になり、それでも注文する人が後を絶たなかったため、ついには廃止されてしまったという逸話も。そんな伝説の味が復活するとは夢のようではありませんか。
8割以上の客が注文するという『元祖 66くるみ担々麺』1,700円
ゴマとクルミを100gずつたっぷり使ったスープは濃厚かつクリーミーで、スムージーのごとし。小麦の味わいを生かすべく1%の微差にこだわったというオリジナルの香港麺と、自家製豆板醤の上澄みからつくるラー油と織りなすハーモニーに、恍惚とせずにはいられません。ぜひ、肉味噌にもご注目ください。ヤザワミートの目利きが発揮された岩中豚を朝挽きするというこだわりようなので、肉の旨みをしっかりと感じられます。“追いご飯”もおすすめです。
肉好きが拍手喝采したくなる黒毛和牛を使った料理も!
ここはヤザワミート直営店、肉料理を食べずしては帰れません。メニューによれば、厳選された黒毛和牛のリブロース、タン、モモをさまざまな調理法でいただける、とのこと。香港では生簀から新鮮な海鮮を自分で選んで好きに調理してもらえますが、そのスタイルから着想を得たそうです。この日は但馬牛をルーツとする田村牛のロースをXO醤で炒めていただきました。
その日に最もおいしい和牛のモモ肉(100g)を使用。『厳選和⽜モモ⾁ XO醤炒め』3,500円
口にすると、肉や野菜のピュアな旨みと、奥ゆきを感じさせる味わいに唸らされました。中国料理においては珍しく化学調味料を一切使わない“無化調”を貫いており、料理人のレベルの高さがうかがえます。
千葉の契約農家で特別に栽培された中国野菜を使用。丁寧に下ごしらえして一気に炒めあげます
中国の宮廷に伝わるソースとフカヒレの極上ハーモニー
中国料理の高級食材「フカヒレ」も中里氏の手にかかると、一筋縄ではいかない逸品に仕立てられます。
主役のフカヒレは収穫時期が限られる希少なモウカザメのヒレ。寒風にさらしてゼラチン質を豊富に含んだものを厳選し、中国の皇帝を長生きさせるために献上されていたという秘伝のソース(鴨や金華ハム、干し貝柱などから旨みを抽出したもの)で6時間煮込み、完成します。
宮城県気仙沼産 “毛鹿鮫”ふかひれ特大姿煮込み(1〜3名分)13,500円
よく熱した陶板にのって運ばれてくるので、グツグツという音や立ち昇る湯気に食欲が刺激されます。箸ですっと切れるほどやわらかく、スープをたっぷりと含んだフカヒレを口に運べば、たちまち繊維がほどけて濃厚な味わいが充満します。
ブームの予感!? シェフの感度の高さが表れたデザート
中里氏と話すといつも発見があり、その勉強熱心な姿勢に舌を巻かれるのですが、デザートメニューも見事です。例えば、香港発祥のスイーツ「エッグワッフル」。
ハチミツシロップと小倉あんをトッピングしていただく『名物 香港エッグワッフル』1,850円と『香港式ミルクティー』800円
日本ではまだ馴染みの薄いエッグワッフルですが、香港では原宿のクレープのようにストリートフードとして親しまれています。【彬龍華66】では、外はサクサク、中はフンワリかつモッチリした特徴的な食感を再現するために粉の配合にこだわったそう。ビジュアルのインパクトも満点ですよね。エバミルクを使った香港式ミルクティーと味わえば、特に香港スイーツのマニアは歓喜するのではないでしょうか。
メニューには、他にも北京ダックなどの贅を尽くした料理から、点心などのカジュアルな料理まで選択肢が豊富。コースでもアラカルトでも楽しめます。ここでしか味わえない、めくるめく中国料理をぜひ。この記事をまとめながら、筆者は【彬龍華66】のシグネチャー料理が揃ったスペシャルコース「THE 彬龍華66コース」を食べに再訪しようと考えているところです。
撮影/佐藤顕子 取材・文/甘利美緒
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