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伝道師・勝山晋作さんに聞く、自然派ワインの魅力に惹き込まれる名店10選 ~前編~

自然派ワインを日本に初めて紹介し、毎年イベントを開催するなどその伝道師として知られる勝山晋作さん。ワイン事情を知り尽くす彼が注目する、東京の自然派ワインシーンを牽引する店はどこなのか? 今回は10店に厳選し、聞いてみました。

勝山晋作さん

勝山晋作さんに聞く、自然派ワインの魅力に惹きこまれる名店10選 ~前編~

勝山さんが見る、ヴァン・ナチュールの現在

「『ヴァン・ナチュールとは何か?』という定義は非常に難しくて、色々な考え方がありますが、広義に捉えるならば、これからも発展していくのではないでしょうか。日本で、こんなにヴァン・ナチュールを置く店が増えるとは、ヴァン・ナチュールに携わり始めた25年前には考えられませんでした。

 ヴァン・ナチュールを取り巻く外食環境は、海外よりもむしろ日本のほうが進んでいる部分があります。海外のほうがワインが高いですからね。とくに北欧などと比べると、日本なら3分の2くらいの値段で飲めるんじゃないですか。だから、海外からのお客さんが日本の店に立ち寄ったり、日本での楽しみ方のスタイルが逆輸入されたりもしてますよ」

スタンディングで楽しむワインバー 2選


1.富ヶ谷【アヒルストア】

 店がある渋谷区富ヶ谷は、閑静な住宅街。そこに、いつでも賑わう小さなスタンディングワインバー【アヒルストア】はあります。連日、開店前から行列する盛況ぶりで予約もなかなかとれないほど。

 切り盛りするのは、ワインをセレクトする齊藤輝彦さんと、自家製パンを店で焼く妹の和歌子さん。スタンディングのお店とはいえ、兄妹の手で繰り出される料理の美味しさはビストロ顔負け、さらに、それに寄り添うぴったりな一杯を届けるお兄さんの輝彦さんのワイン選びのセンスも抜群です。

 大人が気取らずに楽しめて、居心地は抜群。初めて自然派ワインを飲む、という方も訪れやすいお店です。

「兄妹ふたりが色々な各国料理に興味をもっていて、たとえば妹さんはスリランカの料理だったり、お兄ちゃんは北アフリカの料理なんかも熱心に勉強してます。それが料理にも生きてるから、美味しいものが食べたければ彼らに任せとけば安心。ここに来ると自然と肩の力が抜けるというか、この空気感はほかにはないからつい寄りたくなるんですよね。とはいえ、男性が意中の女性を連れて行くときには、肩の力を抜き過ぎないようにね(笑)」

2.恵比寿【ワインスタンド・ワルツ】

 恵比寿の裏手の道沿いにある緑豊かな一角。ちょっとした椅子なども置かず、純粋なスタンディングスタイルでワインを楽しむわずか4坪の店は、まるで小さな異空間のようです。

 いたってシンプルな内装と料理ではありますが、ワインは稀少な一本から新時代のつくり手ものまでヴァン・ナチュールラバーも唸るほどの品揃え。自然派ワインのなかでもとくに個性の際立つ銘柄を常時10種類ほどが揃い、勝山さんも、店主・大山恭弘氏のワインに対する深い情熱を感じると言います。

 料理には、看板料理である季節食材の『ケークサレ』をはじめ日替わりで気の利いたアテを用意。インテリアやBGM、小物類にもさりげなく感じるセンスの良さ。恵比寿の遊び慣れた大人が通ってしまうのも納得の一軒です。

「店の装飾なんかにも余計なものがいっさいなくて、その分ワインへのこだわりと愛情をすごく感じますよね。店主の大山恭弘くんはセレクトが独特で刺激的、まるで“ワインの怪人”のよう。けれども、つくり手をしっかり見て、ナチュラルさの純度が高いものを選んでいるから面白いなって。ふっとひとりで立ち寄りたくなります」

深夜0時を過ぎても入れる店 2選


3.西麻布【葡呑(ぶのん)】

 広尾から西麻布にかけてのエリアの路地に建つ、古民家を改装した一軒家。店内は、古民家の趣きに加えて、吹き抜けやスタンディングスペースが現代的な洒脱さを感じさせる空間で、和食とワインを楽しみながら穏やかな時間が過ごせます。

 ワインのパートナーとなる和食は仕入れる食材により日替わりが並びますが、料理人の丁寧な仕事はいつでも同じ。素材の滋味深さが感じられ、改めてその食材の美味しさに気づかせてくれます。そして、ワイン選びに迷ったら、女将の熊坂さんに聞けば笑顔で色々教えてくれるので、ヴァン・ナチュール初心者でも安心。

 週末(木~土曜)のラストオーダーは深夜2時。この店のもつ魅力がそうさせるのか、0時を過ぎてからはますます賑わいます。

「店主の中湊くんと着物姿のサービス・くまちゃん、ふたりの良い雰囲気がじつによく反映されてるお店。だから、週末は深夜2時頃までやってるけど閉店間際まで賑わいが絶えないし、初めて訪れる人にも、その居心地の良さがしっかり伝わってきます。近くのジャズ・クラブ『ブルーノ―ト』で演奏するミュージシャンのなかにも、来日のたび【葡呑】に訪れる方も多いみたいです」

4.渋谷【リベルタン】

 古着店やカフェなどおしゃれな店が並ぶ、渋谷のキャットストリート。そこから1本裏に入った道沿い、ブルーの外観がこのお店の目印です。火を使う料理は22~23時でラストオーダーですが、営業は深夜2時まで。ラストオーダーの後は、生ハムなど軽いつまみとワインで、といった使い方もできます。

 店主を務める紫藤喜則シェフは、代々木上原【ル・キャバレー】や高田馬場【ラミティエ】で腕を磨き、2011年、この地に【リベルタン】を開店。塩コショウだけでおいしいのが、食材選びの基準。それだけに、選定には並々ならぬこだわりがあります。「岩中豚」や「山形牛」、四季折々の野菜などを、シンプルかつダイレクトに、素材の味が伝わるように仕上げていきます。

 大地の力を凝縮したような料理には、やはり大地の味を感じるワインがよく合います。揃える種類は多くないものの、店主みずからが納得したもののみを揃え、なかにはめずらしい銘柄も。豪快な大皿料理とワインで賑やかに過ごすのが、この店の楽しみ方です。

「自然派ワインの店というよりも先に、ビストロとして非常に良いですね。夜中にふらっと行ける使い勝手の良さもあるし、料理はもちろん美味しい。そしてなにより、店主の紫藤くんが誠実で気持ちのいい男なのも大きい。店の雰囲気にも彼の人柄が出てるから、居心地よくてついつい腰を据えて飲んじゃいます。“静かな異空間”という言葉がよく似合います」

勝山晋作さん プロフィール

  • つくり手との繋がりをゼロから築き上げ、日本に初めて紹介した第一人者。六本木のビストロ【祥瑞】、外苑前の広東料理店【楽記】のオーナーにして、ヴァンナチュールの祭典「フェスティヴァン』の主宰者でもある。

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