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伝道師・勝山晋作さんに聞く、自然派ワインの魅力に惹き込まれる名店10選 ~後編~

自然派ワインを日本に初めて紹介し、毎年イベントを開催するなどその伝道師として知られる勝山晋作さん。ワイン事情を知り尽くす彼が注目する、東京の自然派ワインシーンを牽引する店はどこなのか? 今回は10店に厳選し、聞いてみました。

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勝山晋作さんに聞く、自然派ワインの魅力に惹きこまれる名店10選 ~後編~

洗練された雰囲気が魅力のおしゃれなビストロ 2選


5.代々木上原【ル・キャバレー】

 代々木上原を歩いていると住宅街に突然現れる一画。店先に設えられたベンチと簡単な机、さながらパリの街角にある店を、そのまま日本に持ってきたようなビストロがあります。

 店の名は【ル・キャバレー】。夜ごとに賑やかな明かりがともり、店内はワインを片手に笑いあう大人たちで活気づきます。店の前を通れば、ワインが苦手な人ですら「ちょっと飲んでってみても良いかな」という気持ちにさせられます。

 サービスの坪田泰弘氏は、六本木の名ビストロ【祥瑞】でオーナーの勝山さんとともに、自然派ワインの黎明期とも呼べる時代を盛り立ててきた名ギャルソン。知識は言わずもがなで、ワインについて尋ねれば、ひいき目なしにワインの個性を的確に教えてくれます。

バーカウンターでふらっと軽く一杯。はたまた、おいしいビストロ料理とワインでゆっくりと。初心者からワインマニアまで、しっかりと満足させてくれる名店です。

「しゃれた大人たちが集まるのに、小難しい顔でワインを飲んでる人はひとりもいない。それを見るたびに『あぁ、素敵なお店だな』って感じさせてくれます。この雰囲気は、店主の細越さんとソムリエ・坪田くんの名コンビが醸すもの。店を見渡せば、細越さんの美学が詰まってて、そのなかで坪田くんに選んでもらったワインを飲むのは、とても居心地が良いんです」

 

6.目黒【ル・ヴェール・ヴォレ・ア・トーキョー】

【ル・ヴェール・ヴォレ・ア・トーキョー】があるのは、目黒駅から少し離れた目黒通り沿い。赤を基調とした店内や、値段が書かれたワインボトルをリスト代わりにするのは、パリにある本店とスタイルを同じくしています。

 黒板に並ぶのは、一部を除いて数日ごとに入れ替えるというビストロらしいアラカルトメニュー。なかでも、テリーヌ形の名物ブラッドソーセージ『ブーダンノワール』は、カリッと焼き上げた表面としっとりした中身の異なる食感が楽しい一品。臭みもなく濃厚な味わいに、大地の味わい豊かなワインが呼応。順に口に含めば、至福の時間が訪れます。

 ワインのつくり手たちもよく足を運ぶというパリ本店で、3年半以上にわたり務め店を支えたというサービスの宮内亮太郎氏。そこで出会ったつくり手たちの話を交えつつ注いでもらえば、ワインの味わいをいっそう楽しむことができます。

「パリの本店で、一時期スタッフとして店を支えていた宮内亮太郎くんが出したお店。彼は研究にも余念がないし、グラスワインをお願いすれば、どんぴしゃのやつが登場する。ワインばかりでなくシェフのつくる料理も手が込んでいてぬかりない。集まるお客さんも含めて、素敵な感じが目黒通り沿いという場所によく似合っています」

 

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7.飯田橋【メリメロ】

 フランスで“ごちゃまぜ”という意味をもつ【メリメロ】は、有機野菜でつくる滋味深い料理を自然派ワインとともに楽しむビストロです。オーナーシェフの宗像康雄氏は、食材に対するこだわりを大事にする料理人。

 阿蘇のふもとから届く野菜や、網釣りではなく傷のつきにくい一本釣りで水揚げされた魚介など、使う食材は生産者のもとまでみずから足を運び、良いと思ったものだけを厳選しています。

 その食材に対するこだわりがしっかりとお客さんまで伝わっていることは、連日盛況のランチの様子を見ても明らか。ランチメニューのラインアップにも、毎日訪れても飽きさせないような工夫があります。

 そして、造詣が深いのは料理と食材だけではありません。1990年代前半のフランス滞在中の頃から自然派ワインに親しみ、その芳醇で味わいに魅了されてから早20年以上。店内に備えられた2畳ほどの広いワインセラーは、そんな宗像氏が選んだこだわりのワインで埋め尽くされています。

 シェフのつくる料理とシェフの選ぶワイン。その相性に間違いがないのは、言うまでもありません。

「シェフの宗像くんは、食材とワインに対するこだわりがなにしろ強くて、聞けばどういうつくり手なのか、大体詳しく知っています。店にソムリエはいませんが、20年以上前から自然派ワインに馴染んでるし、ちゃんとその全体像を掴んでるから、なにしろ安心。ランチは混み合うけど、昼からつい飲みたくなるようなビストロですよ」

 

8.西荻窪【オルガン】

 三軒茶屋で人気を博すワインビストロ【uguisu】のオーナーでもある紺野真氏が開いた2軒目のワインビストロ【organ】。西荻窪の商店街の一角にあるそのお店は、手づくりのテーブル、リサイクルショップで手に入れた不揃いの椅子が並び、オーナーの独創的な感性が遺憾なく発揮された空間。

 心地よいクラフト感に囲まれて味わう料理は、定番の『ブーダンノワール』など前菜は1000円前後、メインは2000円前後という良心的な価格設定。しかし、食材にはしっかりとこだわりがあり、魚は鮮度と質を求めて築地で、旬のおいしさあふれる野菜は、自家菜園で育てたものも使っています。

 そのため、仕入れる食材次第でアラカルトの料理は日替わり。ワインはほぼフランス産のヴァン・ナチュールで、グラスワインを毎日10種類以上も用意しています。

「出店するときから西荻窪に馴染みがあった訳じゃないのに、すっかり街に溶け込む店として確立されてる不思議なお店です。自然派ワインを求めて集まる人ばかりじゃなく、ビストロとして地元の人からも愛されるような存在になってます。スタッフにも良い子たちが集まるし、店主の紺野くんの“人間力”っていうものを感じざるをえないですね」

 

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9.水天宮【ラ・ピヨッシュ】

「すべてにおいて、なるべくナチュラルであること」。【ラ・ピヨッシュ】の店主・林真也さんが掲げるコンセプトには、難しく考えずただ客も自分も自然体でありたいという思いがしっかりと反映されています。

 使うほどに味わいを増す一枚板のカウンターをはじめ、店内は木を基調としたお手製のインテリアに囲まれ、気負いないサービスとともに冒頭のコンセプトどおりゲストの心をほぐします。そして料理もまた例外ではなく、黒板に並ぶ食材生産者の名前を冠した数々のメニューは、味わいから食材の力強さがありありと感じられます。

 とくに肉料理は豪快。日替りで7~8種ほど手づくりのシャルキュトリーがのる『お肉屋さんの前菜盛り』のほか、炭火で焼かれた自家製の熟成豚肉も必食の逸品。塩加減を少し控えめにすることで肉の個性的な旨みを際立たせ、プリミティブな感性に訴えるような刺激的な味わいです。

「自然派ワインは、同じつくり手でも年によっても味が違うし、もっと言えば瓶によっても味が違う。時間の経過でもどんどん味が変わってしまうけど、その変化を見極め、絶妙のタイミングでコルクを抜いて出してくれる。これは、ちょっとやそっとで身に付くものではなくて、店主の林くんに、ワインに対する深い愛があるからです。その愛に包まれたら、『あぁ、今日は【ラ・ピヨッシュ】で落ち着いて飲もう』という気分にさせてくれるんです」

 

10.六本木【祥瑞】

 六本木ミッドタウン近くのビルの2階。雑踏から隠れるように佇むドアを開くと、店内からは心地よい賑わいがゲストを迎えます。週末ともなれば予約がとれない店として1993年の開店以来、この地で人気を博すビストロ【祥瑞】です。

 多くの客のめあては、自然派ワインと熟成肉のステーキ。席まで運ばれる生の肉塊は、グラム数が明示されており、注文すると切り分けずにそのまま多めの油で焼かれます。そのため、表面が揚げたようにカリッと、中は熟成期間に凝縮されたとろけるような肉の旨みが特徴です。

 勝山晋作さんがオーナーを務める同店では、客の喉を潤すのは言うまでもなく自然派ワイン。オープン当初は勝山さんみずから厳選していたワインも、現在は渋谷【リベルタン】(前編にて紹介)でも活躍したサービスの柴山建矢氏がリストを管理。豊富な知識と感性でゲストの要望に的確にこたえるそのワイン選びも見事です。

「オープン当初、オーナーとして私が店に立っていた頃からだいぶスタイルも変わりました。長く店をやっていると色々ありますが、時代時代、店づくりのことを真剣に考えてくれるスタッフばかりが縁あって集まった。でも、それはきっと偶然じゃありません。店自体に宿る何かがあるとすれば、【祥瑞】には、そういう見えない力があると思っています」

 

勝山晋作さん プロフィール

  • つくり手との繋がりをゼロから築き上げ、日本に初めて紹介した第一人者。六本木のビストロ【祥瑞】、外苑前の広東料理店【楽記】のオーナーにして、ヴァンナチュールの祭典「フェスティヴァン』の主宰者でもある。

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