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更新日:2017.08.17旅グルメ

<富山のご当地グルメ>「白えび」を食べに緑輝く富山へ

新緑から深緑へ。自然が生き生きと輝くこの季節に訪れたいのが富山県だ。高山植物の宝庫である立山黒部アルペンルートやトロッコ列車が走る黒部峡谷など、富山県ならではの壮大な山岳パノラマが展開。“富山湾の宝石”とよばれる「白えび」も漁期を迎えている。

<富山のご当地グルメ>「白えび」を食べに緑輝く富山へ

とろりと甘くて美しい。地元でも高級魚として扱われる名物の「白えび」

    白く透き通るよう。小さいので皮むきなどの加工も手間がかかるという

    白く透き通るよう。小さいので皮むきなどの加工も手間がかかるという

 世界でも富山湾でしか漁が行われないといわれるのが、“富山湾の宝石”と称される白えびだ。体長は5~8cmと小さく、名前の通り、白く透き通るように美しい色をしている。“プリンセス”とでもよびたくなるこのかわいらしいエビは、鮮度が落ちるとすぐ黒ずむので、本物の色と味を楽しむなら地元で味わうのが一番。

    かき揚げにするとまた違った味わい。甘みとうま味が凝縮され、パリッとした食感も楽しめる

    かき揚げにするとまた違った味わい。甘みとうま味が凝縮され、パリッとした食感も楽しめる

 漁期は4月~11月で、生で食べるととろりとした食感だ。そして何といっても特徴的なのがこの上なく上品な甘み。富山市内の料理店に入ると、刺し身やかき揚げ、また汁物のダシとして使った料理も出てくる。

鮮度抜群のままで魚を水揚げできる富山湾は、まさに“天然の生簀(いけす)”

    立山連峰に見守られるように広がる富山市。写真は呉羽山からの風景

    立山連峰に見守られるように広がる富山市。写真は呉羽山からの風景

 白えびに代表されるように、富山県はグルメも景色も個性的だ。その大きな要因の一つが地形。標高3000m級の山々が連なる立山連峰から深さ約1000mの富山湾まで、落差4000mのダイナミックな大自然が県内にぎゅっと凝縮されている。

 特に富山湾は海岸から一気に水深1000mまで落ち込む独特の形状をしている。湾内に水深差があるため、海面近くは暖流系、深海は冷水系の魚が生息し、日本海の800種の魚介類のうち、約500種が棲むという。立山連峰から絶えず流れ込む栄養豊富な水も魚の生息に役立つ。

    四季を通じてさまざまな富山湾の魚貝が味わえる

    四季を通じてさまざまな富山湾の魚貝が味わえる

 しかも、海底には“藍瓶(あいがめ)”とよばれる入り組んだ海底谷があって、ここが魚介類の格好の住処になり、白えびもここに生息している。
 
 富山湾では、漁場までの距離が近いので、漁をして鮮度が落ちる間もなく寄港できる。まさに“天然の生簀(いけす)”から魚をすくうように運べるのが、富山の魚がおいしい秘密だ。

昆布〆も富山名物。昆布の食文化をもたらした北前船の歴史も息づく

    白えびを、昆布を削ったおぼろ昆布で〆てある

    白えびを、昆布を削ったおぼろ昆布で〆てある

 富山らしい贅沢な一品といえるのが、白えびの昆布〆だ。富山県の人たちは昆布が大好きで、おやつとして小さく切った昆布を持ち歩く人もいるほど。江戸時代、北前船で北海道産の良質な昆布が運ばれてきたことで、昆布を食べる文化が息づいたといわれる。

    旧北国通りに面して立つ森家。ひときわ目を引く風格あるたたずまい

    旧北国通りに面して立つ森家。ひときわ目を引く風格あるたたずまい

 北前船は、江戸から明治時代にかけて、北海道や日本海沿岸、瀬戸内海、大阪を結んで航海し、物資の輸送に活躍。大きな文化交流ももたらした。富山市の岩瀬は、日本海有数の北前船交易の港町として栄えた歴史があり、今も往時の面影を色濃く留めている。
 
 岩瀬浜まではJR富山駅前から路面電車「富山ライトレール」に乗って約20分。旧北国街道の大町新川町通りに、かつて廻船問屋だった森家が公開されている。明治11年(1878)建築の建物は国の重要文化財に指定されている。

  • 「オイの間」では吹き抜けの天井から自然光が降り注ぐ

    「オイの間」では吹き抜けの天井から自然光が降り注ぐ

  • 庭石や蔵の「こて絵」など凝った造りが繁栄の歴史を物語る

    庭石や蔵の「こて絵」など凝った造りが繁栄の歴史を物語る

 内部は、太いクロマツの梁組みがみごとな「オイの間」の吹き抜けなど、豪壮な造りに目を見張る。岩瀬の廻船問屋では、積みだす船荷のために、玄関から裏の船着場まで“通り庭”と呼ばれる土間廊下が延びているが、森家ではそれが香川県小豆島産の一枚岩の御影石だ。ほかにも屋久杉の岩戸や京都鞍馬の庭石など、全国から運ばれた建築資材が使われ、北前船での交流が実感できる。

 当時、岩瀬からは北前船で米が運ばれ、北海道の昆布やニシンが多く入ってきたという。1航海で約1億円の商売になったのだとか。

 森家から海岸線に出ると、富山港展望台があり、岩瀬の街並みや富山市街の向こうにそびえる立山連峰まで、爽快な景色が望める。

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この記事を作った人

取材・文/中元千恵子(フリーライター)

旅行ライターとして25年、日本各地を取材。郷土料理や伝統工芸品など風土が育んだ文化の記事を得意とし、旅行雑誌や新聞に寄稿している。各地の特産品を販売する自治体アンテナショップの取材歴も長く、“アンテナショップの達人”としてTVやラジオにも出演。

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