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更新日:2017.07.27旅グルメ

<鳥取・岩美のご当地グルメ>幻のモサエビと夏輝を求めて

全国には、その土地を訪れないとなかなか味わえない料理や食材がある。土地の気候風土が創り出し、長い年月、愛され続けてきた郷土の名物たちには、それを味わうために旅に出かけてみたいほど魅力的。鳥取県岩美(いわみ)町の名産品であるモサエビもその一つだ。

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焼いてもとろりとした食感、そして濃厚な甘みの「モサエビ」

 モサエビの正式名称はクロザコエビ。なぜモサエビとよばれるようになったかは定かではないが、少しごつごつとした頭の形が“猛者(もさ)”を連想させたのかもしれない。

    モサエビのうま味がダイレクトに味わえる造り ©岩美町観光協会

 少し茶色っぽくて見た目は武骨だが、味は絶品。とろりとしているのに噛めばぷりっと弾力があって、濃い甘みとうま味が舌に広がる。よく甘えびと比較されるが、甘えびよりも歯ごたえがあり、甘みが濃厚なのに後味がすっきりしている。

 鮮度の劣化が早いために遠隔地に輸送することは難しく、地元以外にはあまり出回らなかった。そのため“幻のエビ”とよばれている。

    陶板焼きも人気の食べ方 ©鳥取県

 モサエビは9月~5月に水揚げされる。冬は松葉ガニの存在に隠れてしまいがちだが、漁期には町内の食事処や民宿、温泉旅館でお造りや塩焼き、鍋物、フライなどさまざまなに調理して出されている。

息をのむほど美しいリアス式海岸が極上の”海の幸”を育てる

 個人的には、もさエビを食べに岩美町に行くなら5月がおすすめだ。

「え、でも漁期の最後のほうでしょう?」と思われるだろうが、岩美町が誇る海岸美を楽しむにはこの季節が最適と思うからだ。

 山陰地方の海岸線には、京都府から鳥取県にかけて“山陰海岸ジオパーク”とよばれるエリアがある。ジオパークは、科学的に特に重要で美しい地質遺産を多く含む自然公園の一種。

    山陰屈指の景勝地といわれる浦富海岸。青い海と菜種五島の風景

 この山陰海岸ジオパークのエリア内で、屈指の景勝地といわれるのが岩美町の浦富(うらどめ)海岸だ。約15キロメートルにわたってリアス式海岸が続き、断崖絶壁や洞門、奇岩などが見られる。国の名勝及び天然記念物にも指定されている。

 例年、5月には浦富海岸を歩く「浦富海岸ジオウォーク」が開催されるが、このイベントに参加して初めて海岸線を目にした時の感動は忘れられない。
 
 出発地点である田後(たじり)港から高台の城原(しろわら)展望所へ歩くと、視界が開け、眼下に城原海岸と菜種(なたね)五島とよばれる離れ岩が現れる。海の青さと砂浜の白さ、新録のコントラストは息をのむほど美しい。

    遊歩道沿いに驚くほど澄んだ海と奇岩の風景が続く

 海沿いに下って遊歩道を進むと、静かな入り江に大小の岩が点在する箱庭のような鴨ヶ磯や、嶋崎藤村がその景観に感激して命名したという酒宴(さかもり)洞門など、変化に富んだ景色が続く。海水は驚くほど澄んで、海底の砂粒まで見えそうだ。透明度は水深25メートルといわれている。

    遊覧船からの風景は一段とダイナミック

 海岸線のダイナミックな風景は、島めぐり遊覧船から見ることもできる。

旬の魚介満載の夕食。夏は牡蠣”夏輝”がシーズンを迎える

 景色と同様に驚いたのが、宿泊した民宿「さんげんや」の夕食だった。ご家族で営む小ぢんまりとした宿で、宿泊料金はリーズナブル。けれど、夕食は「これが一人前?」と思うほど海の幸が盛りだくさん。さすが漁業の町だ。

    この日はモサエビのほか、アゴの造り、ハタハタの寿司など手作り料理が並んだ

 もちろん、水揚げされた魚の種類によって内容は変わるそうだが、経営する三浦さんご夫妻は「岩美の新鮮な魚介をたくさん召し上がっていただきたい」と、お造りや煮物、焼き物など、旬の魚介を使ったさまざまな料理を用意するそうだ。
 
 この日は塩焼きやフライでモサエビをたっぷりと味わった。モサエビは焼いても身がとろりとしている。ほかにはない味わいだ。

  • 「さんげんや」を営む三浦さんご夫妻

  • 玄関ののれんが目印

 モサエビが味わえるのは5月末までだそうだが、6、7月には「夏輝(なつき)」とよばれる天然岩ガキがシーズンを迎えるとのこと。
 
 リアス式海岸で岩礁が多く、しかも水の澄んだ岩美の海はカキが育つ絶好の条件がそろっている。身が大きく、ぷりぷりの食感と濃厚な味わいで、こちらもファンが多いそうだ。
 
 岩美町では、海の恵みを目と舌で楽しめる。

    濃厚なうま味とぷりぷりの食感。ビールと一緒に味わいたい ©岩美町観光協会

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この記事を作った人

取材・文/中元千恵子(フリーライター)

旅行ライターとして25年、日本各地を取材。郷土料理や伝統工芸品など風土が育んだ文化の記事を得意とし、旅行雑誌や新聞に寄稿している。各地の特産品を販売する自治体アンテナショップの取材歴も長く、“アンテナショップの達人”としてTVやラジオにも出演。

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