ピンチョスもあり、パエリアもあり。多彩な料理を楽しむ最旬スパニッシュ|人形町【コングスト】
江戸情緒を湛える老舗もあれば新しいスタイルの商業施設も登場し、新旧が織りなすグルメスポットでもある人形町。この街に、2023年10月に登場したばかりの1軒が早くも注目を集めています。それがスペイン料理店の【コングスト】。オーナーシェフの坂田慎吾さんは、神楽坂【エルプルポ】、【エルブエイ】、銀座【スリオラ】、そして鎌倉【アンチョア】で腕を磨いた経歴の持ち主と聞けば、アンテナの鋭いおいしいもの好き達が続々と足を運ぶのも納得です。
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バルからモダンスパニッシュまで、幅広い経験を生かした多彩な料理
料理との相性を考えたスペインワインに、熊本生まれのお酒をプラス
デイリーにもハレの日にも楽しめる、オープンキッチンを望むカウンター
バルからモダンスパニッシュまで、幅広い経験を生かした多彩な料理
調理からサービスまで、坂田さんが一人でこなすワンオペレーション
人形町駅から歩いて3分ほど、篤く信仰される小網神社のほど近くにオープンした【コングスト】。通りに面する1階ながら階段を数ステップ上がるアプローチからドアを開けると、全14席のカウンターに囲まれた厨房で迎えてくれるのが坂田さん。坂田さんが一人で切り盛りするこちらでは、メニューは8,800円のコースが主体。その一部を紹介します。
『ピンチョス盛り合わせ』。目も舌も楽しませてくれるピンチョスは、時季によって内容が変わる
カヴァのグラスを手に、バル気分で食べ進めるのも楽しい『ピンチョス盛り合わせ』。この日は、ピンチョスの定番であり原型とされる、青唐辛子の酢漬け・アンチョビ・オリーブを串に刺した「ヒルダ」、ツナや玉ねぎなどをフィリングにしたパイ「エンパナーダ」、自家製チョリソーを詰めて揚げた手羽先、磯つぶ貝、マルコナアーモンドを添えたメジマグロの生ハム、ムール貝のコロッケという6種類が一皿に。
『ピキージョ』。初訪問時には必ずコースに組み込まれる、シグニチャー的な一品
赤ピーマンに詰め物をして仕上げた『ピキージョ』を目にして、ピンときた人もいるかもしれません。『ピキージョ』は【アンチョア】のシェフ、酒井さんのスペシャリテ。タラと海老のすり身を詰めて、色鮮やかなソースをあしらう【アンチョア】の一品と異なり、坂田さんの『ピキージョ』は郷里である熊本産の馬ほほ肉とタンを詰め、馬肉を煮込んだ出汁ベースのコンソメソースをかけて。ほろりと柔らかなほほ肉に角切りにしたタンの食感がアクセントになり、ソースがさらなる深みを与えています。修業先へのオマージュを捧げつつ、オリジナリティあふれる新たな味に作り上げています。
『イカ墨のパエリア』。炊き上がるとまず鍋ごと登場。それから坂田さんによって皿に取り分けていただける
真っ黒なヴィジュアルがインパクト絶大な『イカ墨のパエリア』。お米にイカ墨とゲソ、魚介のだしを加えて炊き上げた、〆の一品です。あれこれと具材を加えていないからこそ、米がイカ墨の濃厚な旨みがストレートに味わえます。ガーリックが効いたアイオリソースと相性抜群!
パワフルな味わいに、思わず赤ワインが進みます
カジュアルなバルの【エルプルポ】や【エルブエイ】、モダンスパニッシュを展開する【スリオラ】、地素材を生かした郷土料理が楽しめる【アンチョア】と、ジャンルの異なるスペイン料理店を経て、「それぞれのいいとこどりができれば」という坂田さん。
さらに、生まれ育った地で培った人とのつながりによって届く、熊本素材を要所に使うことで独自の味わいを生んでいます。
コースは他に、アミューズ、冷菜、魚料理、肉料理、デザートから構成されていて、季節や訪問回数によって内容が変わります。
料理との相性を考えたスペインワインに、熊本生まれのお酒をプラス
<左から順に>グラモナ「マルト」、エンビナーテ「タガナン・ブランコ」、イサック・カンタラピエドラ「アレニスカ」
料理とともに、グラスを重ねて楽しみたいのはやはりワイン! スペインに根ざしたメニューに合わせるならばワインも同じ土地のものをと、セラーにずらりと並んだラインナップはほぼスペイン産だそうです。バスクのバルでお馴染みの微発泡ワイン「チャコリ」から、白・ロゼ・赤まで、料理や好みに添うものを提案していただけます。
<左から順に>熊本ワイン「マスカットベーリーA 樽熟成2018」、「菊鹿カベルネ 樽熟成2020」、「菊鹿シャルドネ 樽熟成2021」、JA「ごぼうのお酒 バードックエール」
馬肉、あか牛、野菜類など、坂田さんの出身地である熊本の食材を料理に取り入れているように、お酒にも熊本産のものがお目見えするのがこちらならでは。熊本ワインファームの菊鹿シリーズをはじめ、ごぼうや阿蘇米を素材にしたクラフトビールなど、都内のレストランでは目にするのも珍しい一杯はいかが?
21時以降はアラカルトメニューがオーダーできるので、ワインバーのように2軒目として立ち寄れるのも魅力です。
デイリーにもハレの日にも楽しめる、オープンキッチンを望むカウンター
厨房を囲むL字カウンターは、奥行きがあるのでゆったりと食事ができる
時には坂田さんご自身も作業をして完成させたという内観は、オフホワイトの色調にウッディな設えを組み合わせ、スタイリッシュながら温かみがある雰囲気です。カウンターの天板にあしらった木材が描くカーブや、大きな球形のライトが柔らかな印象をプラスしています。
カウンター端は、2人ずつが対面する4人掛けテーブルになる
ゆったりとしたL字のカウンターは、厨房に立つ坂田さんの手技を目の当たりにできるだけでなく、一部分は4人掛けのテーブルとして利用できるので家族や親しい友人たちとのディナーにぴったりです。
いずれは立ち飲みにも活用できるカウンターやスタンドも設置しているので、今後の展開に目が離せません。
「お客様の“喜び”に、ちょっとした添え物となるような存在であれば」と控えめに語る坂田さん
【コングスト】とはスペイン語で「喜びとともに」といった意味だそうです。
本場・スペインへの敬意と郷土・熊本への愛が詰まった、坂田さんの料理。それらを近しい人たちと囲む、喜びのひとときを体感しに訪れたい最旬レストランです。
撮影/佐藤顕子 取材・文/首藤奈穂(フリーライター)
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