南北首脳会談で連日満員! 韓国から進出の人気冷麺店で涼味を満喫しよう
2018年4月27日に板門店で行われた韓国と北朝鮮の南北首脳会談。会話に登場した冷麺の話題が世界中を駆け巡り、いまや日本でも冷麺の注目度が高まっている。コリアンタウンの東京、新大久保では韓国から進出の専門店が超満員。爽快な涼味で体を内側からヒエヒエに。
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2018年夏のトレンドとして冷麺の注目度が急上昇中
新大久保のコリアンタウンでは韓国からの進出店が人気
猛暑の中、キンキンに冷えた本場の冷麺が身体に染みる
韓国が誇る冷たさのご馳走
板門店。右奥の建物が南北首脳会談を行った平和の家
2018年の韓国において、一躍存在感を増した料理といえば冷麺です。4月27日に板門店で行われた南北首脳会談の場で、北朝鮮の金正恩委員長が韓国の文在寅大統領に、「苦労して平壌(ピョンヤン)から平壌冷麺を持ってきました」と語りました。その日の晩餐会に向けた話題でしたが、一連の会話はテレビの生放送を通じて多くの人の食欲を刺激。韓国ではその直後から冷麺店に大行列ができました。
連日超満員となっている新大久保【コサム冷麺専門店】
その影響は日本にも波及。東京・新大久保の【コサム冷麺専門店】では会談の翌日から来店客が増え始め、その週末にはかつてないほどの大混雑になったとのこと。「南北首脳会談以降、本当にたくさんのお客様においでいただいています。以前よりもお客様の層が幅広くなりましたね。最近の新大久保は若い方が多いですが、年配の方も、ご家族でいらっしゃる方も増えました。日本の方々が冷麺に興味を持ってくださったようで嬉しいです」とハン・チエ社長。勢いはいまだ続いており、夏の暑さとともに勢いは増すばかりのようです(撮影でお邪魔した日にもテレビ局から取材依頼が!)。
自身も冷麺をこよなく愛するというハン・チエ社長
【コサム冷麺専門店】のオープンは2016年4月。本店は韓国の仁川(インチョン)にあり、新大久保の店が日本進出1号店です。店名の「コサム」とは「コギ(肉)」と「サム(包む)」を表し、「肉で包む冷麺」を意味します。韓国では焼肉の後に冷麺を食べる文化があり、人によっては少量の肉を残して麺と一緒に食べます。それを発展させて専門化したのが、焼肉と冷麺をセットで提供するスタイル。韓国では冷麺の一ジャンルとして定着しています。
しっかりと冷えたスープがなんとも爽快な『水冷麺』950円、『水冷麺セット』1,274円(ともに税込)
看板メニューは『水冷麺セット』。「水」とはスープのことで、長時間煮込んだ牛骨スープをベースに酢などを混ぜて、半分凍ったシャリシャリで提供します。他店に比べて具が、ゆで卵、大根、キュウリの3点のみとシンプルなのは、焼肉を主役として想定しているから。冷麺は単品でも注文できますが、やはり焼肉とのセットでこそ本領を発揮するようです。
麺はコシの強い咸興式。極細ながら噛みごたえがある
麺はサツマイモのでんぷん100%。基本的に食材は日本のものを使っていますが、これだけは韓国の本店から運んでいるとのこと。細みながらもコシの強い、ギュッギュッとした噛みごたえの麺に仕上がります。
熱湯の上で小さな穴から生地を押し出して麺を作る
ひとつ余談ですが、南北首脳会談で北から運ばれてきた冷麺は平壌式。そば粉を中心にでんぷんを加えて麺を作るものを平壌冷麺と呼びます。それとともに朝鮮半島の二大冷麺と呼ばれるのが咸興(ハムン)式で、咸興は北朝鮮の東海岸沿いにある第2の都市を指します。咸興冷麺はジャガイモやサツマイモのでんぷんだけで麺を作るのが特徴。【コサム冷麺専門店】の冷麺も、麺の分類では咸興式ということになります。
焼肉は茨城県産のつくば美豚を使用。炭火で丁寧に焼く
食べ方は好き好きでよいとのことですが、せっかくなら店名の通り、肉で包んで食べてみてください。炭火の香りとこってりとした肉の脂が、さっぱり味の冷麺に新たな方向からの広がりをもたらします。できれば最初は冷麺だけで食べて、中盤あたりから焼肉とのコラボを試すのがよいかと。タレと脂の甘味が効いて、味覚を単調にさせません。
辛さの中にも甘さがあってつい後を引く『ビビン冷麺』単品950円、炭火焼肉付きのセット1,274円(ともに税込)
もうひとつの定番メニューが『ビビン冷麺』と、炭火焼肉付きのセット。スープに麺を浸して味わう『水冷麺』に対し、辛い薬味ダレと混ぜて食べるものを指します。薬味ダレは10種類ほどの野菜と果物をすりおろし、粉唐辛子や酢などと混ぜて作るとのこと。これを麺とよく絡めて味わえば、ピリッとした刺激の中にも、野菜、果物の自然な甘味が広がります。
途中で牛骨スープを注ぐと味の印象がガラッと変わる
一緒に運ばれるヤカンには『水冷麺』の牛骨スープが入っており、これを注いで食べるのも楽しみのひとつ。ほどよく辛さを和らげてくれる効果もありますし、『水冷麺』とはまた違うピリ辛スープに変貌を遂げます。1度で2度楽しめるどころか、それぞれを焼肉と合わせることで楽しみ方もいっそう多彩に。冷麺はどちらを選んでも、ぜひ焼肉とのセットで試して欲しいお店です。
上のフライドチキン店も同系列。青唐辛子チキンが美味
なお、冷麺は一般に夏の料理と思われがちですが、本来は冬を旬とする料理です。古い時代の文献では陰暦11月の季節料理として登場するほど。韓国の家屋にはオンドルという床暖房が完備されており、室内は温かく、また空気も乾燥するため、冷麺を味わうには最高のコンディションなのです。韓国でも通人は冬にこそ冷麺を食べます。南北首脳会談で始まったこの冷麺ブーム、ぜひ冬まで長続きして欲しいですね。
【コサム冷麺専門店】
電話:03-6233-7081
住所:東京都新宿区百人町1-1-26第三サタケビル1階
アクセス:JR「新大久保」駅から徒歩4分
営業時間:11:00~24:00(L.O.23:00)
定休日:無休
八田靖史(フリーライター)
慶尚北道広報大使、慶尚北道栄州市広報大使。コリアン・フード・コラムニスト。2001年より雑誌、新聞、WEBで執筆開始。トークイベントや講演、韓国グルメツアーのプロデュース。近著に「食の日韓論 ボクらは同じものを食べている」(三五館)。WEBサイト「韓食生活」を運営。
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