大統領もうまいと褒めた、山の幸たっぷりの新・炊き込みごはんとは?
韓国の北東部に位置する江原道では、ナムル(山菜、野草)を炊き込んだ『江原ナムルごはん』が話題に。江原道を象徴する新名物として、道内で広く提供が始まっています。平昌五輪の前には文在寅大統領も、市民との懇談会にて「青瓦台の食事よりも特別」と褒めました。
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韓国の江原道で野草、山菜を炊き込んだごはんが話題に
地域の新名物として道内28ヶ所の飲食店で提供中
季節ごとに用意される山の幸たっぷりの副菜にも注目
青々とした香りに包まれて
洪川郡を流れる洪川江。首都圏の避暑地としても人気
文在寅(ムン・ジェイン)大統領も青瓦台の食事よりも特別と褒めた。そんな郷土料理が韓国で注目を集めています。韓国の北東部に位置する江原道(カンウォンド)といえば、今年の2月には平昌(ピョンチャン)で冬季オリンピックが開催された地域。山々の連なる自然豊かな景観は、みなさまのご記憶にも新しいのではないでしょうか。そんな江原道における山の幸をふんだんに盛り込んだ、江原道を象徴する料理を広く根付かせよう。そんな試みがオリンピックを前後して江原道では進行しています。
洪川江沿いにあり景観のよい【五音山山野草パプサン】
料理の名前は『江原ナムルごはん』(カンウォンナムルバプ)。江原道産のナムル(山菜、野草)をごはんと一緒に炊き込んだものです。もともと江原道で広く食べられていた炊き込みごはんに洗練を加え、レシピを整えたうえで、現在は道内28ヶ所の飲食店で提供されているとのこと。いったいどのような仕上がりになったのか。提供店のひとつ、洪川(ホンチョン)の【五音山山野草パプサン】に足を運んできました。
江原道の特産品を盛り込んだ『江原ナムルごはん』
こちらがその『江原ナムルごはん』。いくつかの特徴があるのですが、まずそのひとつがオリンピックのために開発された「五輪米」という米を使うこと。そして、もうひとつが江原道を代表する4種類のナムルを用いること。シラヤマギク、オタカラコウ、チョウセンヤナギアザミ、ハナウドという、いずれも江原道でよくとれる4種類を乾燥させて保存し、炊き込むときに水で戻して使うことになっています。ここに同じく江原道の特産品であるジャガイモと、シイタケを加えて炊き込めばできあがり。
洋風のテイストをも盛り込んだ特製のソースを用意
炊きあがりがそのまま運ばれてくるので、フタを取るだけでも青々とした香りに包まれます。そのままさっと混ぜて食べてもおいしいですが、この江原ナムルごはんに合う、特製のソースも用意されています。左手前がオリーブオイルとガーリックフレークを混ぜた洋風のオタカラコウソース、右奥がハナウドをコチュジャンで和えたやや甘味の強いソース。これらをごはんに載せて食べると、よりいっそう野草の香りが引き立ちます。
季節ごとの葉野菜でごはんを包んで食べても香りがよい
また、食べ方のひとつとして、季節の葉野菜が用意されますので、これでごはんを包んで食べるのも必須の作法。訪れたのは4月でしたが、オタカラコウ、シラヤマギク、ギョウジャニンニク、ハリギリ、サンチュという5種類が用意されていました。そして中央にあるのがマクチャンと呼ばれる伝統味噌。韓国では伝統的に味噌の上澄みを醤油として使いますが、それを残したまま味噌と混ぜ合わせたものを指します。塩気は強いものの、うま味が濃厚なので、葉野菜に包んだごはんをいっそう美味しく味わえます。
炊き込みごはんだけでなくたくさんの副菜を提供する
江原ナムルごはんを提供する店では、それぞれ季節の副菜もふんだんに用意。洪川の【五音山山野草パプサン】では、1人前2万ウォン(約2,000円)のコースとして提供しています。時期によって使う食材が異なるため、あくまでも一例ですが、印象的だった料理を紹介してみたいと思います。
ハリギリの芽をさっとゆがいた『オムナムスンスッケ』
まずこちらがハリギリの芽をゆがいたもの。韓国ではハリギリの枝を神経痛や炎症に効果のある韓方材として用いるのですが、滋養強壮成分のサポニンを含むことから、『サムゲタン』(ひな鶏と高麗人参のスープ)、『タッカンマリ』(丸鶏の水炊き)といった鶏料理と煮込むことも多いです。若芽を味わえるのは春の短い期間だけ。瑞々しくもほの渋い味わいは、山菜の中でも人気の高いひとつです。
江原道名産のツルニンジンを和えた『トドクムチム』
ツルニンジンの和え物。甘辛酸っぱいタレで和えてあり、生っぽくザクザクとした食感を残していました。洪川といえば、『ファログイ』(コチュジャンダレに絡めた豚肉の七輪焼き)が郷土料理として有名ですが、そこでもツルニンジンの和え物を一緒に焼いて食べるのが定番です。
焼肉味に仕立てたコリアンハンバーグの『トッカルビ』
牛肉をハンバーグ状に焼いた『トッカルビ』は、ジャガイモを混ぜることで柔らかさを演出しているとのこと。隠し味として柚子の香りをほんのり漂わせつつ、砕いた松の実の香ばしさがいいアクセントになっていました。ほかにも、生菊芋のサラダや、タンポポの葉の和え物、チョロギの甘酢漬け、ヤマラッキョウの葉のチヂミなど、実に多彩な素材を用いてコースに仕立てています。
店内で販売される『江原ナムルごはん』用の乾燥山菜
店内では乾燥させた山菜も販売。江原ナムルごはんに用いられる4種類を混ぜ合わせているので、家庭でも水で戻して炊き込めば、香り豊かな炊き込みごはんを楽しめます。江原道が力を入れる新名物。ぜひ試してみてください。
【五音山山野草パプサン(오음산산야초밥상)】
電話:+82-33-436-4014
住所:江原道洪川郡洪川邑ノブネキル119
住所:강원도 홍천군 홍천읍 너브내길 119
八田靖史(フリーライター)
慶尚北道広報大使、慶尚北道栄州市広報大使。コリアン・フード・コラムニスト。2001年より雑誌、新聞、WEBで執筆開始。トークイベントや講演、韓国グルメツアーのプロデュース。近著に「食の日韓論 ボクらは同じものを食べている」(三五館)。WEBサイト「韓食生活」を運営。
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