真夏の韓国、1メートルを超える巨大な高級魚「ミノ」を味わいに!
韓国の南西部に位置する全羅南道(チョルラナムド)の木浦(モッポ)では、夏になると「ミノ」と呼ばれる巨大な高級魚が人気を集めます。日本語ではニベ(ホンニベ)。刺身でよし、鍋でよし、チヂミでよし。地元では夏バテを防ぐスタミナ食材として親しまれています。
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韓国の西海岸では真夏に大型魚のニベが人気を集める
主産地である木浦には専門店の並ぶ「ニベ通り」がある
本場では刺身、チヂミ、鍋料理などのコースで味わう
韓国で国民魚と呼ばれる魚
韓国語でミノ、日本語ではニベ(ホンニベ)と呼ばれる
韓国でよく食べる魚というと、サバ、タチウオ、イシモチ、スケトウダラなどがあげられます。食卓への貢献度で国民魚を選ぶのであれば、これらのどれかになりそうですが、実際には韓国語で「ミノ」と呼ばれる魚を国民魚と称することが多いです。なにしろ漢字で「民魚」と書いてミノ。日本語ではニベ(ホンニベ)と呼び、大きくなると1メートルをも超える巨大な魚です。
木浦のニベ通り。ニベ自慢の飲食店が路地に集まる
主産地は西海岸沿いの木浦(モッポ)という港町。現地にはニベ料理の専門店が集まる「ニベ通り」まであったりします。7~8月の暑い時期がいちばんの旬で、木浦を中心とする全羅道(チョルラド)地域では、夏に精をつけるスタミナ料理として親しまれています。ちょうど日本人が夏にウナギを食べるのと似た感覚ですね。韓国で夏の料理というと『サムゲタン』(ひな鶏と高麗人参のスープ)も有名ですが、全羅道の海側では圧倒的にニベのほうが人気です。
ニベの旬は盛夏だが、ニベ料理は通年で提供している
木浦でニベを食べるのであれば、こちらの【ヨンナンフェッチプ】が有名。1969年創業と木浦でも歴史の古いニベ専門店です。なお、産地であってもニベはけっこうな高級魚。定番の食べ方である『ミノフェ』(ニベの刺身)だけでも、ひと皿4万5000ウォン(約4500円、2018年6月取材時、以下同)と値が張るのですが、シーズンともなると店内は地元の方でいっぱいです。贅沢ではあっても夏になるとやっぱり食べたい。そのへんも日本のウナギと似ていますね。
ニベの刺身『ミノフェ』は希少部位とともに提供される
なので、どうせ食べるならきちんと腰を据えてということが多いです。単品であれこれと注文もできますが、おすすめは3~4人向けの総額で15万ウォン(約1万5000円)というコース。刺身をはじめとした4種類のニベ料理をまとめて味わうことができます。まずは写真の『ミノフェ』から。韓国では刺身というと、とかく活魚にこだわるのですが、ニベの場合はしっかり熟成期間を置きます。肉厚に切られた身はむっちりとして噛むほどにうま味がにじむ感じ。皿のてっぺんにちょんと載っているのは、さっと湯引きにした皮付きのハラミで、こちらはシコシコとした食感と濃厚な脂の味わいが特徴です。
湯引きをした皮と浮き袋。どちらも珍味として喜ばれる
刺身の後ろにちらっと見えていたこちらは通好みのする希少部位。手前がウロコをとってさっとゆがいた皮で、韓国語では「コプチル」と呼びます。奥にあるのは「プレ」と呼ばれる浮き袋。ゴマ塩にちょんとつけて食べます。韓国ではこれらの希少部位を食べてこそ、ニベを食べたと言えるほど。脂の乗った皮の味わいも素晴らしいですし、クニッとした食感の浮き袋も印象の強い珍味。ミルキィな脂肪分がさらりと溶け出る感じです。
ニベの刺身を生野菜と和えた『ミノフェムチム』
刺身はワサビ醤油とともに、「チョジャン」と呼ばれる唐辛子酢味噌と、ゴマ油と混ぜた「サムジャン」と呼ばれる味噌を用意。これらにつけて食べるか、あるいはサンチュなどの葉野菜に包んでも食べます。そしてまた、韓国で刺身といえば生野菜と和えて食べるのも定番。『ミノフェムチム』(ニベの刺身和え)は、タマネギ、ニンジンなどのシャキシャキ感と、甘辛酸っぱいタレの味がなんともさっぱり爽快です。
ニベのチヂミ『ミノジョン』。衣をつけて焼いてある
3品目は衣をつけてピカタ風に焼いた『ミノジョン』(ニベのチヂミ)。熱が入ることで刺身とはまた違った、ふっくら柔らかな食感を楽しめます。白身魚全般、特にスケトウダラを使って作ることの多い料理ですが、高級魚のニベで作ると味わいの深さが段違いですね。どこか気品すら感じさせます。
『ミノジョン』は熟成キムチと一緒に食べてもおいしい
お店の方によると、熟成した白菜キムチと一緒に食べるもおすすめとのこと。酸味の効いたキムチの味わいが、素材の上品さだけに留まらない、ガツンとしたインパクトを与えてくれます。
アラを鍋仕立てにした『メウンタン』でコースをシメる
最後の仕上げは、『メウンタン』(ニベのアラ鍋)。頭や骨などを煮込んだ鍋のことですが、体格のいい魚だけあって骨などから実に濃厚なダシが出ます。見た目は赤いですが、辛さはさほどでもなく、味付けは自家製の「テンジャン(味噌)」がベース。骨まわりの身もたっぷりですが、やはりスープのうまさに唸らされます。一緒について出てくるごはんとの相性も抜群ですね。
鍋は澄まし仕立ての『チリタン』にすることもできる
希望をすれば、辛さのない『チリタン』(ニベの辛くないアラ鍋)にも変更可。お店としてのおすすめは『メウンタン』だそうですが、辛さが得意でない方はこちらでもいいかもしれません。もし可能なら大勢で行って両方頼んでもいいぐらい。どちらもおいしいですし、どちらもボリュームたっぷり。夏の暑さを乗り切る元気がわいてくるはずです。
【ヨンナンフェッチプ(영란횟집)】
電話:+82-61-243-7311
住所:全羅南道木浦市繁華路42-1
住所:전라남도 목포시 번화로 42-1
八田靖史(フリーライター)
慶尚北道広報大使、慶尚北道栄州市広報大使。コリアン・フード・コラムニスト。2001年より雑誌、新聞、WEBで執筆開始。トークイベントや講演、韓国グルメツアーのプロデュース。近著に「イラストでわかる はじめてのハングル」(高橋書店)。WEBサイト「韓食生活」を運営。
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