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更新日:2018.10.26グルメラボ

池波正太郎、山口瞳が愛した、蕎麦の究極の美学を実感できる名店【並木 藪蕎麦】

池波正太郎が「ゆっくりと酒を飲む気分はたまらない」、山口瞳が「蕎麦屋の酒が一番うまい」と熱を上げる【並木 藪蕎麦】。気軽だが、老舗ならではの風格が漂う名店だ。辛口の日本酒とともに味わう、キリリとしたそばつゆの味を堪能したい。

池波正太郎、山口瞳が愛した、蕎麦の究極の美学を実感できる名店【並木 藪蕎麦】

暖簾をくぐると、花番と呼ばれる接客係の女性たちが、席の案内から注文、給仕とてきぱき対応してくれる。その心地よさに常連になった人も少なくない。飾り気がなく、掃除の行き届いた【並木 藪蕎麦】で、池波正太郎は『鴨なんばん』、山口瞳は冬は『鴨ぬき』(そばぬきの鴨なんばん)、冬以外は『天ぬき』(そばぬきの天ぷらそば)を肴に酒を飲むのがお気に入りだった。

つい立ち寄りたくなる東京の老舗【並木 藪蕎麦】の佇まい

入り口から蕎麦屋の究極の美学が匂い立つ

    立ち寄ってみたくなる、昔ながらの店構え。暖簾をくぐれば、期待を裏切らない世界が待っている。

    立ち寄ってみたくなる、昔ながらの店構え。暖簾をくぐれば、期待を裏切らない世界が待っている。

「最近はお客様のほうがよくご存じで、品書きにない『鴨ぬき』や『天ぬき』をあたりまえのように注文されます」と3代目となる堀田浩二さん。初代は明治の末に京橋で創業。それから間もなく大正2年に、雷門から通じる並木通りの現在地に店を構えた。

江戸っ子がざるそばを食べるとき、少ししかつゆにつけないのは、つゆがからかったからという説がある。東京一からいと言われる【並木 藪蕎麦】のつゆをいただくと、それも納得がいく。しかし、それはただ塩分が強いだけではない。

まず、醬油と砂糖を合わせて甕で熟成し、かえしをつくる。そして、冷たいそばはかつお節、温かいそばはさば節のだしを加え、湯煎してつゆとなる。初代から連綿と受け継がれた伝統の味の裏には、手間ひまを惜しまない
店の姿勢が隠されている。そのためか、舌に残るのはまろやかな余韻だ。

  • 菊正宗の樽酒(750円)はそばみそつき。蕎麦屋で飲む際に欠かせないそばみそは、【並木 藪蕎麦】の初代の発案だ。

  • 山口瞳の好物だった『鴨ぬき』は『鴨なんばん』と同じ値段(1,900円)。そばの代わりにたっぷり加えられたねぎの甘みがまたいい。

  • 常連客が好んで座る入れ込み。ついくつろいでしまうが、蕎麦屋に長居は禁物だ。

【並木 藪蕎麦】では、文士が好んだ辛口の菊正宗をさらに引き立てる蕎麦がいただける。この店に来ると、ビール好きでもビールを飲む気にはならないだろう。店の様子といい味といい、【並木 藪蕎麦】はまさしく江戸前の真髄。いや、蕎麦屋の美学を今に残す、国宝のような店と言っても過言ではないだろう。

【並木 藪蕎麦】

住所:東京都台東区雷門2-11-9
電話:03-3841-1340
営業時間:11:00~19:30
定休:無休
アクセス:地下鉄・浅草駅から徒歩2分

『ざるそば』『かけそば』各750円(税抜)、『天ぷらそば』(『天ぬき』)1,800円(税抜)

この記事を作った人

MEN'S Precious編集部

名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。

PHOTO : 小西康夫

※『MEN'S Precious』2009年春夏号、文士が愛した寿司屋と蕎麦屋より

記事元:Men's Precious

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