本場の韓国食材で作る絶品カムジャタンと、南北を分かつ38度線の関係|曙橋【慶美】
東京・曙橋の韓国料理店【慶美(キョンミ)】は韓国人のファミリー客で賑わう店。人気料理のカムジャタン(豚の背骨とジャガイモの鍋)は、ママさんの故郷から直送される本場素材が味の秘訣となっている。しかもその故郷は、韓国内でもちょっと特別な場所にあるのだ。
本場直送の食材とは?
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曙橋の韓国料理店【慶美】の看板料理はカムジャタン
ママさんの故郷からわざわざ本場食材を取り寄せている
その故郷というのが韓国内でもちょっと意外な場所
まさに本場のカムジャタン
『カムジャタン』(中2,700円、大3,780円)
冒頭でまず強調したいのは、日本でこれだけ見事な『カムジャタン』(豚の背骨とジャガイモの鍋)にはなかなか出合えないということ。味付けの面でもさることながら、豚の背骨にしっかり肉がついているのが嬉しいところです。日本で豚の背骨というとダシとしての利用が多く、肉のほうはさして重要視されませんが、『カムジャタン』の場合は背骨まわりの肉こそ具として味わうのです。東京・曙橋の韓国料理店【慶美(キョンミ)】では、わざわざ肉をつけた背骨を精肉店に頼んで仕入れています。
背骨まわりについた肉にかぶりつくのが何よりの醍醐味
じっくり煮込まれているので、箸でもほろりとはがれますが、豪快に手づかみでかぶりつくのが韓国式。というより、ついつい夢中になってしゃぶりついてしまうんですけどね。少しコツはいりますが、関節をパキッと外すと、骨の間についた肉も余さず食べられます。美味しさの秘密は、米のとぎ汁を使って豚の背骨を下煮するというひと工夫だとか。これによって雑味を取り、豚肉のうま味を引き出すことができるそうです。
大根の葉を干したシレギ。スープの味がよく染みている
そしてぜひ注目していただきたいのが一緒に煮込まれている野菜。大根の葉を干したもので、韓国語では「シレギ」と呼びます。お店のママさんである徐美慶(ソ・ミギョン)によれば、「韓国の故郷から送ってもらっています」とのこと。どちらの地域か尋ねてみると、ソウルよりもだいぶ北に位置する京畿道(キョンギド)の漣川(ヨンチョン)という町でした。おそらく地名だけでピンとくる方は少ないと思いますが、韓国で漣川といえば、南北を分断する軍事分界線に面した町として知られます。
エゴマの粉とともに、エゴマの葉も香りづけに用いる
しかもよくよく聞いてみると、故郷の村というのは「民統線(ミントンソン)」の中にあるとか。韓国において軍事分界線の付近は、国防上の観点から民間人の出入りが統制されており、その区域を示すラインを民統線と呼んでいます。ものものしい話である反面、昔からその地域に住んでいる人しか出入りができないため、近年は清浄な環境が保たれている地域として注目を集めている側面もあります。民統線内で生産される農作物はたいへん評価が高く、それを日本に送ってもらって使っているというのは大きな特徴ですね。そしてそれはシレギのみならず、たっぷりと振られたエゴマの粉も故郷の村で栽培されたものです。
ランチの人気メニューでもある『韓国風そばがき』(1,296円)
エゴマの粉はカムジャタンだけでなく、『韓国風そばがき』(韓国語ではメミルスジェビ)のスープにもたっぷり使われます。香ばしさとともに、味わいに深いコクを与えるのがエゴマの粉の持ち味。最近の日本では必須脂肪酸のオメガ3を豊富に含むエゴマ油が注目されていますが、その油を搾るための実は、粉末にもしてさまざまな料理に使います。
そばがきとともにニンジンやタマネギなどの野菜も入る
香ばしさあふれるスープに、つるんとしたそばがきがどっさり。ちなみに韓国でそばというと、北東部にある江原道(カンウォンド)という地域が有名なのですが、【慶美】においてもそば粉だけは、わざわざ江原道産を送ってもらっているそうです。
さっぱりとサラダ感覚で味わえる『ドングリムク』(1,296円)
そのほか故郷の食材を使っているのが、サイドメニューとして人気の高い『ドングリムク』(ドングリ寒天の和え物)。民統線内の山でとれたドングリを、手間ひまかけて粉末にしたものを使用しています。鍋で丁寧に煮詰めたものを冷やし固めて寒天状に作るのですが、手作りとあってぷるぷるとした食感と滑らかな舌ざわりが見事です。たっぷりの生野菜と和えつつ、甘酸っぱいタレをかけてフレッシュに味わいます。
『コングクス』(1,296円)。韓国では夏になると「コングクス開始」の貼り紙が出る
もうひとつ大豆も故郷から送られてくる食材です。この大豆のよさを最大限に引き出すのが、夏季(5~9月)限定メニューの『コングクス』(1296円)。茹でた大豆をミキサーにかけて、とろとろの汁状にしたところへ固めに茹でた素麺を加えた料理です。
大豆の甘味と香ばしさを楽しむため味付けは少量の塩で
大豆の香りがぷんぷんと漂う香ばしいスープと、清涼感あふれる麺の組み合わせが抜群。韓国においては食欲の落ちる時期に、栄養価の高い涼味として人気があります。
【慶美】とは徐美慶さんの名前をひっくり返したもの
こちらの【慶美】は2013年のオープン。お客さんの7割は韓国人であり、近隣に韓国学校があることからファミリー客も多く、本場さながらの家庭的な雰囲気が魅力です。今回の記事では故郷の食材を使った料理を中心に紹介しましたが、カムジャタンと並ぶ看板料理として『味付豚カルビ』(1人前1620円、初回注文は2人前から)も大人気。特製のタレに漬けこんだ豚カルビはボリュームもたっぷりで、こちらも食べ逃すことはできないメニューです。
* 価格はすべて税込み
【慶美(キョンミ)】
電話:03-6457-7629
住所:東京都新宿区住吉町2-18ウィン四谷2階
アクセス:都営新宿線「曙橋」駅A1出口からすぐ
営業時間:11:30~15:00、17:00~23:00(LO22:30)、日曜日は不定休なのでお問合せください。
定休日:日曜日(不定休)
八田靖史(フリーライター)
慶尚北道広報大使、慶尚北道栄州市広報大使。コリアン・フード・コラムニスト。2001年より雑誌、新聞、WEBで執筆開始。トークイベントや講演、韓国グルメツアーのプロデュース。近著に「イラストでわかる はじめてのハングル」(高橋書店)。WEBサイト「韓食生活」を運営。
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