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更新日:2019.09.27食トレンド 旅グルメ

ニュースな新店| 移転再開! 独創的な料理で人々を虜にした京都の人気店【新門前 米村】

25年間京都・祇園に本店をかまえ、東京・銀座にも支店を出していた【レストラン よねむら】。いずれの地でもミシュランの星を獲得した名店が閉店したという知らせが入ったのは2018年11月のこと。翌年2019年5月にシェフの米村昌泰氏が新たにオープンさせたのが【新門前 よねむら】だ。そこには、創業25年を節目にした単なる移転リニューアルではない、新たな思いがあった。

再出発のきっかけは、お客様の一言から

 人気店の暖簾を下ろしてまでも新たな店を構えたのは、銀座店であるお客さんに言われた“今日は米村さんがいる。当たりの日ね”という一言がきっかけだそうだ。

銀座店を出して10年。普段は京都に、本店が休みの日は銀座にという生活を繰り返している中でその一言を聞いたとき、“僕がいるから当たり、いなかったらハズレと思われるような店を続けていていいのか?”という思いがふとよぎったという。

    人気のデザートは、新店オープンのためにオーダーした桜の木の食籠に入れて。”華やかさもさることながら、”ちょっとずつたくさん食べられる”とゲストに大人気

それは働いているスタッフのモチベーションにもきっとよくないと……。そう考えてふと立ち止まってみると、京都の店もこのまま続けていていのかという思いが次々にわいてきた。

「前の店は40席ありました。カウンターメインではあるけれど、そこまで席数があると今自分の作っている料理がどこに運ばれていくのかもわからない。ベストなタイミングはもとより、その方がどんな顔で、どんなことを感じながら食べてくださっているのかもわからない。そんなことではだめだ。ここは店を一度閉店して、一から再出発しようと」。

そうしてすっぱりと店を閉店した。

米村昌泰シェフが原点に立ち返り感じたこと

 半年の充電期間を置いて新たにスタートさせたお店は、古美術店やギャラリーなどが多く軒を連ね、今も京の文化が色濃く残る新門前。元骨董店である京町家を自身のセンスで大改装した。趣のある佇まいはそのまま残し、暖簾をくぐると大きなカウンターがメインのオープンキッチンが広がる。

    京町屋を改装した趣がありつつもスタイリッシュな内装。シェフを身近に感じるオープンキッチンのカウンターには名作椅子が並び、ゆったりと料理を楽しめる心地のいい空間

「座席も40席から20席に減らしました。何か新しいことを始めたいわけでもない。料理のコンセプトやスタイルを大きく変えるためではなく、今までの自分の集大成として納得のいく仕事ができる店にしたかった」。

座席数を減らしたにも関わらず、その仕事量は増したという。

「規模が大きくなってからは業者に任せていた仕入れを、朝から市場にいって自らの手で探したり、パンやからすみ、お漬物に至るまで、ほとんど自分でつくります。食材を自ら選ぶのがこんなにテンションが上がるとは! 原点に戻ったというような大層なものではないのですが、規模を小さくしたことで、”〇〇したい欲”がどんどん湧いてきたんです」と意欲満々の米村昌泰氏。

    薄くスライスした松茸の上に熱々のコンソメを注ぐことで、秋の香りが立ち込める。フォアグラの下にはサフランライスが。車エビのカダイフなどと共にお茶漬けのような感覚でいただく

【新門前 米村】が大切にするのはどこか懐かしい心地良さ

 料理はおまかせコースのみだ。自由な発想で、あらゆる食材や技法を和洋の隔たりなく魔法のように操る米村氏ならではの変幻自在なスタイルはそのままだが、そこにはどことなく昭和レトロな懐かしさを感じる。

 例えば前菜。レースペーパーを敷いたバカラの器に盛りつけられ、ヒラメのカルパッチョの上にはウニ、岩ノリ、マスカルポーネ、キャビア、そして日本酒のジュレが添えられている。

米村氏の頭のなかで組み合わされられた食材の数々から生まれる独創的な料理は、そのプレゼンテーションも込みで独自の世界観を放つ。そこには、突き放したスタイリッシュさはなく、どこかホッとするような懐かしさを感じるのだ。

    磯の香りが折り重なるようにあふれてくるオードブル。ウニ、岩ノリ、キャビアと目で見てわかるものではあるが、ひと口かむごとに味が複雑に重なり新たなる味わいの発見が

「最新の調理法などを取り入れることもありますが、今流行りの“これは何?”という驚きよりも、目で見てすぐに分かるものを、その組み合わせの妙で楽しんでほしい。何を食べているのかということを理解した上で味わう方がずっとおいしく感じると思うんです。そういう意味でも昭和レトロな感覚をすごく意識はしている。新しい発見をするとともにどこか落ち着いた居心地の良さを感じてもらいたいんです」。

    甘鯛は鱗をつけたまま、カリカリに仕上げるが、身はミディアムレアな絶妙の火入れでふっくらと柔らか。からすみのコクやジューシーなかぶらのステーキと合わさり、ふくよかな味わい

 まずは目で見て味を想像し、次に実際に口にしてその組み合わせの広がりを感じる。その想いは一皿ごとの量を見てもよくわかる。少量多皿のコースが流行りの中、10皿ぐらいと品数はそれなりに多くはあるにも関わらず、一皿ずつにしっかりとした量が載っている。そこには、料理は2口目からが勝負というシェフの強い想いがある。一口目はあくまでもアプローチ。二口目からより良くその料理を理解して、きちんと味わうことができる。そうすることで何を食べたか、どんな味わいだったか、おいしいかどうかなどが強く記憶に残るという。

    アーティストのマヤマックスさんがデザインしてくださったという“米”のイラストロゴの暖簾と米村昌泰シェフ

独創的な料理としてセンセーションを起こしてきた米村氏ではあるが、その根本には、枠にとらわれるのではなく、食材をどうしたらおいしくなるかだけを考えてきたいう思いがある。新たなる気持ちで、意欲に満ち溢れた米村氏。変幻自在で進化し続けるその料理にますます目が離せなくなった。

    二階は暖炉やソファ、ワインセラーがあり、どこか別荘に来たような落ち着いた空間。この場所で料理をいただくこともできる

【新門前 米村】

  • 住所:京都市東山区新門前通花見小路東入梅本町255
    電話:075-533-6699
    営業時間:12:00~14:00(L.O.) 17:30~21:00(L.O.)
    定休日:火曜
    料金:ランチ¥8,000、¥14,000、ディナー¥18,000のコースのみ

この記事を作った人

撮影/面高真琴 取材・文/楠井祐介

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