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更新日:2019.10.24食トレンド

ボジョレーヌーヴォーの楽しみ方と魅力を名店のソムリエにきく③ 神楽坂【ルグドゥノム・ブション・リヨネ】

毎年、秋の収穫期に解禁され、日本でも一種のお祭りのように盛り上がるボジョレーヌーヴォー。2019年の解禁に先立ち、ヒトサラMAGAZINEでは、解禁カウントダウン企画の記事をお届け! 名店のソムリエたちに、ボジョレーヌーヴォーの魅力、味わい、そして楽しみ方のポイントをインタビューしていきます。

 扉を開けると、そこはもうフランス。神楽坂の【ルグドゥノム・ブション・リヨネ】は、“本物のリヨン料理に出会える”と、多くのフレンチファンから高く支持される店だ。

 オーナーシェフのクリストフ・ポコ氏はリヨン生まれで、「リヨンの郷土料理のおいしさを多くの人に知ってほしい」と、2007年にオープンさせた。ポコ氏は大のワイン好きでもあり、ワインリストにあるのは、多くがブルゴーニュとボジョレーのもの。特筆すべきは、ボジョレーワインの種類の多さだろう。

 リストには常時20種類以上のボジョレーワインが並び、ヌーヴォーの季節には、グラスなどでも数種は用意するという。

    店内にはボジョレーワインのエチケット(ラベル)がディスプレイされ、シェフの“ボジョレー愛”が伝わってくる

ヌーヴォーは“クリュ・ボジョレー”への入口

    吉井さんがボジョレーを好きになったきっかけは、シェフと訪れたフランス。「ドメーヌ・ド・ラ・グラン・クールでは樽からテイスティングしたり、ボジョレーがぐっと身近になりました」。

 この店でワインのサービスに携わっているのが、サービスマネージャーの吉井辰久氏だ。ポコ氏の薫陶を受け、自身もボジョレーが大好きになったと語る。

「ボジョレーワインには、ふたつの楽しみがあると思います。まずはなんといってもボジョレーヌーヴォー。新酒の季節の到来を、親しい友人たちとお祭り気分で祝えるのがいいですね。そして、“クリュ・ボジョレー”と呼ばれる村名ワイン。これは、ヌーヴォーとはまた違う造りで、地区ごとの個性が味わえるワインです。当店では、新酒の時期になると、ボジョレーヌーヴォーをグラスでオーダーして乾杯し、そのあとでクリュ・ボジョレーをボトルでオーダーするお客様が多いですね」。

 “クリュ・ボジョレー”とは、すぐれたワインを生産している10地区に与えられたAOC(原産地統制呼称)の総称で、地区ごとのテロワールの個性が際立っているのが特徴。ポコ氏も吉井氏も、「ヌーヴォーをきっかけに、クリュ・ボジョレーの魅力も知ってほしい」と、ボジョレーに対して並々ならぬ愛情をもっている。

    「ボジョレーワインの魅力は気軽に飲めること。きちんとおいしく、価格も高くない。私は、プライベートで飲んでおいしかったワインをお客様に紹介したいと思っています」とポコ氏

 その一端が見えるのが、ボジョレーヌーヴォーの時期のワインセレクトだ。シェフのポコ氏も、日頃飲んでおいしかったクリュ・ボジョレーのなかから、その年お店で使うボジョレーヌーヴォーの銘柄を決めることが多いと語る。

「たとえば、ティボー・リジェ・ベレールやマルセル・ラピエール。ドメーヌ・ド・ラ・グラン・クール。ワイナリーの規模によらず、いい造り手がたくさんいますよ」。

フレッシュ感のある味わいが料理をさらにおいしく!

 今回、シェフがつくってくれた料理が前菜の『ランド産地鶏のガランティーヌ 枝豆とモリーユ茸』と魚料理の『リヨン風クネル モリセットゥおばあさんスタイル』だ。ポコ氏のスペシャリテで、どちらもリヨンの伝統料理だ。ボジョレーヌーヴォーを合わせてみると、爽やかな酸味とフレッシュ感が、肉のうまみやソースを軽やかに、さらにおいしく感じさせてくれる。

    プリフィクススタイルのメニューから、前菜の『ランド産地鶏のガランティーヌ 枝豆とモリーユ茸』。ソースは、シャルドネ・ヴィネガーとトリュフのドレッシング、ジュ・ド・ボライユ。モモ肉と胸肉の味わいの違いも同時に楽しめる。

    魚料理の『リヨン風クネル モリセットゥおばあさんスタイル』は、ポコ氏の祖母のレシピ。バターライスの上に川カマスのクネルをのせ、オマール海老のソースをかけて焼き上げた贅沢な一品。オマール海老をアクセントに。クネルは魚の練りもので、リヨンの名物料理

    「ボジョレーヌーヴォーに使用されるガメイ種は、とても繊細な酸を持ち、タンニンもさほど強くありません。魚料理にも合わせやすく、なにより飲み飽きない。魅力的なワインだと思います」とポコ氏

ボジョレーヌーヴォーは熟成もできる!

 ここで、吉井氏がこんな話をしてくれた。
「じつは昨年、シェフが店のスタッフ7名をリヨンに連れて行ってくれたのです。【ポール・ボキューズ】でランチを楽しんだり、地元で一番古いブションを訪れたり。なにより勉強になったのは、ボジョレー地方を訪れたことでした。造り手に会い、現地でワインを飲み、その土地の文化に触れることかできた。これは、大きな経験でした。そして運転もシェフなら通訳もシェフ(笑)。贅沢な旅行でした」。

 この言葉を受け、ポコ氏は満面の笑顔でこう語ってくれた。

「スタッフが仕事をしていく上で、“空気感”を知ることはとても大切なことだと、私はつねづね思っていたので、みんながいい経験をしてくれて、本当によかったと思っています。仕事のモチベーションも上がりましたし、リヨン料理やボジョレーワインに対する理解も深まりました。今後は、お客さまとの会話のなかで、生かしてもらえたらと思っています」。

 吉井氏から聞いた、ボジョレーヌーヴォーの“もう一つの楽しみ”をお伝えしておこう。

「ボジョレーヌーヴォーの同じ銘柄を2本買って、1本は1年間寝かせてみてください。熟成が進んで、また違った味わいと魅力に出会えます」。

ソムリエプロフィール

吉井辰久さん(写真右)

東京都生まれ。印刷会社の営業部員として社会人としてスタートしたが、「仕事の評価がダイレクトにわかる仕事がしたい」と、元来食好きだったことから、飲食の世界に。2005年から2009年までカレーうどん専門店の「古奈屋」でサービスに携わる。その後、ポコ氏との出会いがあり、フレンチの世界へ。「最初は、見るもの聞くものが新鮮で、次第にフレンチの世界に魅せられました。今は、ワインについて学ぶのが楽しいです」。

クリストフ・ポコさん(シェフ・写真左)

フランス・リヨン近郊のヴェニスィウで生まれ、ノルマンディーで育つ。15歳で料理の世界に入り、ルーアンのミシュラン2つ星【ジル】、バリの3つ星【トゥール・ダルジャン】などで研鑽を積む。その後、パリ5区のレストラン【トゥトゥンヌ】で料理長に就任。1998年に来日、「ル・コルドン・ブルー」の教職に就く。その後、「ソフィテル東京」総料理長を経て、2007年に【ルグドゥノム・ブション・リヨネ】オープン。

この記事を作った人

取材・文/安齋喜美子 カメラマン/大鶴倫宣

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