更新日:2021.07.01食トレンド
トマトにリスペクトを抱くようになった理由。西麻布【リストランテ アルポルト】|シェフがオススメするお店に行ってみよう
こんにちは。毎週木曜〈シェフがオススメするお店に行ってみよう〉をお届けしている、編集部の郡司です!
みなさん、トマトは好きですか? ぼくは大好きです。生のままでもおいしいですし、火を入れて深みが増した味わいもたまりません。そして今回訪れたランチで想像以上に甘いトマトに出会いました。そして、イタリア料理の中心的存在としてのトマトにもはやリスペクトに近い感情を抱くようになりました。
さて、今回も「シェフがオススメするお店」サイトからピックアップした、お店と料理をご紹介!
ご紹介するのは、西麻布【リストランテ アルポルト】。このお店をオススメしてくれたのは、同じくハイクラスなイタリア料理店として名高い【リストランテ・ホンダ】オーナーの本多哲也シェフです。
日本の食材で、独自のアレンジをする料理が勉強になります。その土地で最も旬な時期を迎えた食材を仕入れ、少量ずつ色々な料理が楽しめる「懐石風イタリアン」に仕上げます。パスタがオススメ。
イタメシブームその火付け役としてあまりにも有名なお店ながら、その90年代前後の真っ只中で生まれた自分にとっては、その伝説的な名前を耳にすることはあれど、なかなかうかがう機会に恵まれずにいました。
……ということで、善は急げ! 西麻布交差点界隈にひしめく名店には目もくれず、アルポルトのランチに伺ってきました!
表通りから一本入るだけで閑静な街の佇まい。地下へと続く階段の奥にあります
白を基調としたクラシカルな雰囲気で、純白のクロスにシルバーがよく映えます。これはハレの日に来たら、素敵な思い出になりそうな予感です。
ランチコースは3種類あり、『PRANZO A』3,410円、『PRANZO B』5,280円、『PRANZO SPECIALE』8,690円。今回は『PRANZO A』を注文。
まず驚いたのがなんの気なしに頼んだトマトジュースです。
『北緯43° 余市のトマトジュース』 880円
こんなに甘いトマトジュース、飲んだことないぞ……!?
調べたところ、こちらのトマトジュースはアルポルトの特製だそうです。ざらりとした果肉の食感が残る飲み口で、まるでトマトをそのまま飲んでいるかのよう。フルーツジュースのような甘みなのに、料理にも合わせやすいのが一口でわかります。
そしてこの一杯から、トマトへの感動が始まりました。
『前菜5種の盛り合わせ』。生ハムやカプレーゼ、カルパッチョなどイタリアンの食べたい前菜が一口ずつ味わえるのが嬉しい
前菜5種の中には、カプレーゼがありました。
このスライスのフルーツトマトの、その新鮮さ。冷たい前菜らしいみずみずしい食感と甘みが広がって、このうえなく爽やかでした。スタッフの方に聞いてみると、じつはトマトジュースと同じく余市のフルーツトマトが使われているのだそうです。
つづいてやってきたのは、対照的に温かい煮込み料理。
バケットが付いた『国産 黒毛和牛 トリッパのトマト煮込み』
あくまで味の主役は、トリッパの柔らかい食感、噛むたびにじゅんわりと広がるやさしいコクと旨み。
トマトジュース、カプレーゼ、とトマトが主役でしたが、ここではトマトは、あくまでトリッパを引き立てる脇役のような存在感。熱することで増幅されたトマトの香りが、ひじょうにいい仕事をしています。パスタ、メインへと続く直前、トリッパを食べながらさらに食欲をかきたてられているような感覚です。
さて次はお待ちかねの、パスタ!
なお、『PRANZO A』ではパスタは5種類から選べます。
『トマトソースのフェデリーニ バジルペーストとリコッタチーズ』。フォークで、頂上のリコッタチーズを全体にからませて……
ぱくっ
んぁぁ………! おいしい……!
細麺のフェデリーニの軽快さと、しっかりとからむトマトソース。そこにリコッタチーズが、重くならない軽やかな油脂感で、全体にコクをプラス。でも、味の深みの決め手はやはりトマトで、一口でじわ〜っとトマトのほどよい酸味と強い甘み、旨みが押し寄せてきます。
もう一つ、すごく嬉しかったのがパスタの温度。器がしっかり温められているので、食べていると胸の辺りが温まっていくのがわかります。ほんの数度の違いだと思いますが、これが常温のお皿で出てくるだけで、味の印象はまたぜんぜん違うものになると思います。
スタッフの方に聞いてみると、アルポルトでは料理によって、また時期によってもトマトの種類を使い分けているそう。今回、パスタとカプレーゼに使用していたトマトは、最初に飲んだトマトジュースと同じ北海道余市のフルーツトマト。甘みが強いのが特徴で、この時期メインに扱うのがこの余市のトマトとのことです。
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『仔牛とフォアグラのソテー マルサラソース』(+1,210円)。クラシックな重厚感かと思いきや、マルサラ酒の酸味なのかどこか軽やかにも感じる
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この日のデザートは『アメリカンチェリーのタルト、アプリコットとラズベリーのソルベ』。エスプレッソとともに贅沢な食事を締めくくる
料理ごとの出したい味わいによって、トマトの種類を使い分ける。そのプロのこだわりに驚くのはもちろんですが、そのトマトの活かし方の多彩さ。
前菜のカプレーゼでは、生の新鮮な甘みが、食事の始まりを爽やかにする。
トリッパのトマト煮込みでは、あくまで主役のトリッパの味と旨みを引き立てる名脇役として登場。
パスタソースになれば、トマト自体の味わいを何倍にも奥深く、増幅させて味の決め手になる。
あぁ、なんてトマトって偉大なんだ! えらい! 好き!そして、トマトの魅力をこんなにも引き出すイタリア料理は素晴らしい!
おいしかった……! ごちそうさまでした!
こうしてぼくは、リスペクトにも似た感情をトマトに抱くようになったのです。
ヒトサラ編集部・郡司
旅行ガイドブックの編集者だったが、外食・居酒屋好きが昂じてヒトサラへ。居酒屋文化とシューマイ、痺れる麻婆豆腐が大好き。
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