コーヒーの新しい扉を開く、非日常の体験が待っている|【KOFFEE MAMEYA -Kakeru-】清澄白河
表参道にあるスペシャリティコーヒーのセレクトショップ兼スタンド【KOFFEE MAMEYA】の2店目が2021年1月、清澄白河にオープンしました。ここは単にコーヒーを飲むカフェや喫茶店ではなく、コーヒーをコースで体験することができます。一体どんなお店なのでしょう? オーナー兼バリスタの國友栄一さんに店造りやコーヒーへの思いを伺いました。
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新しいコーヒーの扉を開くコース
国内外のロースターから厳選豆×熟練バリスタ
コーヒーカクテルチャンピオンのグラスも愉しめる
バリスタの丁寧な手ほどきで、“違い”を飲み比べ、理解を深めることができる
東京のコーヒーのメッカとなっている清澄白河にオープンした【KOFFEE MAMEYA -Kakeru-】。築50年ほどの倉庫を、トタン張りの外観はほぼそのままに、店内は倉庫ならではの天井の高さを生かし、能の舞台を彷彿させるような凛とした空間にリノベーションされています。
天井高はなんと8mと、屋内ながらも開放感があって居心地がよい。4m×4mのカウンターが設えられた直線的な空間で白衣を着たバリスタたちが働いている様子はまるでラボのよう
従来のコーヒー店と大きく違うのは、自分の好みの豆を選んでオーダーするのではなく、コーヒー豆の産地や品種の違い、ローストの違いを飲み比べて体感できるということ。「コーヒーのことをさらに深く知るきっかけとなる体験をしていただけたら」と代表の國友栄一さん。
コーヒーの本質を伝える店を国内外で手がけてきた嗜好品研究所の代表取締役であり、熟練のバリスタでもある國友栄一さん
国内外のロースターを自ら訪ね、優秀な焙煎士たちと対話を重ねてより良い豆をセレクト。「これら最高級の豆を扱うことができる経験豊富なバリスタが活躍できる場として意味がある場所にしたい」と話す國友さんにお話を伺ってみました。
席に座ると、まずメニューやコースの内容についてバリスタが丁寧に説明をしてくれる
──コーヒーをコースで提供されるということで話題になっていますね。
「新しいコーヒーの扉を開いてほしい」と考えたやり方なんです。コーヒー好きな人がより好きになってくれる、あるいはコーヒーが苦手と感じていた人に「美味しい!」と思ってもらいたい。そのためにはただ注文を受けてコーヒーを淹れるのではなく、どんなコーヒー豆を扱い、どんな抽出方法があるのか、それによって味わいがどうなるのかを知識豊富なバリスタが説明をして、できるだけお客様の好みに近い豆を一緒に選び、実際に飲み比べる体験をしていただくのが一番と思ったからです。
──実際に来店されるのは、コーヒー好きの方が多いのですか?
食全般に興味がある人が多いのではないかと感じています。コーヒーを飲めるお店はいたるところにありますし、コンビニでも買える。家で淹れる人も多いですよね。長く日本人の生活の中にあり、慣れ親しんでいる飲み物なのに、意外と深く知らない。だから「コーヒーのことをもっと知りたくて来ました」という方がとても多いです。説明をすると、皆さん積極的に質問されます。
──コーヒー専門のカフェやロースターが増えているけれど、選び方がわからなかったり、淹れ方に自信がなかったりする方が多いということですね。
そうです。同じ品種の豆でも、産地、生産者、そしてロースターによって味もさまざま。自分の好みはどういうタイプなのかを探りたい、明らかにしたいとか、どんな風に淹れたらどういう味になるのかなど、もう一歩、二歩先に進みたいと新しい体験を期待して来てくださっているようです。
──主なコースが3つありますね。初来店ならどのコースがオススメですか?
ローストの違いを体感するなら『Roast Experience Course』、抽出法の違いを体感するなら『Koffee Mameya Course』ですね。自分の好みを探る近道になると思います。
焙煎による味わいの違いを体験できる『Roast Experience Course』2,500円(小菓子付き)
『Roast Experience Course』は、浅煎り、中煎り、深煎りをコールドブリュー(※1)とミルクブリュー(※2)でそれぞれ飲み比べを。さらにミルクブリューとハーブのシロップなどを使ったノンアルコールカクテル“モクテル”、そして、飲み比べで一番気に入った豆をフィルターで煎れたコーヒーで楽しんでいただくという流れです。
※1「コールドブリュー」=コーヒー豆を水に浸して常温で13時間半おいたもの
※2「ミルクブリュー」=コーヒー豆を牛乳に浸して冷蔵庫で8時間おいたもの
さまざまな種類のコーヒー豆をあらかじめ水や牛乳に浸して抽出。ボトルに移し氷で冷やしている
『Koffee Mameya Course』は、バリスタがお客様の好みをお聞きしながら、メニューにあるコーヒー豆の説明をします。そして、好みのタイプの豆を選んで、コールドブリュー、ミルクブリュー、フィルターで煎れたコーヒー、最後にラテとエスプレッソと淹れ方や温度、お菓子との組み合わせによる味わいの違いや変化を体験していただきます。
明るく親しみやすい接客、わかりやすい説明で楽しませてくれるバリスタの小倉貴幸さん
──酸味が苦手で浅煎りを敬遠していた人も目から鱗の体験になるのでは?
そうですね。酸味が苦手と思っていたのが実は“酸化”したコーヒーの酸だったということに気がつく方もいらっしゃいます。「コーヒーじゃないみたい」とおっしゃる方もいます。“香ばしくて苦味があるのがコーヒー”という時代も長かったので、固定観念を持っている方が多いのかもしれません。コーヒーってフルーティなものがあったり、発酵のニュアンスがあったり、味わいの幅がとても広いということを知るともっと楽しめると思います。
──国内外のロースタリー(焙煎所)を厳選していらっしゃいますが、【KOFFEE MAMEYA】ではローストはしていませんね。
ロースター(焙煎士)とバリスタ、それぞれプロとして分業した方がお客様により良いものをお届けできると思っています。ロースターは生産者とコミュニケーションをとって良い豆を育ててもらえるようにしたり、同じ農園の中でもスペシャルな豆を入手できるような信頼関係を築いたりして、より良い豆で、その豆に合った焙煎を極めることに注力した方がいいですよね。
バリスタはロースターとの信頼関係を築いて、豆のポテンシャルを100%引き出すような仕事ができるよう、創造力や技を磨き、お客様ともコミュニケーションしながら経験を積み上げていくのが理想ではないかと。
エントランスのテイスティングカウンター。豆の袋やメニューの色のグラデーションが焙煎の度合いを示している
──ロースターは生産者寄りで、バリスタは消費者寄りということですね。
そうです。両立している方もいますが、分業にした方がブレがなくより良いものが生まれてくると思います。なので、【KOFFEE MAMEYA】ではロースターを訪ねて、その方々のおつきあいのある生産国や生産者との関係性や得意な味の出し方を見極めて仕入れています。
常時約25種のコーヒー豆をラインナップ。メニューや布のショッパーのグラデーションは、浅〜深煎りまでローストの違いを表現
『ゲイシャ』という品種は、コーヒーは1杯3,000円以上、飲み比べのコースは5,500円と高価ですが、頼まれる方が結構いらっしゃいます。バリスタの説明と共に最高の技術で淹れるという納得のいく付加価値でサービスできれば、必ず満足していただけるということを確信できるようになってきました。
──表参道の【KOFFEE MAMEYA】は、ある程度そういうことを知っている人が行くマニアックなお店のイメージでしたが、ここ、【KOFFEE MAMEYA -Kakeru-】コーヒーが大好きな人も、あまり詳しく知らない人もどんな人でも楽しめますね。
表参道の【Koffee Mameya】はスペースが狭く、スタンドだったのでゆっくりしていただくことができませんでした。コロナ禍でお家時間が増えたことで豆はもちろん、器具や淹れ方にこだわる人は一気に増えましたよね。ですから、【KOFFEE MAMEYA -Kakeru-】では、美味しいコーヒーを入れるための説明はもちろんですが、コース仕立てにしたり、モクテルやカクテルで提供したり、お家やほかの喫茶店、カフェではできない、非日常的なプレゼンテーションをしているのです。
──コーヒーカクテルも評判ですよね。
コーヒーカクテルの国内大会「Japan Coffee In Good Spirits」で優勝経験のあるバリスタ・図師が、コーヒーの苦みや芳ばしさだけを主張するようなコーヒーカクテルではなく、甘過ぎず、重過ぎずコーヒーの真の魅力を感じてもらえるカクテルをいくつも生み出しています。
コーヒーをベースにしたカクテル『シニョリーニャ』1,800円。同名のフェラガモの香水からインスパイアされた作品
「Japan Coffee In Good Spirits」にて2018年、19年と2連覇を果たした図師聡氏。グラスに香木で香りをつけ、合わせるリキュールや自家製のシロップを合わせ、シェーカーで振って仕上げる
コーヒーを食材として捉え、奥行きを感じていただけるカクテル。サプライズの要素もあり、リピーターが増えています。緊急事態宣言中はお出しできなかったのですが、今後きっとファンが増えていくと思います。
──食後にこういうカクテルが飲めたら幸せですね。バーとして夜に営業するお店の展開も期待しています! いずれにしても、コーヒーに対する興味や理解は以前よりかなり深まっているということですよね。ワインのように。
はい、ワインも段階を踏むことでだんだん求めるものが変わってきますよね。コーヒーも生産者やロースターなどまでこだわってより上質なもの、個性的なもの、さまざまな味わいを体験したいという人はますます増えていき、コーヒー文化が成熟していくそのお手伝いをするのが私たちバリスタの役割です。
ミルクブリューコーヒーをベースにした『Roman Hikou 浪漫琲珈』1,500円
──レストランにソムリエがいるのが当たり前になってきたように、今後はいいレストランにはバリスタがいる、というのがスタンダードのなっていく日がくるのでしょうか?
はい、ガストロノミー(美食学)にもっと入り込んでいけることを目指しています。料理に合わせて豆を選び、食事の最後を締めくくる。食事の途中でコーヒーを合わせるというのもありだと思っていますよ。発酵のニュアンスがあるワインのようなコーヒーもありますから。
お家でも、カフェでも、朝昼夜と時間帯によって、あるいは気分によって色々な対方のコーヒーを楽しんでいただきたいですね。ですから、マンツーマンでサービスをする【KOFFEE MAMEYA -Kakeru-】で何でも聞いてください。
“Kakeru”という店名は、ロースターはもちろん、パティシェ、シェフ、バーテンダーなどその道のプロとコラボレーションして新たな価値を創り出していく、という意味が込められている
目覚めに、集中するために、食後になどいろんなシチュエーションでコーヒーに親しんでいる私たち。コーヒーの知識があやふやという人も、もっと知識を深めたいというマニアも【KOFFEE MAMEYA -Kakeru-】のコーヒーコースで、新たなステップへと誘ってもらえます。コーヒーの驚くべき多様性をぜひ体感してみてください!
【KOFFEE MAMEYAーKakeruー】
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電話:03-6240-3072
住所:東京都江東区平野2-16-14
アクセス:清澄白河駅 徒歩12分店舗詳細はこちら >
バリスタ 國友 栄一さん
嗜好品研究所 代表取締役
1974年生まれ、福井県出身。フレンチレストランで働いたことをきっかけにバリスタとしてキャリアをスタート。2003年に独立し、大阪でバールを立ち上げたのち09年には東京や世界にも視野に広げて活動。11年、【OMOTESANDO KOFFEE】をオープン。建物の老朽化で一旦閉店し17年【KOFEE MAMEYA】としてリニューアルオープン。香港、シンガポール、ロンドンでも展開を続けている。
【KOFFEE MAMEYAーKakeruー】
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電話:03-6240-3072
住所:東京都江東区平野2-16-14
アクセス:清澄白河駅 徒歩12分店舗詳細はこちら >
撮影/今井裕治 取材・文/藤田実子
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