「マークの家へ食事に行こう」。そんな気持ちで通いたくなる究極の隠れ家|目黒【Mark’s Tokyo(マークス トウキョウ)】
料理人をしていた日本人の父と、料理上手なイタリア人の母の元、「料理は愛情表現」という環境で育ったマーク・関田さん。一度は金融業界で働くも、愛を生み出し拡散できる料理への思いが高まり39歳で料理人に転身しました。4年前、縁あってお父さんの母国、東京・銀座で【Mark’s Table】をオープンしたマークさんですが、昨年一旦クローズし、2021年6月に目黒の住宅街へ移転し【Mark’s Tokyo(マークス トウキョウ)】に。温かみがさらにパワーアップしたマークさんの“家”を早速訪ねてみました。
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「人を思う気持ちが料理を美味しくする」という愛情深い信念
アメリカ、イタリア、日本。自身のルーツがコンセプト
多様な食文化がお皿の上で見事に融合
「人を思う気持ちが料理を美味しくする」という愛情深い信念
サンフランシスコの日本料理店で料理長を40年以上務めたお父さんと、料理上手なイタリア系アメリカ人のお母さんを持つマークさん。子どもの頃から、愛情を込めて作られた料理が人を幸せにするという体験を通して料理人に憧れていたものの、大学を卒業後は金融業界に就職し、NYや東京で働いていました。
料理人に転身したのは39歳の時。NYの有名な料理学校でフランス料理の基礎を学びながらミシュランの一つ星レストラン【Gramercy Tavern】の名シェフ、マイケル・アンソニー氏の元で経験を積む
39歳から料理人のキャリアを積むのは大変なことですが、マークさんの夢を支えていたのは関田家の感謝祭やクリスマスをはじめ、休日の食事の思い出です。マークさんのお母さんは、そういった祝日に家族がいない、あるいは実家に帰れない友人を招待して一緒にテーブルを囲み、何日もかけて準備をしたたくさんの料理でもてなしていたのです。
「毎日誰かのために料理を作ることが楽しくてたまらない」と話すマークさん
「東京で金融の仕事をしていた時、クリスマスにアメリカに帰れない友人を呼んで母のクリスマスを再現してみました。友人が幸せそうな笑顔で食事を楽しんでくれている姿を見た時、僕もまた幸せな気持ちになり、改めて人のことを思って作る料理っていいな、できることなら毎日料理をして愛を拡散したいと、料理への愛情を止めることができなくなったのです」と転身のきっかけを振り返るマークさん。
アメリカ、イタリア、日本。自身のルーツがコンセプト
NYの【Gramercy Tavern】で料理人のキャリアをスタートさせたマークさん。「店の隣はファーマーズマーケットだったので、新鮮な旬の野菜を常に手にしていました。こういう大切に育てられた身体に良い食材を使って、おふくろの味、親父の味など昔から食べている愛すべき家庭の味、旅で出会った思い出の味など自分のルーツや経験をコンセプトにした店作りをしたいと構想を練っていました」。
コンセプトは「Farm to Table」。野菜や果物は長野や山梨の契約農家から食べ頃の採れたてを、肉は信頼のおける畜産家、魚介は豊洲から厳選して仕入れています
独立を果たしたのは2017年、なんと東京・銀座でした。「場所柄クラブ勤めの女性も多く、皆さんにホッとできる、と喜んでいただいていました」。国内外の雑誌やテレビでも取り上げられ、国境を超えたゲストを迎え、瞬く間に人気店に。マークさん自身もより良い食材との出会いを求めて、青山ファーマーズマーケットなど市場に足繁く通って生産者と話をしたり、自ら生産者を訪ねたりするなど、日本での基礎固めを強固にする3年を過ごしました。
銀座での契約は3年だったため、次なるステップとして「もっと自分の家のような気持ちでゲストを迎えられる雰囲気にしたいと」選んだのが、マークさんの居住圏である目黒だったのです。
目黒駅から目黒川方向に徒歩6、7分、メインストリートから少し入ったところにひっそりと佇む。チャコールグレーのコンクリートの外装と石のオブジェが目印
内装を手がけたのは、銀座の時と同じく空間エレメントデザイナー永井健太氏。壁の色はトレンドのくすみ系カラーでコージーな雰囲気を醸し出しています。また、カウンター、テーブル、椅子、すべて丸みをもたせて柔らかい印象に。「手に触れるところは角張っているより丸い方が、より家感が出て寛げるでしょう?」とマークさん。
メニューは、おまかせコース5品(スープ、前菜、パスタ、メイン、デザート)8,250円、4品(スープ、パスタ、メイン、デザート)6,050円、スープ・パスタ・デザートの3品のパスタコース3,850円の3種類
多様な食文化がお皿の上で見事に融合
スープは旬の野菜が主役なので、素材そのものの味を存分に味わえるよう元気な野菜を厳選して風味を楽しませてくれます。そして前菜は、メインがお肉になることが多いので、白身魚やマグロなど魚介を使用。魚が苦手な人でも気にせず食べられるよう、ハーブや自家製調味料で香りよく仕立てるようにしているそうです。
愛媛県産真鯛のセビーチェ。コロコロと角切りにした真鯛をライムで締めたものをアボカドのピュレと共にいただく前菜
鯛を使ったこの前菜は、ペルーを旅した時に出会った思い出の料理、セビーチェをマークさんのフィルターを通してアレンジした一皿です。ディルやチャービルなど数種のハーブに、絹豆腐を加えて作ったクリーミーなハーブソース、さらに山椒の実の醤油漬けがアクセントに。和洋の香りが融合し、国境を超えて誰もが親しめる味になっています。
「コースには必ずパスタを組み込みます」とマークさん
パスタ料理は、イタリア人のお母さんを持つマークさんだけにソースも麺もレパートリーは無限。「マンマの味」をベースに、マークさんがレストラン料理に昇華しているのです。また、ショートパスタからスパゲティ、太麺のフェトチーネなど麺も必ず自家製で用意されています。筋トレで鍛え上げた体でちから強く打つ麺はコシが強く風味も豊かです!
自家製イタリアンソーセージ、手打ちフェトチーネのレモンバジルソース。仕上げに24ヶ月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノを擦り下ろして供されます
フェンネルとニンニクで仕込まれた自家製のイタリアンソーセージを崩しながら炒めて、バジルとレモンで作ったソースで絡めたこのパスタ料理。ソーセージを炒めるときに漂ってくる匂いだけでも気持ちがあがり、マークさんもきっと同じような気持ちでお母さんの作るパスタにワクワクしていたのだろうなという想像さえ膨らみます。感謝祭の頃には、マークさんはもちろん、アメリカ人のソウルフードになっているマカロニチーズも登場するとのこと。
目の前のキッチンで香りよい鍋を振り、カウンターで盛り付ける臨場感たっぷりの調理風景に気持ちがますます高揚
メインのお肉は、小さな牧場で丁寧に育てられた国産の豚や牛を季節の野菜と一緒にというスタイル。特に豚肉は鹿児島の【ふくどめ小牧場】のサドルバックという希少品種のものを仕入れています。「牧場主の福留洋一さんが、ドイツで修業中に出会った品種で、これを育てたいと探しに探してやっとアメリカの大学から5頭送ってもらい、日本で育てているそうです。福留さんの人柄、情熱から生まれる味が素晴らしいのはもちろん、アメリカ生まれ、日本育ちというところが店のコンセプトにぴったり」とマークさん。
ふくどめ小牧場の豚肩ロースのロースト、長野産ルバーブのソースと満願寺唐辛子、キタアカリのポテトピュレ添え。ワインはカリフォルニアワインのみを用意。ボトル6,000円~、グラス1,300円~
ルバーブのソースは「日本では珍しがられますが、アメリカではポピュラーなんですよ」とマークさんが言う通り、綺麗な酸味が甘みのある豚の脂と好相性。また、なめらかなポテトピュレは、マークさんの丁寧な仕事を実感できます。
このほか、肉料理は和牛のグリルにお父さんのレシピをアレンジした醤油とみりん、ごま油を使ったソースのメニューもマークさんのシグニチャーになっています。
桃とフレンチバニラのアイスクリーム 自家製黄桃のコンポートを混ぜ込んだバニラアイス
締めのデザートは、旬のフルーツで作るアイスクリームです。「日本は季節ごとにおいしいフルーツがありますから、使ってみたくなります」とマークさん。健康を思いやるマークさんは、甘さは控えめに、コーンではなく、穀物のきびを弾けさせた香ばしく小さなポップで塩味を、キャラメルのクランブルで苦味も添えてバランスよい味にまとめています。
壁にかかるゴールデンゲートブリッジの版画。安藤広重に影響を受けたカリフォルニアのアーティストが日本で版画を学んで生まれた作品で「お店のコンセプトにぴったり」。サンフランシスコで見つけて、この店のオープンに合わせて送ってもらったそう
「料理は愛情」と言い切るマークさん。幸せな食体験をしてもらうことが自分の喜びでもあり、そのためには、愛情を込められつくられた食材を厳選する。食の本質を極めると言うことはまさにこうこと。マークさんがインターナショナルな感覚の持ち主ということもあり、フレンドリーな接客も自然体で、緊張も一気にほぐれ、1回目の訪問からリラックスして楽しめるのも【Mark's Tokyo】ならではの魅力。ファンは増える一方ゆえ、予約困難いならないことを祈るのみ。「コロナが落ち着けば、コース料理だけでなく、キッチンカウンターの後ろ、壁に据えられたカウンターでつまみとワインというようなスタイルも始めたい」とのことで、気軽にフラリと立ち寄れる日も楽しみです。
【Mark’s Tokyo】
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電話:03-6417-0664
住所:東京都目黒区目黒1-23-14
アクセス:目黒駅 徒歩6分店舗詳細はこちら >
撮影/今井 裕治 取材・文/藤田 実子 構成/宿坊 アカリ(ヒトサラ編集部)
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