心を豊かにしてくれる、裏路地の古民家フレンチ【HASABON】神楽坂
神楽坂のメインストリートから外れて裏路地を奥へ進むと、風情ある古民家が数件集まるエリアに行き着きます。その行き止まりにあり、看板もないお店が【HASABON(ハサボン)】。外観だけではどんなお店なのか分からない、秘密めいた隠れ家感も魅力です。ギャラリー? 茶寮? レストラン? いろんな「?」を解決すべく、お店に伺ってみました。
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「伝統×現代」「日本×西洋」“良いもの”のハイブリッド
ワイン、日本酒、お茶などの多彩なペアリング
カフェタイムやコースの最後に、ここならではの和菓子
「伝統×現代」「日本×西洋」など“良いもの”のハイブリッドがテーマ
裏路地の突き当たり。看板はなく、白い暖簾が目印
引き戸を開けて店内へ入ると、意外にも2層吹き抜けの明るく開放的な空間に驚かされます。古民家をそのままではなく、一度解体して、年季の入った梁や柱、床板などを使って和モダンな空間にリメイクされています。
物販スペースの奥にカウンター席がある1階
物販では器やお茶、和菓子などが購入できます
1階は酒器や急須、作家ものの器、【The Tea Company】のボトルドティー、無農薬やオリジナルのブレンドティなどお店で実際に使われているものを買うことができるコーナーがあります。そして、その奥がカウンター席になっているのです。
1階のカウンターには茶釜が据えられ、お抹茶はもちろん、抹茶ラテを点てていただくこともできます
そして、2階は抹茶茶碗や水差しなどを中心に、人気の現代作家の作品が並ぶギャラリー、茶の湯を楽しめる畳の小上がり、テーブル席があります。
2階はテーブル席がありながら、現代作家の器が並ぶギャラリーでもあります
陽の光が入る、明るく気持ちのいいテーブル席
やはりここはフレンチレストランでもあり、和菓子やお茶をいただける茶寮でもあり、日本酒やワインを楽しむバーとしても利用が可能。しかも、器のギャラリーでもありと…ひと言では言い表せない“多目的スペース”なのです。
炉が切られた畳のスペースでは、予約をすれば茶道体験をすることもできます
「私たち日本人の生活は、和の文化もあれば、西洋の文化もと混在するようになって久しいですよね。ですから、ここは、和洋両方の良さを取り入れながら日常の延長線上でお茶を飲んだり、食事をしたり、肩肘張らずほっとしていただける空間にしたかったんです」と話すのは、オーナーの宮下幸子さん。
カウンターには茶釜が据えられ、宮下さんが目の前で抹茶を点てくれます
「HASABON」という不思議な店名は、実は漢字で「破沙盆」と書く禅語。割れて使い物にならないすり鉢のことを表す言葉ですが、「形にこだわり過ぎることなかれ」という教えであり、転じて円熟した境地という意味だとか。
「消費してしまうものではなく、日々使い続けられる、一生付き合っていける“好きなもの”を見つけて日常を豊かに過ごす、そんなきかっけをつなぐお手伝いができたらと思っているんです」。
選んだ茶碗で点ててくれる、クリーミーな『抹茶ラテ』880円(ひと口茶菓子付き)
「伝統、あるいは古いものと現代のものをかけ合わせたらどうなる? 日本の良いものと西洋の良いものをかけ合わせたらどうなる? などハイブリッドをテーマにして、新しいものが生まれたらいいな、とも思っています」。
そんな思いもあって、フレンチベースのお料理を出すことにしたそうです。
日本の素材や季節感が際立つ“ハイブリッドフレンチ”
鰹のタタキをミディトマト、ソルダム、グリーンオリーブのディップなどで和えた前菜。ソルダムの酸味、旨味が印象的
【HASABON】でシェフを務める小坂考弘さんは、本場フランスや日本のフランス料理店でキャリアを積むうちに、“日本でフレンチを提供する意味”を考えるようになったのだそう。そこで、魚の扱いや日本の食材を学ぶべく、日本料理店でも仕事をして、多くを学びました。
シェフの小坂考弘さん。フレンチに日本の調味料や自家製の香りのパウダーで旨味や香りをプラスして、独自の世界を表現する
「味や香りを重ねて調和させるフレンチの手法も追求したい。でも、日本人の気持ちにしっくりくる季節感や味わいも表現したい」と小坂さん。白味噌や酒粕、醤油やお茶のパウダーなどを使って和の旨み香りを巧みに融合させた独創性の高いフレンチで楽しませてくれます。
メインの肉料理はフランス産の鴨のほか、猟師さんから届く鹿などのジビエも登場する
フランス産の鴨のローストを人参のピュレ、そのアクセントにムール貝とサフランソース、生姜の香るキャラメリゼソース、そして晴れやかに香る青みかんとコリアンダーのパウダーなどで味と香りを重ねたこのメインの一皿のように、素材と副菜ソースと香りのパウダーの組み合わせが絶妙な料理ばかり。小坂ワールドが確立されています。
「甘×苦」をテーマにしたデザート
デザートは、イチジクのコンポートの表面をカラメリゼにし、ほうじ茶クリーム、カカオニブ、ホワイトチョコレートのパウダー、砕いたカカオニブを合わせて「甘×苦」を表現しています。
ワイン、日本酒、お茶で多彩なペアリングも楽しめる
ワインはヴァン・ナチュール中心。日本酒は姉妹店の【ふしきの】同様、提供温度や酒器にもこだわる巧みなペアリングで楽しませてくれます
形にとらわれすぎず、ハイブリッドで新たな味わいを生み出す【HASABON】。料理に合わせるお酒も、ワインと日本酒が用意されています。ワインは、小坂シェフの好みという体に染み込むような滋味と旨味のあるヴァン・ナチュールが中心。日本酒は同じく神楽坂に店を構える姉妹店であり、日本酒ファン絶賛の日本料理店【ふしきの】の日本酒担当と宮下さんが相談しながら、小坂さんの料理に合う日本酒をセレクト。
希望すれば、ワインも日本酒もペアリングで楽しませてくれます。また、お酒が飲めない人や日本茶好きには、高品質のボトルドティーも、と色々な楽しみ方を提案してくれるのです。
カフェタイムやコースの最後に楽しみたい、ここならではの和菓子
小坂さんが料理の合間に手作りしている隠れヒット商品『モチボン』(1個432円)
国産の美味しい煎茶や抹茶、紅茶のお供として用意されているここならではの和菓子もあります。ひとつは、小ぶりな大福『モチボン』。赤はフランボワーズを練りこんだ求肥で包んだピスタチオ、黒は、竹炭を練りこんだ求肥に洋酒に漬け込んだドライフルーツを、白はレモンジャムを練りこんだ求肥にクリームチーズとスポンジ生地をと、とても独創的なハイブリッド和菓子。
あさ貴さんの和菓子は、カフェタイムだけでなく食後のデザートとして頼むこともできます。(売り切れ次第終了)
もうひとつは、毎週土曜日の午後届く人気和菓子作家・あさ貴さんによるオリジナルの和菓子。七十二候に基づき、その時々ならではの意味のあるお菓子です。宮下さんからお菓子の説明を伺い、色や形、使われている素材に改めて季節を感じながらいただくうちに自然に日本の伝統文化への関心が深まっていきます。
陶芸家の作品を展示販売するギャラリーでもあり、日本茶、和菓子、独創的なフレンチ、ワイン、日本酒まで、新たな食体験ができる空間
概念を越える「温故知新」と「食」をキーワードに発信している【HASABON】。訪れるたびに新しい刺激を受け、自分の価値観をアップデートすることで、生活が、心が、少しずつ豊かになっていくとても素敵なお店です。
撮影/佐藤顕子 取材・文/藤田実子
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