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更新日:2023.07.10食トレンド デート・会食

サスティナブルとフュージョンがテーマのイノべーティヴイタリアン|【Peace】日本橋

昨今の大きな食トレンドといえば、まず思い浮かぶのが“サスティナブル”、そして“フュージョン”だろうかー。これらをコンセプトに掲げるレストランが、今、続々とオープン、話題を呼ぶ中、この二つの要素を併せ持つ一軒が今年の2月、日本橋にオープンした。その名も【Peace】だ。

peace

「今の時代、若い料理人達は様々なジャンルの料理を経験をしています。その経験をどのように活かし、アプローチすればオリジナリティを生み出せるのかーを常に模索する中から、新しいジャンルは生まれて行くのだと思います。ここでは、ジャンルにとらわれることなく、フレンチやイタリアン、日本をテーマにし、食材の持ち味を生かした料理をコンセプトにしていこうと考えています。フュージョンには無限の可能性と挑戦があり、そこから新しい感動と味が生まれる。それが、まさにフュージョンの魅力ですね。」の一言は、ミシュランの星付きレストラン「ラペ」の松本一平シェフ。そう、実は、この店、一昨年オープンしたおでんや「平ちゃん」に続く、松本シェフの3店舗目なのだ。

    peace外観

    今年の2月、日本橋は【ラペ】のすぐ近くのビルにオープン。目印はピースサインの赤い看板

新店舗を託されたのは、元々イタリアンでシェフを務めていた大島孝仁シェフ38歳。その大島シェフが語る。「20歳の時、アルバイトで入った恵比寿の【EAST GALLEY】で食べた賄いのパスタが美味しくて、イタリアンの道に進もうと決めました。」ここで4年間修業の後、大箱だった同店とは真逆の、こじんまりとした街場の個人店、五反田【小林食堂】で研鑽を積む。思えば、この【小林食堂】もフレンチ・イタリアンをベースに、スパニッシュなども取り入れた和洋折衷の料理が評判のレストラン。奇しくも、現在の素地はこの頃にあったのかもしれない。その後、四谷3丁目のワインバーでシェフを務めた後、32歳にしてに【ラペ】の門戸を叩いた。「ずっとアラカルト主体の店で働いてきたので、おまかせコースのスタイルを経験してみたいという思いとフランス料理への興味もあったんです。それに何より、松本シェフの料理と世界観が好きだったから。」が転身を決めた理由だったという。

    大島考仁シェフ

    イタリアンの経験が長い大島孝仁シェフ、38歳

【ラペ】では、サービスからスタートした大島さんだが、入社後、7年目にして【Peace】のシェフに就任。ここでは、長年培ったイタリア料理を基軸に【ラペ】で学んだフレンチの要素を加味。「フランス料理を学んだことで、食材や味の重ね方など料理の幅が広かったと思います。」とは大島シェフ。加えて、系列店の【平ちゃん】とのイベントで学んだ和食の技術も取り入れ、【Peace】ならではの味を目指している。それと同時に、【ラペ】同様サスティナブルな取り組みにも積極的だ。

    『包みピッツァカルツォーネ』

    『包みピッツァのカルツォーネ』。店からのメッセージが記されたペーパーに包んでどうぞ。

その象徴的な一品が『包みピッツァカルツォーネ』だろう。カルツォーネとは、ピザ生地を三日月型に折り畳んだ包み焼きピザのこと。なるほど、見た目はイタリアンだが、その実、中身はフレンチ的な構成になっている。大島シェフによれば「フランス料理のパイ包み焼きをイメージした仕立てにしている。」そうで、カレー風味のベシャメルソース、武鯛の塩麹漬け、ウドのソテーやタラの芽、セリ、コゴミにコシアブラ等々8種類余りの山菜が層になって包まれている。
ここで使われている武鯛がいわゆる“未利用魚”。“未利用魚”とは、規格外のサイズだったり、傷みやすかったり、収穫量が少ないなどの諸事情で市場に出回らない魚のこと。本来なら捨てられてしまう魚の付加価値を高めているのは、神奈川「さかな人」の長谷川大樹氏。脳締め、血抜き、神経〆めといった的確な下処理を施すことで、魚本来のポテンシャルを最大限に引き出している。【Peace】で扱う“未利用魚”も、この長谷川さんから仕入れているそうで、こうした魚を積極的に使うことが食品ロスにも繋がっていくという。

食品ロスはそれだけではない。今回はベシャメルソースだが、以前は系列店の【ラペ】や【平ちゃん】で出る魚のアラを全て引き受け、魚介のラグーソースを作って全て使い切るというように、食材を無駄にしない姿勢を徹底させている。また、武鯛は塩麹に漬けて余分な水分を取り、旨みを凝縮させるといった和の手法もさりげなく活用。更には、クミンの香りを偲ばせるなど緻密な味の構成はさすが。アツアツを手で割った時の、立ち昇る野山の香気は格別だ。仄かに漂うカレーの風味と伴って食欲を刺激すること請けあいだ。

    生ハムのブルスケッタ

    グストミオ社の『14ヶ月熟成生ハムのブルスケッタ』。パンは、日本の食文化に寄り添うパンがコンセプトの「中村食糧」のカンパーニュを使用

味の緻密さといえば、コースの冒頭に登場する生ハムのブルスケッタも同様。切り立てのハムを、ただパンに乗せるだけではなく、ホイップしたバターとピスタチオペーストを合わせたピスタチオバターを塗り、メープルシロップを僅かに偲ばせることで、甘みと塩味、そしてピスタチオのコクに香ばしい風味と複合的な味わいのグラデーションを楽しませてくれる。

    生ハムのブルスケッタ

    生ハムスライサーの“フェラーリ”とも称されるイタリアの老舗ブランド「ベルケル社」のスライサーで切り立てを提供

ちなみにコースでは、カルツォーネの他、パスタが3品もお目見え。ニョッキや乾燥パスタ、手打ちパスタにトルテッリーニのような包むタイプとバリエーションも豊かに味わえるのも嬉しい。そして、締めのお楽しみは、なんとソフトクリーム! ジャージ牛乳をベースに生クリームなどをブレンドした自家製ソフトは、滑らかな口当たりとコク、そして、無添加ならではのピュアな後口が魅力。ゲランドの塩とオリーブオイルで大人の味変を楽しみたい。

    ソフトクリーム

    デザートの『ピースソフト』は、濃厚でいてなめらか。スペイン産のエクストラバージンオリーブオイル、フランス産ゲランドの塩で味変を楽しみたい

この記事を作った人

撮影/今井 裕治 取材・文/森脇 慶子

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