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更新日:2025.03.14旅グルメ 連載

ペルー【Central】(セントラル)【MIL】(ミル)~ヒトサラ編集長の編集後記 第77回

マチュピチュといえばペルーを代表する世界遺産。その近くに世界的に有名なシェフがレストランをつくりました。その名も【MIL】。正しくはレストランを併設した研究所と言うべき施設で、そこでいただく自然と共生してきた先住民たちの知恵がつまった料理には、いろんな可能性を感じることができました。

ヒトサラ編集長の編集後記

世界のベストレストランでも1位に輝いたことのあるペルー【セントラル】のシェフ、ヴィルヒリオ・マルティネスさん。彼が東京に出店したお店【MAZ】も、ミシュラン二つ星を獲得。多様性を土地の標高差という視点から捉え直した料理には、その土地が育んできた文化、伝統が生かされ、我々に新しい気付きを与えてくれます。

今回は、先日私がペルーで体験したヴィルヒリオさんの2つのレストラン【セントラル】【MIL】を紹介します。
まずはペルーのリマにある【セントラル】で、オーナーシェフのヴィルヒリオさんにインタビューしたところから始めます。

    ペルー

    ペルーのリマにある【セントラル】

―これからクスコまで飛んで【MIL】へ行くんですが、ここリマの【セントラル】との一番の違いはなんですか。

【セントラル】は僕の家、クリエーティヴでイノヴェーティヴな場所です。大都会の真ん中で強いチームがいて、芸術的な空間です。ここだけで200人もスタッフがいます。
それに比べ、【MIL】は自然の真っただ中にあるオーセンティックなお店です。自然と一体化しているガストロノミーです。

【セントラル】では、ペルーのいろんな地域、アンデスや海やアマゾンやらを標高別の料理にしています。
【MIL】は限定的です。ここではその地域の山全体を感じるような構成になっています。

  • セントラル

  • セントラル

―なかなかアクセスが困難な【MIL】ですが、経済的には機能していますか。

街と田舎の連携ですね。【MIL】では我々は地元のコミュニティと連携して、一緒に作物をつくったりしています。そしてそれらを【セントラル】や他の店で売ったり商品開発をしたりして経済を回しています。人の移動も含めローカルにけっこうお金が落ちるようになっていて成功しています。
アマゾンでも同様のものをやろうと考えています。

―あなたが東京に出店した【MAZ】は4年目を迎え、ミシュラン二つ星も獲得。いろんなシェフとコラボしたり、意欲的な展開をみせていますね。

ミシュラン二つ星は我々のゴールではありません。もっと上を目指さないとね。
【セントラル】では日々、新しいイノヴェーションを生み出しています。
シンプルな食材の可能性を最大限に引き出して、スピリチュアルでエモーショナルな、より高いレベルの料理を作っていくことがセントラルの理念です。

最も大切なことは、なぜ自分たちが料理をするのかということです。
美しい景色とそこにある食材の一貫性を保つことを目指しています。

【MAZ】のシェフ、サンティアゴはとてもいい仕事をしています。彼は僕の誇りです。サンティアゴは僕のもとで修業していた人ですが、もう僕と同じレベル、いや5年後には僕は抜かれる(笑)
最終的には我々全体が成長すればいいですけどね。
だから僕は、東京での主導権は彼に渡しています。周りにとらわれず自由な発想でやってほしい。

    セントラル

―あなたの料理は何と呼べばいいのでしょうか。イノヴェーティヴなペルー料理?

ペルーを題材にしたイノヴェーティヴな料理です。伝統的なペルー料理ではないですが、ペルーの食材や風土を表現した料理です。世界にはその土地固有の食材や風土があります。僕は世界中でこのコンセプトの料理をやってみたいと思っています。

―コンセプトといえば、いわゆるファインダイニングって現代アートみたいですよね。とてもコンセプチュアルです。あなたはいまのファインダイニングのシーンをどう見てますか。

ファインダイニングはフーディーやインスタグラマーたちのメインストリームになっていますね。でも情報が錯綜しています。僕はここにかかわる人たちは、もっと責任を持つべきだと考えています。もっと全体のレベルを上げなきゃダメなんです。
そのための教育の重要性を痛感しますし、私自身ももっと勉強しなきゃと思います。
もう、シャンペン、キャビアがラグジャリーって時代じゃないじゃないですか。

―ニッケイ料理についてはどうですか。

ニッケイ料理は、ペルーではポピュラーなジャンルです。いわゆるいまのニッケイ料理ってコマーシャルなんですよ。わかりやすくて、おいしくて、簡単に理解できる。だから、世界中に広がっていると思います。

でも、日本料理は本来シンプルで、とても深いものだと思います。この点が、ニッケイ料理と日本料理の大きな違いだと思っています。

    セントラル、ヴィルヒリオ・マルティネスさんとヒトサラ編集長

―いろんな現状を理解したうえであなたは世界の頂点に立たれているわけですが、これからシェフを目指す人へのメッセージがあればお願いします。

たとえばこの【セントラル】。ここにはいろんな人がからんでいます。職人から投資家、観光客まで。ここには多くの人が来てくれて、お金も落ちます。それが関係者に分配され、潤いをもたらす。
僕はそういうことをやってきた。
シェフを目指す人については、いろんな目標があると思うけど、ただ料理をつくったりサービスをよくしたりだけじゃなくて、世界のことを考えながら行動してほしい。
単にレストランをやるって言っても、一杯のコーヒーを出すときに、それはどこでどういう人がつくりどうやって運ばれ……みたいな背景まで語れるようであってほしい。そうすればその背景が自分の中で料理とつながる。僕はそう思っています。

    ペルー

    ペルー

    ペルー

【セントラル】でヴィルヒリオさんの話を聞いてから、私は【MIL】へ向かいました。

古都クスコまで飛行機で飛び、クスコの空港から車で90分ほどいった場所にそのレストランはあります。クスコは標高3400メートル、【MIL】は3685メートル、ともに富士山の頂上ほどの高地にあります。高山病予防も兼ねて聖なる谷と呼ばれる美しいエリアに宿泊して体を慣らしてから、現地に向かいました。

(次回に続く)

ヴィルヒリオ・マルティネスさんが東京に出店したお店【MAZ】の詳細はこちら▽

この記事を作った人

小西克博/ヒトサラ編集長

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