日本酒好き必見! 月ごとに惹きつけられる、全国の郷土料理と知られざる美酒を巡る旅へ【酒の和 幸多】|鶯谷
どうしても気になっていたお店がありました。毎月、全国の中から一ヶ所を「テーマ地域」として決め、その土地の特徴を色濃く映し出す“郷土料理”を出しているお店があるとのこと。さらに、その地域に合わせてメインの酒蔵さんまでも毎月変えながら、日本酒と食の新たな出合いを楽しめるようにしているとのこと。ここまでのこだわりを継続する、お店の方たちの活力は一体どこから……?ある夏の夜、期待を胸に足を運んでみました。
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その月だけの創作郷土料理
地酒と織りなす郷土の味
旅を続ける「理由」
その月だけの創作郷土料理
明かりに誘われるように、店内へ
鶯谷駅に降りたのは久しぶりのことでしたが、どうしても行きたい場所があったので、北口からそのまま真っすぐ歩いていきました。3分ほど歩いたところで道沿いに現れたのが、今回の目的地【酒の和 幸多】。お店の明かりに誘われながら、木の扉を開け店内へと進みます。
予約名を伝えカウンター席へと案内していただくと、その机に既に置かれていたのは「【今月の創作郷土料理】メニュー表」、「今月のメインとなる酒蔵さんについてのしおり」そして「AIソムリエ」のタブレット。冒頭から郷土料理と地酒の組み合わせを存分に楽しんでもらいたい、という想いが伝わってきて、期待感も一層高まります。思わず夢中になって読んでしまいました。
各席にあらかじめ置かれている、「メニュー」や「酒蔵のしおり」。その日の郷土料理にあわせたオススメの日本酒を教えてもらいながら楽しむことはもちろん、写真左の「AIソムリエ」で自分好みの味を探して頼むことも可能
「温かいおしぼりか冷たいおしぼり、どちからがいいですか?」声をかけてくださったのは、料理長の鈴木浩太さん。最初の日本酒とともに希望を伝えると、コースがスタートします。
毎月場所を変えているという「テーマ地域」ですが、私が訪れた2025年7月のテーマは滋賀県。滋賀県の滋味深い郷土の味わいや食材を、同じく滋賀県で創業160年となる酒蔵による「金龜(きんかめ)」シリーズをメインに楽しむというラインアップとなっていました。ちなみにひと月前の6月には新潟県で、8月は茨城県がテーマ。毎月20日を目安に次の地域をお店のInstagramなどで発表しているとのことです。
滋賀県の伝統的な料理を小鉢でいただく『前菜6種盛り合わせ』。この日の内容は、くるみ牛蒡(写真左)・赤こんにゃくと鶏肉のきんぴら(写真中央)・厚揚げ田楽味噌(写真右)・山葵菜のお浸し・鰻と錦糸玉子の棒寿司・クリームチーズ生からすみ和え。こちらに合わせるオススメの日本酒は「金亀 夏酒」や東京都の「澤乃井」でした
さて、一品目となる『前菜6種盛り合わせ』から楽しくなるものばかり。滋賀県の特産品である赤こんにゃくを使用した「赤こんにゃくと鶏肉のきんぴら」や、甲賀市信楽町に古くから伝わる枝豆でつくった餡が印象的な「くるみ牛蒡」など、それぞれのお料理の話を伺いながら気持ちはあっという間に滋賀県へ。
『バームクーヘン豚のじゅんじゅん風ステーキ』。手前の黄色は卵黄ソース。歯切れよく柔らかでしっとりしたバームクーヘン豚と一緒に絡めていただきます。なお、こちらには「金亀100ハイボール」や福井県の「飛鳥井」の日本酒がオススメ
また中盤でおもしろかったのは、『バームクーヘン豚のじゅんじゅん風ステーキ』。バームクーヘン豚とは滋賀県のブランド豚「藏尾ポーク」のことで、かつてバームクーヘンを餌としていたことでその名で広く知られているとのことです。また“じゅんじゅん”とは滋賀県で古くから親しまれているすき焼き風鍋料理のことで、鍋の煮立てている音がじゅんじゅんと聞こえることからこの名が付いたのだそう。地元の名物でもあるため地域の方々にとっては馴染み深いものかと思いますが、それらのおいしい料理を都内にいながら実際に食べたり、新たな知識として知ることができるのが、【酒の和 幸多】ならではの醍醐味だと感じました。
地酒と織りなす郷土の味
最初の『前菜6種盛り合わせ』にオススメして頂いた、金亀シリーズの「夏酒」。季節に合わせたお酒が楽しめるのも、毎月新たなラインアップを取り入れている同店ならでは
「日本酒を心ゆくまで楽しんで頂きたい」と話す同店の料理長鈴木さんは、東京のホテルや割烹、会員制会席料亭や有楽町の創作和食店で研鑽を積まれてきた方。以前のお店でも全国の酒蔵さんを招いてイベントを行っていたこともあり、今でもその繋がりを大切にしながら全国の日本酒を広めるため調理場に立たれているとのこと。またご自身も日本酒が好きという“日本酒愛”あってこそか、料理の内容はお酒からも考えていらっしゃるそうです。
また幾つかの日本酒が気になっていたところ、その様子に気づいて「飲み比べてみますか?」と話しかけてくださったのはマネージャーの米倉徹さん。鈴木さんと二人三脚で日本酒との新たな出合いやおいしさを伝えている方で、希望によりお店のオススメや「テーマ地域」だけに縛られない日本酒の提案もしてくださる様子が印象的でした。
実はこうした日本酒を、好きなだけ・何種類頼んでも、料金はコース料理も全て含めて一律10,000円(税込み)。日本酒を存分に楽しんでもらいたいという気持ちが、ここにも表れていました。
旅を続ける「理由」
「毎月というスパンで、知識の必要な郷土料理やメインの地域そのものを変えて、食材の仕入れ先、酒蔵さんの仕入れ先までも新たにして……大変じゃないですか?」ふと、当たり前のような素朴な疑問が湧き、鈴木さんへ伺ってみました。するとひと言、穏やかな笑顔で「大変ではありますね。」そして、「でも今後はさらに47都道府県、なるべく被らないように様々な地域をテーマにやっていきたいと思っています。酒蔵さんも広げていきたいです」と話してくださいました。
実際はこちらの想像以上の目まぐるしさの中、それを打ち消すほどの「全国に沢山ある素晴らしい日本酒や酒蔵さんを応援したい。知ってもらうことで、新たな日本酒の価値を広めていきたい」というお店の強い想いそのものが、日々の活力となっていることを感じさせてくれました。
テーマ地域が変わっても、コースの“締め”にはいつまでも変わらないお店の定番『川俣軍鶏の自家製白湯らーめん~トリュフ風味・自家製ハーブバター添え~』が登場。サラリとしながらコクがあり、鶏のだしの旨みがぎゅっと詰まったスープはいつまでも飲み続けていたくなってしまうほどのおいしさです。常連の方たちからもファンの多い一杯です
知っているようでまだまだ奥深い、日本各地の“郷土料理”。そして、そのおいしさを引き立てる地域に根差した“酒蔵”もまた国内には数多く存在します。これらの素晴らしいおいしさに出合うきっかけと、日本全国の酒蔵さんたちの想いを少しだけ垣間見させて頂いたような気持ちにも。
お店を後にし夜道を歩いていると、店名にもある「幸・多」の漢字が頭の中にちらり。きっと訪れる方だけでなく、日本各地の酒蔵さんや地元の農家さんなど多くの方たちが幸せになっていく、そんな場所なのだと感じさせてくれました。
この記事を作った人
鈴アヤ(ヒトサラ編集部)
都内の新店や話題のお店を中心に、取材・ライティングをしているヒトサラ編集部メンバー。「オシャレランチ」「デート向き・夜景が見える」「ペアリング」の言葉に反応しがち。Instagramアカウント名は『あむグルメ』
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