潮風を感じる長谷に登場! 【ラ・ブランシュ】出身のシェフが迎える、素材愛にあふれるフレンチ|鎌倉【Sirius】
鎌倉駅から江ノ電に揺られるのもよし、のんびりと散策しながら歩いてもよし。2022年10月4日、あじさいの名所として知られる長谷寺のほど近くにフランス料理店【Sirius】がオープンしました。オーナーシェフは飯倉【キャンティ】や表参道【ラ・ブランシュ】などの名店で腕を磨いた加藤光一さん。都心から拠点を移した新境地は、早くもリピーターを生み出す注目店となっています。
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素材を主役に、丹精込めてつくり上げる美しいメニュー
生産者との繋がりを大切にして、各地から仕入れた素材が自慢
ゆったりと寛いで美食を楽しめる温かみに満ちた空間
素材を主役に、丹精込めてつくり上げる美しいメニュー
長谷駅から海岸側へ、歩くことわずか1分という好立地に
江ノ島電鉄線・長谷駅を降りてから海岸方面へわずか徒歩1分。都心ならば喧騒がつきものの駅近ながら、潮風が抜ける心地よさを感じるところに登場したのが【Sirius】です。加藤光一シェフが手掛けるのは、鎌倉をはじめとする日本各地の食材を生かし、引き立たせる料理。そのためにとことん手を尽くす一皿は、はっとするような鮮烈さや余韻が続く奥深さに満ちています。まさに山海の恵みを楽しめるメニューの一部を紹介します。
『鎌倉野菜のバリエ』には自然派ワイン「カステル・デル・ピアーノ ドゥルリンダーナ」がおすすめ
鎌倉と聞けば、農協連即売所・通称レンバイに並ぶような彩り豊かな「鎌倉野菜」を思い浮かべる人も少なくないのでは? そのイメージをそのまま表した一皿がこちらのサラダです。ふんだんに盛り込まれた鎌倉野菜は、それぞれの持ち味を引き出すように異なる調理を施され、セロリや大葉、塩漬けレモンなどを使った数種類のソースを添えて。瑞々しい葉野菜はシャキッパリッ、時にほろ苦かったり微かな辛みがあったり。ごぼうの香りやかぶの甘み、いんげんの青々しい風味。一口ごとに野菜の個性が際立ち、楽しいスターターになっています。
『太刀魚のフリット ベアルネーズソース』
指5本以上の太さがあるものが称されるという“ドラゴン太刀魚”はフリットに。その日の朝に挽いたばかりの自家製スパイスをまとわせ、皮目はパリッと炙っています。卵黄やビネガー等からつくるベアルネーズソースは相性抜群。さらに、刻んだ金柑、トマトと豆鼓、バジルなどのソースをあしらい、ふっくら肉厚な太刀魚を重層的な味わいで楽しめます。
『目鯛のミキュイ サフランソース』
鳥取産の目鯛は皮目を炭火で香ばしく焼き付けたあと、オーブンでサッと火入れしたミキュイに。川俣シャモのだしをベースにしたサフランソースとともに口当たりよく味わいつつ、上に添えたアオモジの花、揚げた紫ケールと白ねぎがアクセントになっています。
『鹿もも肉の炭火焼き レバーとハツのブロシェット』
メインディッシュの鹿肉は、名立たるレストランが信頼を寄せるハンターのイナバジローさんが仕留めたもの。クレピネット(網脂)で包んで炭火焼きにすることで、ジューシーな旨みを湛えた仕上がりになっています。もも肉は嚙むごとに力強い味わいが広がり、レバーとハツはマッシュルームやキャベツとともにブロシェット(串焼き)スタイルに。レバーの濃厚な風味とハツのプリッと心地いい食感に質の良さを実感します。
料理のみならず、自家製パンのおいしさも評判に
料理のおともになるパンはお店で焼き上げ、スライスしてテーブルに供されます。外はカリッ、中はみっちりもちっとした食感が印象的です。
『チョコレートとグランマルニエのスフレ トンカ豆のアイスクリーム』
デザートにはチョコレートとグランマルニエのスフレを。オーブンから漂う香りを楽しみつつ、運ばれてきた焼き立てのスフレにスプーンを入れるとふわっふわ! 口どけは優しくなめらか、そこにチョコのコク深さが広がります。アイスクリームはトンカ豆が甘く爽やかに香り、熱々スフレとのコントラストも楽しい一皿に。
キッチンを目の当たりにできるカウンターは全7席
料理はランチが3,850円から、ディナーが7,700円からのコースの他、アラカルトもラインナップ。フルコースでとっておきの鎌倉ディナーを堪能しても良し、リピート時にアラカルトからお好みメニューをピックアップして楽しんでも良しです。
生産者との繋がりを大切にして、各地から仕入れた素材が自慢
仕入れた食材、生産者さんの魅力について語る加藤光一シェフ
料理について加藤シェフに尋ねると、まず一言目に挙がるのが「加藤さんのセロリ」「鳥取のジローさん」「網元の加藤さん」といった生産者さんと食材について。熱を込めて素材の良さを語る加藤シェフの料理は、驚くほど丹念で丁寧な仕込みから始まります。
『鎌倉野菜のバリエ』を彩る野菜は、あるものはボイル、あるものはグリルして。さらにあるものはローズマリー、あるものはタイムを添えてマリネに。手間を惜しまず、すべて異なる調理を施されて出番を待っているのです。
『鎌倉野菜のバリエ』になる野菜はそれぞれに違う調理法を駆使している
ジローさんの鹿は、旨みがしっかりとしたもも肉の下味はシンプルに塩で、レバーとハツはエシャロットやガーリックを使ってマリネに。炭火にかけた後も、時折火から離して休ませつつベストな火入れを見極めています。
「素材そのものがおいしいから、それらをどうすれば生かせるか考えている」という加藤シェフ。素材を見極めて、その持ち味を底上げするように手を尽くすからこそ、おいしさがストレートに伝わります。オープンキッチンで奮闘する加藤シェフの姿から、それを目の当たりにできるはず。
クレピネットで包んだ鹿肉は火入れを加減しながら焼き上げる
こだわりの食材については、都内レストラン時代に関係を築いた生産者さん、鎌倉を拠点にして生まれた地元のものを中心に、さらに「気候の変化などで生産地が変動しているので」と常にアンテナを張っているそうです。
幅広くセレクトしたワインはグラス1,100円~、ボトル5,000円~
そうやって仕上げられた料理に欠かせないワインは、フランスに限定せずにイタリアやポルトガル、日本のものまで幅広く揃えています。いいと思ったものをピックアップするスタンスは、料理の食材と同様。グラスワインも用意されているので、迷ったときは相談すれば料理に合わせて提案していただけます。
ノンアルコールもハイエンドなレストランで支持されている【NON】や【YOI LABO】のドリンクがセレクトされていて、ペアリングで楽しむことができます。お酒が飲めなくても楽しめるので、海沿いドライブで訪れたときもご安心を!
ゆったりと寛いで美食を楽しめる温かみに満ちた空間
店を構えるにあたり、現地を見て即決したという物件は元お豆腐屋さんだそうです。打ちっぱなしの床にアイシーなグレーの壁を基調にした空間は、クールになりがちなのに何故か温かさに満ちています。
友人のショップから「もらってきた」という木根はまるでオブジェのよう
エントランスの植え込みから店内のコーナーまでに配されたグリーン、オブジェのように吊られて柔らかい影をつくる木の根。壁はあえて天井とトーンの違うライトグレーを使い、そこにはアートが飾られています。
明るくゆったりとしたスペースに配されたテーブル席
植物、インテリアデザイン、アートはどれも加藤シェフのご友人によるものだそう。「開店にあたり、いろいろな人に助けてもらいました」という、人の繋がりによって完成した空間だからこそ、この温もりを感じるのかもしれません。
イセンハムさん作のアートが空間を引き立てている
さらにレストランという空間をつくるのは、ここを訪れる“ひと”。地元食材についておすすめの食べ方を教えてくれるご近所の人、加藤シェフの修業先【キャンティ】【ラ・ブランシュ】を古くから通い詰めた人、鎌倉エリアを観光するために足を延ばしてきた人。さまざまな人たちから「日々、刺激を受けています」と語る加藤シェフ。
おおいぬ座の一等星でもある【Sirius】という店名は、シェフのお名前「光一」から由来したものだそうです。さりげなくも自身の名を冠した新星で、素材への思いあふれる料理とともに迎えてくれます。
撮影/今井 裕治 取材・文/首藤 奈穂(フリーライター)
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