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更新日:2017.11.01食トレンド 連載

“オーベルジュ”と”ホテル“のコラボディナー!?@フォーシーズンズホテル丸の内 東京/連載「食べに行こう、旅に出よう」

フォーシーズンズホテル丸の内 東京【MOTIF RESTAURANT & BAR】で箱根【オーベルジュ オー・ミラドー】、長崎【オーベルジュあかだま】、伊東【オーベルジュ花季】のシェフが夢の競演。オーベルジュとホテルという異業種が巻き起こす化学反応はいかに?

オーベルジュあかだま「長崎西海の伊勢えびのポワレ」

みなさんこんにちは。ヒトサラ副編集長の山路美佐と申します。
昔から、食べることと旅することが何よりも好き。給料のほとんどをそこに使ってしまい、貯金は減る一方、体脂肪は増える一方。そんな私が、体を張って!? 仕事やプライベートを含めて訪れたレストランや、旅先で見つけた”おいしい話”を少しずつご紹介していこうと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

2017年レストラントレンドのキーワードの一つ”コラボレーション”

さて、早いもので今年ももうあと2ヶ月。仕事柄、今年のレストラントレンドを振り返る季節です。そんな企画をつい先日担当したのですが、個人的にも大きく感じたのはレストラン同士のコラボレーションの増加。今、巷ではこの”コラボ”が本当に花盛り。ここ数年のトレンドの大きな一つといっても過言ではないでしょう。

日本の有名レストランx海外の有名レストラン、東京のレストラン×地方のレストラン、フレンチ×イタリアンなどの異業種コラボ、カクテルバー×レストランのコラボ・・・・・・・。
右見ても左見ても、老いも若きも男も女も、組んずほぐれつ!?、あれやこれやとそりゃもう無限の広がりを見せています。なんといってもその楽しみは、コラボレーションによるその日だけの化学反応。レストランを、二つ、三つ掛け算することで、各店の知らなかった魅力がいろいろ引き出されていく。そんなところに魅力があるのだと思います。

今回お話するのも、そんな"コラボ"のこと。先日伺った「オーベルジュスタイル®・ディナーパーティ」。これは「日本オーベルジュ協会」と、スモールラグジュアリーホテルのフォーシーズンズホテル丸の内 東京のメインダイニング【MOTIF】とのコラボレーションディナー・イベントです。

  • 夜景が美しい【MOTIF】のダイニング。各シェフが担当する料理のメニューがセッティングされています。

    夜景が美しい【MOTIF】のダイニング。各シェフが担当する料理のメニューがセッティングされています。

人気のオーベルジュのシェフが東京のホテルに集結!

    日本で一番最初にオープンしたオーベルジュ、箱根【オーベルジュ オー・ミラドー】。

    日本で一番最初にオープンしたオーベルジュ、箱根【オーベルジュ オー・ミラドー】。

「オーベルジュ協会」と、「フォーシーズンズ丸の内 東京」。

一見なんの繋がりもないように見える両者。でも実は、ここのメインダイニング【MOTIF】は北海道の名店【モリエール】の中道博シェフ(オーベルジュ【マッカリーナ】のオーナーでもある)が監修。北海道をはじめとする、日本の地産の食材に光をあて、それを生かしたフランス料理がいただけます。なぜ、東京のホテルのダイニングに北海道のレストランのシェフが? と疑問に思うかもしれません。中道シェフも最初アドバイザーの話が来たときには仕事を受けるか迷ったと伺いました。

    フォーシーズンズ丸の内 東京【MOTIF】のメインダイニング「The Social Salon」

    フォーシーズンズ丸の内 東京【MOTIF】のメインダイニング「The Social Salon」

それでも中道シェフが監修を決意することになったのは、都心のホテルにもかかわらず、57室しかないこのホテルの規模にあるといいます。都心のホテルでは珍しいスモールラグジュアリーなホテルのダイニングならば、中道シェフのモットーである「街場のレストランのような、近い距離でのおもてなし」ができるのではないか。さらには海外のお客様が多いというこのホテルのゲストに対して、東京に限らず、北海道をはじめとする日本の豊かな食材を生かしたフランス料理は喜んでもらえるのではないか。そう考えたからだそう。そして、実際に【MOTIF】は温かな雰囲気と、素材を生かした料理で人気を博しているのです。

そういった意味では規模が違えど、地産の食材を存分に生かしたオリジナリティ溢れる料理で、家族のように宿泊者をもてなすオーベルジュと【MOTIF】は、考え方で共通することも多いといえるでしょう。

そうして「オーベルジュの魅力をもっといろいろな人に知ってもらいたい」、という協会代表の【オーベルジュ オー・ミラドー】の勝又登シェフの熱意に共感した【MOTIF】のカリナリーチームが意気投合して、2日間にわたるイベントが開催されたのです。

    長崎【オーベルジュあかだま】のダイニング

    長崎【オーベルジュあかだま】のダイニング

この日の参加メンバーは神奈川県・箱根【オーベルジュ オー・ミラドー】勝又登シェフ、長崎県・寺島の【オーベルジュあかだま】の中村浩徳シェフ、静岡・伊東の【オーベルジュ花季】坂本明恵シェフの3人。そこに【MOTIF】の浅野裕之シェフが加わり、4人の料理を一つのコースに組み立てた特別料理が登場しました。2日限りの料理を楽しみに、【MOTIF】のダイニングは予約したゲストでいっぱい!

オーベルジュの料理の魅力は、なんといっても地産の獲れたての食材を、その場でいただけること。この日もそれぞれのオーベルジュのシェフたちが地元から携えてきた食材で、調理をしてくれました。

    五島灘であがったばかりの魚介がズラリ! 圧巻です。

    五島灘であがったばかりの魚介がズラリ! 圧巻です。

特に【オーベルジュあかだま】の中村シェフは、五島灘で獲れた魚をまるごと空輸。食材を調理前に各テーブルに回って見せてくださいました。
今朝とれたばかりの五島灘の魚を、その日の夜に東京で食べるなんてなんという贅沢。

各テーブルからは写真撮影と質問の嵐が巻き起こりました。こういった特別な食材を使ったメニューも、コラボレーション・ディナーの醍醐味でしょう。

北から南まで、地方の山海の恵みをコースでいただく贅沢

中村シェフが持参した新鮮な魚介をはじめ、それぞれの地元の果物や野菜、地元の生産者と共同開発したという鶏肉まで、このような機会がないと一同には介さない食材が大集結。それをシェフたちがそれぞれのメニューも考えながらこの日のためだけの料理に仕立てていきます。

そんなメニューの抜粋がこちら。

    【オーベルジュ花季】の坂本シェフが作った「3本のアミューズ」。左から白桃とシャインマスカットの白和え、かぼちゃの冷製スープ、イチジクのコンポート、そして伊東の”すすき”を添えて。

    【オーベルジュ花季】の坂本シェフが作った「3本のアミューズ」。左から白桃とシャインマスカットの白和え、かぼちゃの冷製スープ、イチジクのコンポート、そして伊東の”すすき”を添えて。

    【オーベルジュあかだま】の中村シェフは新鮮な魚をカルパッチョに仕立てました。

    【オーベルジュあかだま】の中村シェフは新鮮な魚をカルパッチョに仕立てました。

    【オーベルジュ オー・ミラドー】勝又シェフの料理は黄色人参のガトー仕立て。塩うにを凍らせて棒状にしたものを、削って上からかけるというユニークなひと皿。

    【オーベルジュ オー・ミラドー】勝又シェフの料理は黄色人参のガトー仕立て。塩うにを凍らせて棒状にしたものを、削って上からかけるというユニークなひと皿。

    【MOTIF】浅野シェフの「レギューム 季節野菜の取り合わせ」

    【MOTIF】浅野シェフの「レギューム 季節野菜の取り合わせ」

    勝又シェフが地元の農家さんと開発したという『天城軍鶏』を使った「『天城軍鶏』のコンポジション」。部位ごとに火加減を緻密に変えて、それぞれの部位の魅力をぐっと引きだしている。ごぼうは真狩村の牛蒡。

    勝又シェフが地元の農家さんと開発したという『天城軍鶏』を使った「『天城軍鶏』のコンポジション」。部位ごとに火加減を緻密に変えて、それぞれの部位の魅力をぐっと引きだしている。ごぼうは真狩村の牛蒡。

  • 【オーベルジュあかだま】の中村シェフによる、「長崎西海の伊勢えびのポワレ」。あわせたお酒は「花季」のオリジナル。

    【オーベルジュあかだま】の中村シェフによる、「長崎西海の伊勢えびのポワレ」。あわせたお酒は「花季」のオリジナル。

  • デザートは【MOTIF】浅野シェフのモンブランと、静岡紅茶の「橘アールグレーティー」。ベルガモットの代わりに日本の柑橘「橘」を使って香り付け。

    デザートは【MOTIF】浅野シェフのモンブランと、静岡紅茶の「橘アールグレーティー」。ベルガモットの代わりに日本の柑橘「橘」を使って香り付け。

最初のアミューズから、デザートで出てきた、静岡紅茶の「橘アールグレーティ-」に至るまで日本の山海の幸がこれでもか!と並びます。

夜景がきらめく東京のど真ん中で、日本という国が育む食材の豊かさを、それぞれのシェフの個性溢れる料理で堪能する贅沢なディナー。まだ足を運んだことのない方も、オーベルジュに興味を持ち、現地でこの素敵なダイニング体験をしたいと思った人も多かったことでしょう。コラボレーションは、レストランを通じて、人と人を繋ぎ、知らない世界の扉をあける場所でもあるのだと実感。

ひと昔前までは、シェフたちが繋がり、一緒に料理をする、ということは距離や時間的制約や考え方の違いで、難しい部分もありました。けれど流通も情報の伝達も、10年前と比べられないくらいに格段に早く、変化する時代が到来。そんな時代だからこそシェフたちが国境も、ジャンルも飛び越えて縦横無尽に交差し、自由に繋がっていく。そして、その化学反応を楽しむ「コラボレーション」はゲストにもそして、イベントを開催するシェフ同士にも新しい発見があるようです。

今年はさまざまなシェフコラボ・イベントに参加しましたが、どれもとても個性的で楽しかった。今後、「コラボレーション」がどのように発展していくのか、個人的にとても気になります。




この記事を作った人

山路美佐(ヒトサラ副編集長)

幼少時代から筋金入りの食いしん坊。丸の内の総合商社に入社するも食への探究心を抑えきれず退職しイタリアに短期料理研修の旅に出る。帰国後世界文化社に入社し「家庭画報」ほかの雑誌で食・旅・アートの編集を担当。2017年3月から現職。美味探求の旅は30カ国以上にのぼる

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