韓国の干し柿の町尚州で発見、柿を食べて育つ牛の絶品焼肉と極薄ロース巻き!
韓国でも秋から冬にかけて干し柿を作る。韓国の中央部に位置する尚州(サンジュ)市は全国の約6割を生産する干し柿の名産地。副産物として発生する柿の皮は、同じく名産である韓牛の飼料に利用している。柿を食べて育った牛の焼肉に加え、極薄のロース巻きも美味しい。
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韓国においても秋から冬にかけては干し柿作りの最盛期
韓国中央部の尚州では柿の皮を牛の飼料として利用
柿の皮で育ったブランド牛の焼肉も尚州名物として有名
韓国での干し柿作りを見に
尚州は干し柿の名産地。市内には干し柿公園がある
ぐっと気温が下がって秋から冬へ。韓国では10月下旬から12月にかけて、コッカムと呼ばれる干し柿の生産が本格化します。名産地とされるのは、韓国の中央部に位置する尚州(サンジュ)という町。ここでは全国に流通する干し柿の約6割を生産しており、干し柿の町としてその名を轟かせています。地元の人によれば、尚州は昼夜の寒暖差が激しく、風もよく吹くことから干し柿の熟成、乾燥に向いているのだとか。
カーテンのように吊り下げられた干し柿の生産現場
干し柿の生産工場にお邪魔してみると、そこは一面がオレンジのカーテン。風通しのために開けられた窓から陽の光が差し込んで、それはもうまばゆいばかりの光景でした。これだけでもいったい何個あるのだろうという感じですが、尚州にはこうした干し柿工場がそれこそあちらこちらにあります。年間の生産量は尚州だけで2億5000万個を超えるということですから、市をあげて大量の干し柿を作っているのがよくわかります。
表面にタンニンが染み出て黒ずんだ柿が干し柿に適する
こちらが干し柿に使われる「トゥンシ」というブランド柿。「トゥン」が丸い、「シ」が柿を意味します。表面の色が黒くなっているのは苦味成分のタンニンが染み出したもので、決してどこか当たって悪くなった訳ではありません。むしろ美味しい干し柿を作るためには黒い柿のほうがよいのだとか。現地ではこれを「モッカム(墨柿)」と呼びます。
干し柿のために大勢の職員が柿の皮をむいているところ
工場の中では大勢の人が柿の皮をむいていました。自動の皮むき器も使いますが、少しでも皮が残っていると品質が落ちるため、最後はナイフでの手作業できちんとむき残しをなくすのが重要だそうです。また、この段階で傷のついた柿をチェックし、外していくのも大事な作業。傷がついたものはカットしてから乾燥させ、「カムマルレンイ(切り干し柿)」というまた別の商品に利用します。
ハンガーにかけられた柿を約60日かけて乾燥させる
丁寧に皮をむかれた柿は専用のハンガーにかけられます。このまま1月までかけて水分量を35~40%程度までに減らせば干し柿のできあがり。ただ、最近は50~60%程度で留める半乾燥の干し柿も人気があるようです。半乾燥のものを「パンゴンシ(半乾柿)」と呼び、こちらのほうが柔らかな食感を楽しめます。対して昔ながらの干し柿は「コンシ(乾柿)」。濃厚な甘味を楽しむのならこちらと、好みに応じて選べるようになっています。
総座席数308席という大型焼肉店の【名実尚柿韓牛】
さて、そんな干し柿と合わせて紹介したいのがこちらのお店。尚州を代表する規模の大きな焼肉店で、【名実尚柿韓牛(ミョンシルサンガムハヌ)】と言います。地元の畜産協同組合が運営する店で、「名実尚柿韓牛」というのが地元で飼育するブランド牛の名前でもあります。柿という字が入っているように、柿の皮を混ぜた飼料を食べさせているのが大きな特徴。干し柿の副産物を巧みに利用した飼育方法です。
柿の皮を食べさせて飼育した「名実尚柿韓牛」の焼肉
お店が自慢とするのは『スペシャルコッサル』という霜降りカルビと、『スペシャルサルチ』というリブロース(いずれも1人前120gW3万3000=約3300円、価格は2016年10月取材当時、以下同)。スペシャルとつくメニューはいずれも、ワンプラス(1+)、ツープラス(1++)と呼ばれる1等級以上の肉ばかり。どちらの部位を食べても、ほとばしるほどにジューシーな肉汁と、韓牛ならではの豊富なうま味を兼ね備えています。
サイドメニューとして人気の『ロースピョンチェ』
もうひとつこちらのお店でぜひ頼みたいのが、『ロースピョンチェ』というメニュー(W2万=約2000円)。外側を軽く炙ったモモ肉を薄切りにしたものですが、どうやって食べるのかと思ったら、一緒に盛り付けられたサラダを巻いて食べるものだとか。お店の方が慣れた手つきで、くるくると巻いてくれました。
表面を炙った薄切りのロースでサラダを巻いて味わう
ワサビ醤油にちょんと浸して食べれば、生肉のねっとりとした舌触りに、サラダのシャキシャキとした食感が重なってオツな味わい。脂のとろける感じを楽しみつつも、後味はさっぱりと爽やかです。生系のメニューはこれ以外にも、辛口と甘口を選べる『ユッケ』があったり、『ユッケ寿司』という変わり種もあったり。各部位の焼肉だけでなく、いろいろ楽しめるようになっています。
流通センター併設の売店ではさまざまな柿製品が揃う
そんな【名実尚柿韓牛】の道路を挟んだ向かいに、尚州の干し柿が集まる流通センターがあり、ここから全国、または海外へも出荷されていきます。入口のところには売店があり、ここでは各メーカーの干し柿をはじめ、柿酢、柿醤油、柿マッコリ、柿を使った菓子などを幅広く扱っています。観光客が干し柿を購入するならこちらが便利。12月から2月頃までが旬ですが、通年で冷凍保存したものも扱っています。
【名実尚柿韓牛(명실상감한우)】
電話:+82-54-531-9915
住所:慶尚北道尚州市嶺南第一路1119-9
住所:경상북도 상주시 영남제일로 1119-9
【尚州コッカム流通センター(상주곶감유통센터)】
電話:+82-54-536-0907
住所:慶尚北道尚州市嶺南第一路1154
住所:경상북도 상주시 영남제일로 1154
八田靖史(フリーライター)
慶尚北道広報大使、慶尚北道栄州市広報大使。コリアン・フード・コラムニスト。2001年より雑誌、新聞、WEBで執筆開始。トークイベントや講演、韓国グルメツアーのプロデュース。近著に「食の日韓論 ボクらは同じものを食べている」(三五館)。WEBサイト「韓食生活」を運営。
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