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更新日:2017.06.30旅グルメ

韓国・釜山郊外の極上グルメ。2色ウニ丼の意外な調味料と食べ方とは!?

韓国でも高級食材として扱われるウニ。釜山郊外にある港町の機張(キジャン)では、2種類のウニを使ったどんぶり料理が人気を集めています。いわゆる韓国式のウニ丼ですが、日本と異なるのが味付けと食べ方。地元客からの支持も厚い【ミチョン食堂】の流儀を紹介します。

ミチョン食堂のアンジャングバプ

ウニ丼というシンプルな仕立ての料理にも韓国らしさが詰まっている

釜山から足を伸ばして

    機張を代表する観光地のひとつ龍宮寺(ヨングンサ)

    機張を代表する観光地のひとつ龍宮寺(ヨングンサ)

 韓国でもウニを食べます。韓国においても高級食材です。好き嫌いは別として、日本人がウニの軍艦巻きにときめく感じと、だいたい似たような高級感でウニを見ていると思ってください。今回、紹介するのは韓国式のウニ丼ですが、韓国人にとっても、「これは産地じゃないと食べられないなぁ」という一品。旬の時期を見定めつつ、海沿いの地方都市まで足を運ぶ価値がある料理と、まずは冒頭から強調させてください。

    大辺港(テビョナン)。春にカタクチイワシ祭りも開催

    大辺港(テビョナン)。春にカタクチイワシ祭りも開催

 その時間をかけてでも食べに行きたいウニ丼は、韓国第2の都市、釜山(プサン)の郊外にあります。韓国にあまり馴染みのない方であれば、「釜山のウニ丼」として覚えていただいてもいいですし、もう少し接点のある方なら、機張(キジャン)という地名をぜひ覚えて欲しいですね。正確に書くと釜山市機張郡。韓国人であれば機張と聞けば、ワカメや、コンブ、煮干しといった海産物をまず連想するような町……と書けば、グルメな方はピンと来るかもしれません。

 北海道などでもそうですが、おいしいウニの産地は、ワカメやコンブの名産地でもあることが多いです。それはウニがワカメ、コンブをエサとするため。美味しいワカメ、コンブを食べて育つのなら、そのウニがおいしいのも道理ですよね。日本と同じ理屈が、この機張でも成立しています。

    大辺港の乾物店で販売される乾燥ワカメや、乾燥コンブ

    大辺港の乾物店で販売される乾燥ワカメや、乾燥コンブ

 その機張には大辺港(テビョナン)という漁港があり、コの字型に湾を囲んで、乾燥ワカメ、乾燥コンブを扱う乾物店がずらり並んでいます。あとは塩辛店も多いですね。少し脱線しますが、この漁港で春と秋にとれるカタクチイワシは、キムチを漬けるときの副材料として欠かせないものです。大量のカタクチイワシを塩漬けにして寝かせることで、うま味の凝縮した塩辛、または上澄みを取って魚醤となります。

 韓国には11~12月にかけて大量のキムチを漬ける、キムジャンという習慣があるため、それに備えてシーズンのうちに買い込む人が大勢やってくるんですね。また、そのついでとして、ワカメを買い、コンブを買い、さらには旬のカタクチイワシを刺身や、焼き魚として味わうところまでが定番です。

    ミチョン食堂。タチウオやカレイのチゲも提供する

    ミチョン食堂。タチウオやカレイのチゲも提供する

白いムラサキウニとオレンジのバフンウニをかき混ぜていただく!?

 さて、話を戻して本題のウニ丼。これを自慢とする有名店に【ミチョン食堂】があります。その噂を聞きつけて観光客もやってきますが、平日のランチタイムには周辺の会社員らでごった返す、むしろ地元客に人気のお店です。

 注文すべきメニューは『アンジャングバプ』1人前W1万5000(約1500円、価格は2017年2月取材当時)。韓国語でウニのことはソンゲと言いますが、この地域では方言の「アンジャング」を使うことが多いです。それも特にバフンウニのことを指してアンジャング。料理名の「バプ」はごはんを指すので、メニュー名としては、バフンウニ丼ということです。

    5月のアンジャングバプ。ムラサキウニの比率が多い

    5月のアンジャングバプ。ムラサキウニの比率が多い

 ただし、入っているのは、バフンウニのみにあらず。写真をよく見ていただくと、色の濃いオレンジ色のウニと、若干白っぽいウニの、2種類が混ざっているのがわかるかと思います。オレンジ色がバフンウニで、白っぽいのがムラサキウニ。「バフンウニだけだと苦みが出て、ムラサキウニだけだとしつこくなる」というのがお店の方の弁。2種類のウニを混ぜることで、求める味に仕上がるというこだわりなのです。

    ビビンバのようにスプーンでよくかき混ぜてから味わう

    ビビンバのようにスプーンでよくかき混ぜてから味わう

 従って、食べるときにも両方のウニを一緒に味わうのが理想的。日本的な感覚ではたいへんもったいないように思えますが、食べる前に「全体をよくかき混ぜる!」というのが、この店における鉄の掟です。いわゆるビビンバの食べ方を想像してください。遠慮がちにさっくり混ぜるとかではダメで、念入りにしっかりきっちり混ぜます。すると、器の底にタレが仕込まれているので、醤油をかけることもなく、塩梅のほうもちょうどよく仕上がるという仕掛けです。

    11月のアンジャングバプ。バフンウニの比率が多い

    11月のアンジャングバプ。バフンウニの比率が多い

 日本人としてさらに驚くのは、そのタレにゴマ油が少なからず入っているという部分でしょうか。これが本当に不思議なことで、あの香ばしくも力強い風味が、ウニの繊細な味わいを決して損ねないんですよね。むしろ、食べ進むにつれて、このゴマ油こそが味を引き立てているのではとも思えてきます。少なくともこのウニ丼を日本とはまったく異なる、韓国料理たらしめている要因に、ゴマ油のタレがあげられます。

 信じられない人はぜひ機張まで。なお、機張におけるムラサキウニの旬が5~8月、バフンウニの旬が11~2月(ただし2月に入ると苦みが強まる)。どちらかの旬に合わせて行くことを強くおすすめします。

【ミチョン食堂(미청식당)】
電話:+82-51-721-7050
住所:釜山市機張郡日光面日光路77-43
(부산시 기장군 일광면 일광로 77-43)

※2017年9月に下記住所へ移転の予定です。
新住所:釜山市機張郡日光面機張海岸路1303
(부산시 기장군 일광면 기장해안로 1303)

この記事を作った人

取材・文/八田靖史(フリーライター)

慶尚北道広報大使、慶尚北道栄州市広報大使。コリアン・フード・コラムニスト。2001年より雑誌、新聞、WEBで執筆開始。トークイベントや講演、韓国グルメツアーのプロデュース。近著に「食の日韓論 ボクらは同じものを食べている」(三五館)。WEBサイト「韓食生活」を運営。

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