韓国の紅葉を愛で、うっとりするほど甘く濃厚なカボチャチヂミを味わいに!
日本でチヂミというとネギやニラ、海鮮などが定番だが、韓国には種類豊富なチヂミがあって秋には甘いカボチャのチヂミが味わえる。慶尚北道の慶山(キョンサン)にて、なんでもひとつだけ願いを叶えてくれる仏様を拝み、紅葉の季節に旬のチヂミとマッコリを楽しむ。
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韓国では秋になると旬のカボチャでチヂミを作る
韓国中東部の慶山にはカボチャチヂミが自慢の店がある
紅葉の美しい山と山頂に鎮座する石仏も近隣の見どころ
カボチャのチヂミを食べに
韓国語で『ホバクチョン』と呼ばれるカボチャチヂミ
秋になるとカボチャのチヂミが食べたくなります。カボチャのチヂミはとてもおいしいのですが、日本ではまだあまり知られていないようです。というより、ほぼ知名度がないに等しいと言ったほうがいいかもしれません。おそらく日本でチヂミといえば、ネギやニラ、海鮮を具としたものをイメージすることが多いはず。韓国にはさまざまな種類のチヂミがあり、カボチャを使った『ホバクチョン』もその中のひとつです。
八公山へは803番のバスで「カッパウィ終点」下車
おいしいカボチャチヂミを食べたい。その気持ちを最大限に膨らませたうえで、最大級の満足を得る方法を紹介したいと思います。もちろんその場合の「最大」とは個人的な意見に過ぎないのですが、カボチャチヂミのためだけでもぜひ足を運んで欲しいと思う地域があります。それが韓国の中東部に位置する慶尚北道(キョンサンブクト)の慶山(キョンサン)という町。秋はナツメの名産地としても有名だったりするのですが、とりあえず今回は横に置いてカボチャの話で進めます。
急坂と急階段が続くので歩きやすい格好で訪れたい
秋は紅葉の季節。まずは慶山における屈指の観光地である八公山(パルゴンサン)に登りましょう。登るといっても本格的な登山ではなく、往復1時間程度の気軽なハイキングです……というと後で苦情が来るかもしれませんね。時間的には気軽なのですが、行程の大半が急坂と急階段なので、慣れていないとふとももがパンパン、足はガクガクになります。それでもおいしいカボチャチヂミを食べるには、ぜひ登ってください。
冠峰の如来坐像。9世紀頃、統一新羅時代の作とされる
約30分頑張ると八公山の一角である「冠峰(クァンボン)」という山の頂上に到着。そこには写真の石仏が鎮座しています。正式名称は「慶山八公山冠峰石像如来坐像」といいます。韓国の宝物(日本の重要文化財に相当)第431号にも指定されている由緒正しい仏様ですが、頭のうえに笠のようなものを載せていることから、「カッパウィ(笠岩)」の愛称でも親しまれています。ありがたいことにこの仏様、願い事をなんでもひとつだけ叶えてくれると信じられており……。
熱心に祈りを捧げる人たち。米やろうそくを供える人も
けっこうな山道ですが、連日たいへん大勢の方がお参りにいらしています。立った状態で手を合わせ、ひざまずいてお辞儀をして、また立って、ひざまずいてを何度も繰り返すのが韓国式。もちろん見世物ではないのですが、こうした韓国仏教の敬虔な姿を目の当たりにするのも、文化理解としては新鮮な体験になるはずです。
八公山の麓、ソルメギ地区に位置する【ソルメギ食堂】
信徒の方々に混ざってお参りを済ませたら慶山方面に下山。こちらの冠峰までは隣接する大邱(テグ)からも登れますが、カボチャチヂミを食べるためには、必ず慶山側へと下りてください。下り切ったら、市内バスで「カッパウィ終点」という停留所から、「ソルメギ停留所」まで約8分。こちらの【ソルメギ食堂】というお店が待っています。
店内に積まれたカボチャ。少し置いて水分を抜いて使う
店内には至るところにカボチャがごろごろ。韓国でカボチャ、そしてチヂミというと、ズッキーニのような見た目の未熟果を使うことが多いのですが、秋になると写真のような「ヌルグンホバク(年を取ったカボチャ)」が出回ります。慶山まで出向いて食べるべきは、こちらのヌルグンホバクを使ったチヂミです。
カボチャチヂミのほか、自家製の豆腐や納豆汁も自慢
お目当てのカボチャチヂミに、手作りの豆腐と、小皿の副菜もずらり並べて。浅漬けのキムチなどもおいしいですが、それでも特筆すべきはカボチャチヂミですね。たっぷりの油で焼いているため、表面はカリッとして中はもっちり。油のちょっとにじむ感じが、カボチャの甘味と重なって、驚くほどに濃厚で蜜のような甘さに仕上がっています。これがもう、なんというか食べるごとに心がとろける感じ。こってりとか、まったりではなく、うっとりする甘さを満喫できます。
カッパウィの名前がついたマッコリ。隣町の永川で生産
お好きな方は間髪入れずにマッコリもどうぞ。韓国ではチヂミといえばマッコリというぐらい切っても切れない関係にあります。先ほど山の頂上でお参りした「カッパウィ」の名前を冠した銘柄か、またはもう少し高級なもち米で作る「トンドンジュ(米粒を残して作る濁酒)」の用意もあります。
豆腐は毎朝作る。薬味醤油、浅漬けキムチと一緒に賞味
毎朝作るという豆腐もいい感じ。チヂミの甘さも、マッコリの爽快な喉越しも、やさしい味わいの豆腐も、すべてが山頂までの往復で疲れた身体に染み渡ります。なお、察しのいい方は気付いているかもしれませんが、バスで乗り付ける以上、山へ登らずにこの店へ来ることもできます。でも、登山の苦労があるからこそ感動も大きくなるんですよね。ぜひ、山登りとのセットで味わいに行ってみてください。
【ソルメギ食堂(솔메기식당)】
電話:+82-53-852-9327
住所:慶尚北道慶山市瓦村面カッパウィ路314
(경상북도 경산시 와촌면 갓바위로 314)
八田靖史(フリーライター)
慶尚北道広報大使、慶尚北道栄州市広報大使。コリアン・フード・コラムニスト。2001年より雑誌、新聞、WEBで執筆開始。トークイベントや講演、韓国グルメツアーのプロデュース。近著に「食の日韓論 ボクらは同じものを食べている」(三五館)。WEBサイト「韓食生活」を運営。
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