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ジビエ、ふぐ、上海蟹|冬の三大味覚を味わい尽くす

冬の訪れを感じさせてくれる、ジビエ、ふぐ、そして上海蟹。フランス、日本、中国のそれぞれの冬の代表的な味覚を堪能できる名店をご紹介します。

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ジビエ 【たでの葉】

炭火で炙る、深みを増すジビエの世界へ

「本当はジビエをやるつもりはなかったんです」
 
 確かに構想当初はそうだったかもしれない。店主の小鶴清史さんが【たでの葉】を始めた理由は、鮎漁師である父親が捕る鮎を店で出すためだった。

「中華をずっと学んできましたが、自分の中で限界を感じて。そんな時『自分にしかできない料理を』と思い、考えたのが父のとる鮎を使った料理でした」

    小鶴氏がひとりで調理も接客も行うため、店内は炉を囲むコの字カウンターのみのレイアウト

 しかし、鮎料理を出すにも、一年中鮎を出せるわけではない。そこで鮎の出せない冬の名物として思いついたのがジビエだったのだ。そのジビエを学ぶために修業した西麻布の名店【またぎ】で、小鶴氏はジビエの魅力に開眼。のべ4年の修業では料理長まで経験し、2年前には狩猟免許を取得。シーズンには自ら山へと入り、獲物を仕留めるほど、ジビエの虜になっていった。

    『鹿の炭火焼き』生命力溢れる鹿肉の滋味は、まさにシーズンならではの凝縮された旨み

「ただし、山に入ったからといって、料理が美味しくなるわけではありません」と小鶴氏。その真意は、ひとりで店を切り盛りするゆえ、ハンターとしての声がカウンター越しにダイレクトに食べ手に届くことにある。

「たとえば、鴨をどうやって散弾銃で仕留めるか知っていますか? こうやって流しながら…」といって小鶴氏は嬉しそうに銃を構えるフリをする。

    『猪の味噌鍋』。「この部分が美味しいんです」と、脂身のある肩ロース、ロースなどを使用

 炭火でジイジイと炙るジビエ。猟師の手により適切に処理された肉の旨さだけではない、【たでの葉】は美味しさの向こう側にある食べる喜び、知る楽しさまでをも伝えてくれる。

上海蟹 【中国料理 春秋】

常連に愛され続け31年の名店。この季節の主役は太湖産上海蟹

 今や日本でも、すっかりお馴染みとなった上海蟹。中国では太閘蟹と呼ばれているこの蟹は、中国各地で捕れるものの、江蘇省の陽澄湖と近くにある太湖のものが有名。

 最も美味とされている。“九雌十雄”とは中国でよく言われる言葉だが、これは、旧暦の9月は卵を持つ雌が旨く、10月になると白子が身にたっぷりと入る雄の方に味がのって食べ頃になるという意味だとか。今の暦で言うならば、10月から12月にかけてが、まさに上海蟹のベストシーズンというわけだ。

    かつてはグルメ不毛の地とも呼ばれたエリアで30年以上。どこかシックな大人の雰囲気が漂う店

「うちで、数年前から使っているのは太湖産。色々食べてみて、ここの上海蟹が一番美味しいと思ったからです。卵が美味しい雌は、紹興酒漬けにして内子のねっとりした旨みを。対して雄の方は、白子のまったり感を味わって頂きたくてシンプルな蒸し蟹にしています」

    黒酢のタレが脂の乗った身の旨さを引き立てる『蒸し蟹』

 穏やかな笑みを浮かべ説明してくれたのは、上海料理の名店【春秋】の店主・宮内敏也シェフ。日本の旬の味覚を随所に取り入れた緩急自在なおまかせコースが評判の同店だが、この時期のメインはやはり上海蟹。やや甘めな味付けの紹興酒タレが染み込んだ『酔蟹』の蟹味噌や内子の凝縮されたような滋味、そして蒸した白子は舌に纏りつくような食感が官能的だ。蒸し蟹は食べやすいよう綺麗にむき身にしてくれるので、初心者でも大丈夫。豆豉炒めなどメニューにない料理も、出来る範囲でリクエストに応えてくれる。〆のねぎ炒飯も絶品だ。

    これだけを食べたいというファンも多い『ねぎ炒飯』。味の決め手はたっぷりのねぎでつくるねぎ油

この記事を作った人

撮影/上田佳代子 取材・文/森脇慶子【中国料理 春秋】、吉田慎治【たでの葉】

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