韓国・平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック・パラリンピックの地で味わう名物オタマジャクシ麺とは!?
2018年が幕を開けました。開会(2月9日)が迫る韓国・平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック・パラリンピック。それに先立って競技会場である平昌と、隣接する競技会場の江陵(カンヌン)、旌善(チョンソン)における郷土料理を紹介します。地域の食文化を知って白熱の戦いをもっと身近に。
平昌五輪の開催に向けて地元の郷土料理をずらりまとめて紹介
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平昌は乾燥スケトウダラの産地でスープや焼き魚が美味
江陵は海水をにがりのかわりに用いた豆腐作りが盛ん
旌善はそば、トウモロコシを使ったユニークな麺が自慢
観戦とともに味わいたい
平昌の特産品として有名な乾燥スケトウダラの生産風景
韓国の平昌(ピョンチャン)をご存じでしょうか。という書き出しで、昨年8月に「2018年冬季五輪が開催される韓国・平昌は、韓国有数のそば処である!」という記事を書きました。
あれから5ヶ月。日本でもだいぶ身近な地名になってきたでしょうか。
今回は開催地の平昌に加え、江陵(カンヌン)、旌善(チョンソン)の郷土料理を一挙にご紹介します!
平昌は乾燥スケトウダラの産地でスープや焼き魚が美味
野外で乾燥させたスケトウダラを「ファンテ」と呼ぶ
平昌といえば韓国有数のそば処、そしてファンテ(乾燥スケトウダラ)の名産地としても知られています。昼夜の寒暖差が大きく、風の絶えない環境はスケトウダラの乾燥に最適。雪山の中から突如として現れる魚の大群は、なんとも不思議な姿ですが、これこそが平昌の冬を象徴する光景です。12月から出荷の始まる春先まで、野外でじっくり乾燥させて旨味を閉じ込めます。
代表的な「ファンテ」料理の数々。専門店で味わえる
そんなファンテを現地で味わうのなら、【ファンテ会館】という店がおすすめです。看板メニューはファンテを煮込んでスープにした『ファンテヘジャンクッ』(1人前7000ウォン、1000ウォン=約100円、価格は2017年4月取材当時、以下同)と、薬味ダレを塗って焼いた『ファンテグイ』(1人前1万2000ウォン)。
乾燥スケトウダラのスープ「ファンテヘジャンクッ」
韓国では煮干しや昆布とともに、ファンテの出汁(特に頭の部分をまとめて煮込むといい出汁が出ます)をよく使うのですが、なんとも風味の香ばしい、滋味あふれるスープに仕上がります。具にはひと口大に切ったファンテとともに、豆腐、長ネギなどを加え、味付けはあっさりと塩味に。平昌に限らず、韓国では朝食の定番として人気の高いメニューです。
甘辛い薬味ダレを表面に塗って焼いた「ファンテグイ」
こちらの『ファンテグイ』も格別の味わい。調理前に身を麺棒などでよく叩いてあるため、口の中でホロホロとほぐれて柔らかく、じわじわっと脂の旨味が広がっていきます。真っ赤なタレはピリ辛ながらも甘味があって濃厚。ごはんのおかずとしてもぴったりですが、好きな人ならこれを肴に一杯飲んで、最後を『ファンテヘジャンクッ』で仕上げるというのもたまらない楽しみ方です。
江陵は海水をにがりのかわりに用いた豆腐作りが盛ん
江陵の鏡浦海水浴場。夏場には大勢の観光客が訪れる
さて、場所が変わりまして江陵。こちらは山岳エリアの平昌とはうってかわって、東海岸に面する港町です。64.5 kmの海岸線に沿って15の港が並んでおり、夏場であれば海水浴客でも賑わいます。オリンピックの際には、日本でも人気のフィギュアスケート、スピードスケートといった氷上競技が行われます。
海水を使っての豆腐作り。海水は共同で汲み上げている
そんな江陵の名物料理といえば『草堂豆腐(チョダントゥブ)』。市内の草堂(チョダン)地区で作られているブランド豆腐のことですが、にがりを用いず、海水を汲み上げて使っているのが特徴です。一帯には豆腐料理の専門店が集まっており、その日の朝に作ったできたての豆腐を味わえるのが魅力。写真の【トバギハルモニスンドゥブ】では、8時ぐらいに行くとその日いちばんの豆腐を味わえるそうです。
押し固める前の柔らかな豆腐を味わう「チョドゥブ」
代表的な食べ方がこちらの『チョドゥブ』(1人前7000ウォン、価格は2016年5月取材当時)。押し固めて成型する前の、おぼろ豆腐のようなもので『スンドゥブ』とも呼びます。日本ではこれを辛い鍋料理にした『スンドゥブチゲ』が有名ですが、本来はできたてを汁ごと味わうのが昔ながらの食べ方。少量の薬味醤油を加えてもいいですが、海水のほんのりとした塩気があるので、そのままでも充分に美味しく味わえます。
旌善はそば、トウモロコシを使ったユニークな麺が自慢
平打ちのそば麺を汁に入れた「コットゥンチギグクス」
最後に紹介するのは旌善(チョンソン)。平昌と同じく山間部にあり、オリンピックの際にはアルペンスキー競技が行われます。地域の郷土料理を味わうのなら、「旌善アリラン市場」内の【フェドンチプ】にひと通りが揃っています。写真の『コットゥンチギグクス』(1人前5000ウォン、価格は2016年4月取材当時、以下同)は平打ちのそばを味噌仕立てのスープで味わうもの。料理名の直訳は「鼻打ち麺」であり、麺のコシが強く、すするとピンピン跳ねて鼻に当たるほど、というのが語源です。
短いトウモロコシ麺が独特な「オルチェンイグクス」
もうひとつの名物がこちらの『オルチェンイグクス』(1人前5000ウォン)。トウモロコシの生地を短い麺に仕立て、煮干しダシのスープで刻んだキムチなどと味わう料理です。こちらも語源がユニークで、直訳すると「オタマジャクシ麺」。短い麺をオタマジャクシに見立てたものです。
以上が、平昌、江陵、旌善の代表的な郷土料理。ほどなく熱戦の始まる地域には、豊かな食文化があることもぜひ知っていただければ幸いです。
【ファンテ会館(황태회관)】
電話:+82-33-335-5795
住所:江原道平昌郡大関嶺面ヌンマウルキル19
住所:강원도 평창군 대관령면 눈마을길 19
【トバギハルモニスンドゥブ(토박이 할머니순두부)】
電話:+82-33-651-9004
住所:江原道江陵市草堂スンドゥブキル47
住所:강원도 강릉시 초당순두부길 47
【フェドンチプ(회동집)】
電話:+82-33-562-2634
住所:江原道旌善郡旌善邑五日場キル31-13
住所:강원도 정선군 정선읍 5일장길 33-13
取材・文/八田靖史(フリーライター)
慶尚北道広報大使、慶尚北道栄州市広報大使。コリアン・フード・コラムニスト。2001年より雑誌、新聞、WEBで執筆開始。トークイベントや講演、韓国グルメツアーのプロデュース。近著に「食の日韓論 ボクらは同じものを食べている」(三五館)。WEBサイト「韓食生活」を運営。
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