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更新日:2018.03.09食トレンド グルメラボ 連載

~食の明日のために~Vol.2/おいしい魚を未来へ。「サステナブル・シーフード」とは?

今と同じような食卓が未来も当たり前のように続く--。そう思っているあなた。10年後はまったく違うことになっているかもしれません。そのくらい食資源を取り巻く環境は厳しくなっています。シェフたちと共にサステナブル・シーフードの啓蒙に取り組む、フードライターの佐々木ひろこさんの連載第二回は、日本の水産資源の危機について。その現状を改善すべく立ち上がった団体、《Chefs for the Blue》をご紹介します。

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壱岐の漁師さんと、茨城の干物屋さん

「最近は本当に全然釣れん。海にマグロがおらんからね…息子は漁師を継がんのと違うかなぁ」。
中村稔さんは、長崎県壱岐島のマグロ一本釣り漁師のグループ、「壱岐マグロ資源を考える会」の会長です。長いインタビューのあいだ、中村さんの声は終始沈んだままでした。2005年に350トン以上あった壱岐市のクロマグロの年間漁獲高は、2014年には23トン、つまりたった9年で15分の1。漁獲高は年々下がり続け、当然ながら生活は苦しくなる一方で、漁師や船の数も最盛期の半分以下に減っています。

「目の前が海なのに、日本の鯖を使えないのは本当に悔しいよ。昔は本当にたくさん獲れていたのにね…」。
 越田英之さんは、茨城県波崎で代々干物をつくる職人です。もともとは地元で揚がる鯖で文化干しを作っていたのですが、だんだん加工に適した大きいサイズの鯖が獲れなくなり、やむなく数年前に原材料をノルウェー産へと切り替えました。ノルウェーの鯖は大きく、脂もよくのっています。でも越田さんは、「日本の伝統食だからねぇ。やっぱり日本産、できれば地元産を使いたいね」とつぶやきます。

今、日本の海で何が起きているの?

海のなかに、そして海とともに暮らす人々の生活に今、大きな(好まざる)変化が起きています。2016年の日本の総漁獲高は、436万トン 。日本が漁業大国として名を馳せた頃、生産量がピークだった1984年に1,282万トンだったことを考えると30年で1/3近くにまで落ち込んでいることが分かります。数年のなかでの増減に豊漁、不漁を語るのではなく、視野を大きく眺めると、明らかに、驚くほど、獲れなくなっているのです。

不漁の原因は地球温暖化や他国の乱獲だ、とする意見をよく耳にしませんか? でも、もし温暖化が主要因なら、日本だけでなく世界的な不漁が報告されるでしょうし※、寒流に生きる魚が減るかわり、暖流の魚の漁獲高がもっと増えてもよさそうです。他国の漁獲量が関係ない訳ではないでしょうが、大きな影響が及ぶのは、国を越えて動く一定の魚種や、漁場の国境が他国と接する日本海側の一部海域にとどまるはずです。海洋汚染も海流の蛇行も海とつながる山や森の荒廃も、たくさんある原因のひとつではあるものの主要因じゃない。漁船の漁獲能力がどんどん上がるなか、シンプルに魚を獲りすぎてしまった結果だと考えられています。

※世界銀行のレポート(2013年発表)によると、2010年から2030年までの漁業生産は世界中で増加。ショッキングなことにマイナス成長予測は日本だけ(マイナス9%)。

サステナブルシーフードってなんだ?

Sustainable Seafood/サステナブルシーフードとは、1.獲りすぎない 2.海を傷つけない 3.漁師コミュニティを守る という考えかたのもとに獲られた、もしくは養殖された魚介類を指します。たいせつな海の恵みを、この先の未来もずっとサステナブル(持続可能)に食べ続けられるように、なるだけ豊富に残る魚種、先の3点のようなサステナブルな取り組みを進める漁業者からの魚を使うことで、豊かな海を守り、枯渇しそうなシーフードを守ろうという世界的な動きです。シーフードはそもそも、放っておけば自ら子を産み増えてくれるというすばらしい資源。銀行の預金にたとえれば、元本には手をつけず増えた利子だけを引き出すようにしていれば、サステナブルなはずなんですよね。

私は昨年より東京のシェフたちと一緒に、《Chefs for the Blue》というグループで水産資源の問題を学び、サステナブルシーフードの重要性を伝える活動をしています。ホッケやニシンはもちろん、マグロやウナギ、サンマ、サバなど、さまざまな魚の不漁が伝えられるなか、少しずつ世の中の流れが変わってきていることを感じます。これからも色々なイベントなど、みんなで一緒に考えられる機会を作っていく予定です。またこちらでも告知しますので、ぜひ参加してくださいね。シェフたちとお待ちしています!

*お知らせ&お願い

サステナブルシーフードに関する国際コンペティションで、《Chefs for the Blue》がベスト4に選ばれ決勝進出しました! 優勝者はオンライン上の一般投票によって決まります。優勝すれば一年間の活動支援を受けられるため、今後の活動により力を入れることができます。投票は3月11日まで。ぜひ《Chefs for the Blue》を応援してください!

*CHOOSE A WINNERで《Chefs for the Blue》を選び、VOTE!

この記事をつくった人

佐々木ひろこ

日本で国際関係論を、アメリカで調理学とジャーナリズムを、香港で文化人類学を学び、現在フードライター、エディター、翻訳家。多くの雑誌や書籍、ウェブサイトに寄稿中。料理人を中心としたサステナブルシーフード勉強会“Chefs for the Blue”の世話人。

この記事を作った人

取材・文/佐々木ひろこ

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