日本料理を世界へ発信する、7年連続三つ星【龍吟】山本征治氏 | 第1~2話
国内外から注目を集める一流シェフや料理人、食に精通するスペシャリストをゲストに招き、食のトレンドをお届けするインターネットラジオ番組『ヒトサラ シェフズテーブル』。Vol.31~32のゲストは、2018年8月に東京ミッドタウン日比谷に移転したばかりの【龍吟】の山本征治さんの回をお届けいたします。
今回のゲストは、2003年のオープン以来、国内をはじめ世界からも注目を集める【日本料理 龍吟】の山本征治氏。
「ミシュランガイド」では7年連続で三ツ星に輝き、料理学会では卓越した技術を世界に発信するなど、常に時代の先をいく山本氏。トップシェフがオススメするお店を紹介した本「シェフ推し」でも、ジャンルを超えた幅広いシェフから選ばれた、【龍吟】山本氏の目指す日本料理とは。
第1話:日本の豊かさを伝える【龍吟】の料理
日本の豊かさを世界へ“日本料理”で発信
──お店のコンセプトを教えてください。
“日本料理をやる”ということは、どういうことなのか? という答えをはっきり持ちたいと思ったんですね。ただ日本料理をつくるのではなく、日本という国がどういう国なのか、自然環境の豊かさなど、どのように料理を通じて伝わっていくのかを見届けていきたいという思いがあるんです。なので「日本料理で日本の豊かさを伝える」ことがコンセプトになっています。
ちょっと難しく考えすぎなのでは? と思われることもありますが、日本の豊かさを世界に伝えていくことが本来、お国の仕事であるならば、いち個人、いち料理人としてそれをやっていくことは、イコール国家職務に携わっていることと同じなのではないか──。そのくらいの使命感を持ってこれをコンセプトに掲げました。
“感覚”を研ぎ澄ますための「前菜」
──本日の消印入りの封筒を開けると、日本地図が書いてある和紙の上にメニューが書いてあるんですが、「始まりは様々な“感覚”から……」とあります。
山本:はい。まずは“感覚”を大事にしてもらいたいという想いがあるんですよね。季節、香り、温度というのは、実際に食べられるものではないんです。感覚として「五感で感じるもの」なんです。その「感じるもの」をいかに「大事にしているか」を伝えたいんです。これらを組み合わせることによって、今まで経験したことのないものになるんですね。
ちょっとした驚きが気づきになると思うんです。お椀やお出汁にいく手前で、その感覚を研ぎ澄ます、いわば「感覚の前菜」をお出ししているんです。
第2話:世界料理学会で感じた、衝撃の事実
【龍吟】をオープンして約1年が過ぎた頃、山本氏に訪れた料理学会への扉。スペインを中心に世界中からトップシェフが集まる中、日本代表として参加した学会では、日本料理の「技」と「知恵」を発表し賞賛を浴びた。だがそれと同時に感じた衝撃の事実とは? 当時の心の変化に迫ります。
スペイン・サンセバスチャンでの料理学会
──日本からの参加は山本さんだけだったんですね。大きな転機になったと聞きましたが何があったんですか?
山本:もうそこで見たもの、感じたものがインパクトの強いもので、あの時の興奮と感動を思うと、今でも涙がこみ上げてくるくらいの衝撃でしたね。意識の差を見せつけられたというか、くやしかった。
──発表に対し評価は得たものの、「それは君のオリジナルなのか」と問われたとか。
山本:はい。僕の中で学会と料理講習会との区別がついていなかったんですね。日本料理の今を伝えるというテーマで臨んだ学会ですが、魚の生け締めや処理技術など世界に浸透していない日本の素晴らしい技術を伝えたにもかかわらず、それは君のオリジナルなのかと問われた時に、「日本の伝統技術を代弁しているだけだった」と悟った瞬間のショックはものすごく大きかったですね。
個性とオリジナリティ、その先にあるもの
──個性を出しすぎると日本の伝統との乖離が生まれてくるし、出さないと殻に閉じこもったままになってしまう。「山本料理」と「日本料理」とのバランスって難しいところですよね。
山本:そうですね。当時は「個性とオリジナリティ」を出すことが求められていた時代でしたから、ひたすら突っ走っていましたね(笑)。
でも年齢をかさねて気づいたことがあって、自分の料理が変わってきた。素材に対してかなり無理をさせていたな、と気づいたんです。テクニックさえあれば制覇できると思っていた……、自信があったんでしょう。素材の色気であったりナチュラルな部分であったり、そういったものを大事にしようという感覚が芽生えてきたんです。それに気づいたのが40歳手前頃でしたね。
ゲストプロフィール
料理にかける思いがゲストを虜にし、その全身全霊をかけた“料理魂”にシェフたちからも一目置かれる
1970年香川県生まれ。 四国調理師専門学校(現KISS調理技術専門学校)を卒業後、料亭・ホテルなどを経て、2003年12月、六本木に【龍吟】をオープン。2004年11月、スペインのサンセバスチャンの料理学会に日本代表として参画。以来、国内外の数々の料理学会にて日本料理の技術を発表するなど、海外へその見識を積極的に発信している。「ミシュランガイド」では7年連続で三つ星を獲得、2018年「世界のベストレストラン50」では第41位にランクイン。さらに、フランスの食専門誌「LE CHEF」主催「世界のシェフ100人」で4年連続の世界トップ10入りを果たす。革新的な技術を巧みに操り、日本の豊かさを世界に発信しつづけるトップシェフの一人だ。
【日本料理 龍吟】
電話:03-6630-0007
住所:東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷7階
アクセス:東京メトロ 千代田線 日比谷駅
時間:17:30~23:00(L.O.20:00)
定休日:不定休 ※HPをご確認ください
この記事を作った人
ヒトサラ編集部
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