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更新日:2018.11.14食トレンド

<閉店>だしに始まり、だしに終わる~「だし」の多様性に驚かされる恵比寿の割烹【小花】

日本人にとって「だし」は慣れ親しみ、“当たり前”のものとして存在しています。しかし、世界ではこの「だし」を基本とする和食がユネスコ無形文化遺産に登録されるほど、日本が誇るべき食文化なのです。料理を繊細に、味わい深く仕上げてくれる「だし」。それをメインに据えた、東京・恵比寿の割烹【小花】をご紹介します。

<閉店>だしに始まり、だしに終わる~「だし」の多様性に驚かされる恵比寿の割烹【小花】

【小花】の魅力

だしに始まり、だしに終わる。すべての料理に「だし」を使用

店内にふわり漂う「だし」の香り。カウンターでは、のちに出てくる『鱧のすきしゃぶ』で使用する「だし」を土鍋でひいており、その芳醇な香りは、日々の慌ただしさで固くなっていた心を一瞬で解きほぐしてくれます。

    全10席のカウンターは、隣のゲストが気にならないようにと、中央部分と左右で少し位置をずらして設計されています

    全10席のカウンターは、隣のゲストが気にならないようにと、中央部分と左右で少し位置をずらして設計されています

恵比寿にある割烹【小花】では、「だし」に魅せられた料理人が生み出す、多彩な料理が並びます。「まずは、ほっと一息ついてください」と、差し出されるのは、温かな『だし割』のウェルカムドリンク。ひとくち飲めば、嗅覚が、味覚が、すっと研ぎ澄まされていきます。

    だしと日本酒を9:1の比率で割った『だし割り』。まずはそのまま、次は塩をひとなめし、最後に七味をと、3つの味が楽しめます

    だしと日本酒を9:1の比率で割った『だし割り』。まずはそのまま、次は塩をひとなめし、最後に七味をと、3つの味が楽しめます

魚・肉のメイン料理の食材と、調理法や量まで選べる。自由度の高いコースを提供

【小花】には、お品書きが存在しません。その日に入荷した旬の国産食材を使ったコース1本のみで、基本は先付、前菜(5品)、お椀、魚料理、鱧のしゃぶしゃぶ(鍋)、箸やすめ、肉料理、食事・香の物、甘味で構成されています。(※鍋料理は季節によって変わります)

特筆すべきは、メイン料理の自由度が高いこと。その日に入荷した魚・肉の中から好きな食材と調理法を選び、好きな量で注文できます。例えば、「刺身は2~3種類と、関あじのフライをハーフで」や、「三元豚を生姜焼きにして」などの頼み方ができるのです。

魚食材

    目の前に今日の食材が並べられ、紹介とともに、それぞれに合う調理法が勧められます

    目の前に今日の食材が並べられ、紹介とともに、それぞれに合う調理法が勧められます

この日の魚は、明石の天然真鯛、能登ののどぐろ、神津島の金目鯛、大分の関あじ、長崎のイサキ、北海道のサンマ。塩焼きや煮つけ、天ぷら、フライなどそれぞれの食材に最適な調理法を提案されるので、その中で好みの食べ方を選びます。もちろん、提案外のオーダーも可能です。

のどぐろと関あじを選択

    のどぐろと関あじを選び、お造りやフライにしてもらいました

    のどぐろと関あじを選び、お造りやフライにしてもらいました

肉食材

    コースの終盤に供される肉料理。満腹度に合わせて、牛や鶏などの種類が選べるのは高ポイント

    コースの終盤に供される肉料理。満腹度に合わせて、牛や鶏などの種類が選べるのは高ポイント

お肉は牛・豚・鶏・鴨など。この日は前沢牛のヒレ肉、岩手県産の鴨、九州の博多地鶏、千葉県の三元豚が並び、胡椒焼き、炭焼き、唐揚げやカツサンドなど様々な調理法が選べました。

三元豚を選択

    三元豚を炭火で焼き、わさびを添えてもらいました

    三元豚を炭火で焼き、わさびを添えてもらいました

“お任せが基本”のコース料理に身を任せる心地よさもよいですが、好きなものを好きな調理法で食べられる喜びや、メインが選べることにより、コースに抑揚がつく=ハイライトが生まれる、そのエンタメ性と自由度の高さが魅力なのです。

また、ポーションも細かく調整できるので、少しずつ種類を変えて食べたい女性とのデートや、ご年配の方も同席される大切な会食での利用もお勧めします。

だしを基本としたコース料理をご紹介

料理の基本となるのは、すっきりとした「一番だし」と、コクのある「だし」を合わせたもの。一番だしには、利尻昆布と鹿児島産の鰹節の2種を使用し、軟水につけ氷室で一晩おいたら30分ほどごく弱火にかけ、昆布だしをとります。そこへ鰹節を加えたら、最後に花がつおも入れて香りを立たせて濾します。その「だし」と食材から出る「だし」を組み合わせて作るのが、【小花】のだし料理なのです。

そんなこだわりの「だし」を使ったコース料理の一例をお見せします。

先付

  • 山芋の『すりながし』。調味料を一切使わず、素材の味わいと一番だしだけ

前菜

  • 前菜は通常5種ほど提供され、その内容は季節や食材の入荷状況によって変わります。

    まずは、蛤と昆布で1時間酒蒸しした『蛤と蟹クリームの貝殻焼き』。カニの身がたっぷり

  • 長崎産のすっぽんのコクが濃厚な『すっぽん茶わん蒸し』

お椀

  • あっさりとしただしの『真鯛』のお椀

  • 皮に焼き目を入れた、芳ばしい『のどぐろの焼き造り』。だしの入った造り醤油をつけて頂きます

  • カラっと揚がりつつも身はジューシーな『関あじのフライ』。自家製タルタルソースにもだしが隠し味に

  • 淡路産の鱧と、仙台牛のサーロインをだしにくぐらせた『鱧のすきしゃぶ』

  • 『三元豚 梅わさび添え』。オイルと梅肉を和えた梅ソースやわさび、白髪ねぎとともに

  • 〆は『焼きおにぎりの茶漬け』または『自家製手打ちうどん』が選べます

甘味

  • 最後に『さつまいものプリン』が供されました

魚の骨から出た旨味もだしと捉え、そのだしがしみ出た「骨酒」も充実。お酒ごとに好きなおちょこが選べるのも、気分が上がるポイントです。

  • 芳ばしい香りと味わいの『鱧の骨酒』。時間を置くとさらに味が濃くなります

    芳ばしい香りと味わいの『鱧の骨酒』。時間を置くとさらに味が濃くなります

  • 先ほどの鱧の骨酒よりも丸く、やわらかな味わいの『鮎の骨酒』

    先ほどの鱧の骨酒よりも丸く、やわらかな味わいの『鮎の骨酒』

コースは1万円~。メインの食材の選び方によって金額に変動があり、「魚や肉を1~2種選ばれた際の平均価格は、1万円~1万3,000円(ドリンク別)ほどです」とのこと。

「だし」の多様性に驚き、日本に生まれてよかったと思わせてくれる。そんなだし料理にきっと出会えます。

この記事を作った人

取材・文/嶋亜希子(ヒトサラ編集部)

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