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いまスパイス料理店がアツい!「ボーダーレスなスパイス料理×お酒」を実現する最新店へ

近年、カレーの1ジャンルとして「スパイスカレー」がブームになったように、これまで慣れ親しんだエスニック料理とは違う、独創的なスパイス使いの料理が身近になりました。それらをぐっと進化させた、個性様々な3軒【SPICE飯店】、【roji & spice___.】、【Spice Bazaar アチャカナ】がいま注目の的に。スパイス×食材×お酒のオリジナリティある組み合わせを楽しめる、ボーダーレスなスパイス料理は必食です。

スパイスが効いた料理といえば、タイやインド、モロッコといった各国料理、カレーや激辛メニュー……だけではありません! 2019年、そんなジャンルを超えた、独自のメニューを展開するスパイス料理店が続々とオープン。新たなトレンドを牽引する3軒を紹介します。

【SPICE飯店】/西荻窪

パンチが効いたスパイス料理と燗酒の新提案

    発酵させた白菜の漬け物「酸菜」が味わいに奥行きを与える『酸菜麻婆豆腐』780円(税込)

店名の「飯店」が示すように、メニューリストには麻婆豆腐にワンタン、干豆腐や五香などの中華でおなじみのワードが揃いながら、Pizzaやぬた、ウフマヨといった料理名が紛れていて、「これは一筋縄ではいかないかも!?」と早くも食欲がくすぐられます。そして、何といっても目に留まるのは、カウンターにずらりと並んだ日本酒のボトル。

2019年2月にオープンしたこちらの店主は岡本大佑さん。意外性のある素材を使った酒肴と日本酒を楽しめる、代々木八幡の【Sakeria 酒坊主】出身と聞けば、この取り合わせは納得。さらに「スパイスを変えるだけで、いつもの料理がガラッと違う表情になる」と、その面白さに魅せられて探究を続け、スパイス料理を主軸にした店を構えるまでに。

    猪と干し椎茸の旨みにマーガオの香りを効かせた一品に、熟成した味わいをさらに立たせた燗酒を。『皿ワンタン』780円、『竹鶴 生酛純米 H22BY』150㎖880円(ともに税込)

熟成させた豆板醬に、赤花椒と青花椒がビリリと効いた麻婆豆腐には酸菜、爽やかな台湾山胡椒「マーガオ」がアクセントのワンタンは猪肉を具材にするなど、時に発酵食材やジビエなどを使った岡本さんの料理は、スパイスの刺激だけではないコク深さがあります。

その料理の数々をぐっと引き立てる相棒としてオススメなのが、実に30銘柄ほど取り揃えている燗酒です。燗をつけることでお酒の個性が際立ち、パンチのあるスパイス料理とがっぷり四つに組むような力強さが生まれます。ひと口ごとに、料理の辛さや香り、お酒の酸味やコクの余韻が心地よく続き、意外な相性の良さに驚くほど。

  • カウンター5席と4人掛けのテーブル1卓。お酒は、お燗向きの日本酒約30種の他、冷酒8種、クラフトビール、自然派ワインを用意。

  • 「カレーが好きで、いろいろなスパイスを試しては自作していた」という、店主の岡本大佑さん。カウンター越しに気さくに対応してくれます。

料理とお酒のペアリングに悩んだら、岡本さんにお任せすれば安心です。
──例えば麻婆豆腐に合わせるならどの日本酒を?
「紹興酒のような香りがする『杉錦』の古酒か、白ご飯をイメージして米の旨みがある『にいだしぜんしゅ』のにごり酒を」
これはどちらも試してみたい! スパイス料理と燗酒の相乗効果を体感できる、唯一無二のお店です。

 

【roji & spice___.】/中野

季節素材を引き立てるスパイス使いに自然派ワインが好相性

    インドのスナック「パニプリ」にカレーリーフが香るポテトサラダを詰めるアイデアも楽しい。『前菜盛り合わせ4種』950円(税別)

うっかり見過ごしてしまいそうな細い路地を入ったところに建つ、築60年になる一軒家。オーナーの蟻塚純さんの元実家として、地元の友人たちが集う場でもあった古民家が2019年3月にレストランに姿を変えました。

シェフとして厨房に立つのは、押上の名店【SPICE Café】で修業した経験を有する岸田禎之さん。手掛ける料理は、スパイスの個性を生かしつつ、合わせる素材と調和するものばかり。

8種類ほど揃う前菜は、ゴルゴンゾーラムースにはシナモン、椎茸のローストにはカスメリティ、ミニトマトはモルディブフィッシュと合わせてオイルマリネに、ケールはマスタード炒めにして……というように、素材によってスパイスと調理法を使い分けています。スパイスは刺激ではなく“香りとして”存在し、料理の味わいが立体的に感じられます。

    オーダーごとに火にかけるので、炊き上がりまで50分ほど。『実山椒香る燻製ホタテとシラスのビリヤニ』(2人前)900円、『La Lunotte La Flou』グラス1,400円(ともに税抜)

ちりめん山椒から着想したというビリヤニは、まず、クミンやカルダモン、シナモンといったスパイスとともに燻製ホタテを炊き込んで、バスマティライスに香りと旨みをまとわせます。シラスと実山椒は風味を生かすように、蒸らす前に加えて余熱で火を入れて。ふっくらとしたシラスと爽やかな山椒の組み合わせが、これまでのビリヤニにない一品を生み出しています。

実山椒といった和のスパイスを使うのは、「インドで使われているものに限らず取り入れたい」という岸田さんのアイデアから。さらに、メニューの季節感も意識しているそうです。
初夏は、トマトやズッキーニ、実山椒などの旬素材を使い、さっぱりと仕上げて、というように。

  • エントランス入ってすぐは、ハイスツールで気軽にちょい飲みができるスペース。奥に行くと、ゆっくりと食事を楽しめるテーブル席のコーナーが。

  • オーナーの蟻塚純さん(右)とシェフの岸田禎之さん(左)。ともに中野が地元、中学時代のバスケ部仲間という間柄ゆえに息はぴったり。

素材の調和が楽しい料理に合わせるのは、蟻塚さんがセレクトするワイン。こちらのワインはすべて自然派。穏やかで滋味深くありながら、ときに自然のパワフルさを伝えるヴァンナチュールは、スパイス料理にぴったりなのです。

何よりも、蟻塚さんと岸田さんは中学時代からの友人。気心知れた二人で繰り出す、スパイス料理と自然派ワインが相性抜群なのは当然かもしれません。

 

【Spice Bazaar アチャカナ】/西新宿

多彩なスパイスと技を駆使してインド料理の枠を越える

    チーズがとろけるクルチャは絶大な人気を誇る一品。『ココナッツポークキーマ』1,100円、『チーズクルチャ』630円(ともに税込)

カレー通なら知らない人はいない、スパイス料理店が誕生したのは2019年4月のこと。店主の新直樹さんは南インド料理店【ダバ インディア】や、大塚の人気店【カッチャル バッチャル】などを経て、満を持して独立。その経歴ゆえに王道のインド料理店かと思いきや、その枠を超えたメニューを手掛けています。店名に冠した「Spice Bazaar」は、「市場のようにバリエーションに富んだスパイス料理を」と、ジャンルにとらわれずに挑戦していく新さんの意気込みの表れ。

もちろん、コンパクトな厨房の中に設けたタンドールで焼き上げるメニューはインド料理でも登場する必食ものばかり。5,6種類ほど揃うカレーには、ライスはもちろん、焼き立てのナンや熱々のチーズがとろけ出るクルチャが楽しめます。チリパウダーベースでスパイシーに、カシューナッツとヨーグルトでまろやかに味付けて焼いた2種のタンドーリチキンは、お酒が進むこと間違いなし。

    タンドーリチキンにはコリアンダー×ミントのソースを添えて。『2種のタンドーリチキン』(4ピース)680円、インドビール『ゴッドファーザーラガー』680円(ともに税込)

インド料理の定番メニューを、新たな味覚の一品に昇華させているのは新さんの技。一般的にはひき肉を使うキーマカレーは、あえてブロック肉から粗く手切りして仕上げるため、肉肉しい旨みはしっかりとキープしながらも、グレイビーはライスやナンによく絡み、これまでのキーマとは全くの別物!

  • 「お客さんの顔が見えるのが楽しい」という新さんと会話が生まれるカウンター7席に、テーブルが8席の空間。

  • これまでの店舗よりコンパクトになった厨房で孤軍奮闘する店主の新直樹さん。300℃になるタンドールの熱さに対峙しています。

聞けば、料理人としてのスタートは洋食だったという新さん。初めてインド料理に直面したときに「いい意味で大雑把」、それゆえに「洋食や和食の技術を用いたらもっとおいしくなるはず」という可能性を感じたそう。その初心を貫徹すべく、『鴨肉の冷菜』といった新たな食材や調理法を駆使したメニューもお目見えします。

お酒の品揃えもジャンルレス。軽やかなインドビールをはじめ、カクテル、ワイン、ウイスキーがラインナップ。スパイスが効いた前菜や香ばしいタンドール料理でグラスを傾けつつ、カレーで〆てお腹を満たしたいもの。

 

2019年に登場した話題のこの3軒なら、「スパイスって奥深い!」と目から鱗の一皿に出会えるはず。料理もお酒も、行きたいシチュエーションも三者三様。共通しているのは、スパイスの魅力を堪能しつつ、“とことん食べて飲みたい”に応えてくれる懐の深さです。

この記事を作った人

取材・文/首藤奈穂(フリーライター) 撮影/岡本裕介

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