こういうお店が欲しかった! あの【香妃園】出身のシェフが提案する新しい町中華|中目黒【中華美食 トミーズキッチン】
六本木がギロッポンと呼ばれていたバブル時代はディスコで踊り疲れた人々の胃袋を満たし、令和の今も人気が衰えない老舗の中華料理店【香妃園】。その味を長年にわたって支え続けてきたベテランシェフの「トミーさん」が、2022年8月、中目黒に【中華美食 トミーズキッチン】をオープンしました。メニューには【香妃園】の名物でもある『鶏煮込みそば』の文字も見えます。これは中目黒の人の流れを変えるかもしれない?! 善は急げ! ということで、新店舗を訪ねてまいりました。
毎日でも通いたくなる店って、こういうこと。
中目黒というエリアには、高架下や山手通り沿いの雑踏に由来する、若々しくて騒がしいイメージもありますが、【中華美食 トミーズキッチン】が位置するのは、閑静な住宅街にも程近い目黒川周辺。高感度な店が並ぶ通りを進み、中華鍋とお玉を手にするトミーさんのイラストが入った看板を頼りに階段を登ると、2階にガラス張りのお店が現れます。
見れば思わず癒される、この看板が目印。おいしい料理を作ってくれそうじゃありませんか?
店内は“ナカメ”らしいスタイリッシュな空間。コック帽をかぶってキビキビと立ち働く店主・トミーさんの姿がカウンターの向こうに見えなければ、カフェかビストロのようです。
オレンジ色のクッションが店内シックな雰囲気に華を添えています
と言っても、BGMはジャズやボサノバではございません。カウンター越しのキッチンから漏れてくる、ジャッジャッジャッという男前な調理音であります。このスタイリッシュにして気取り過ぎない感じが、妙に心地いい。いまどきの町中華、という感じです。
カウンター席もあり、ひとりでも気軽に利用できます
実際、メニューも町中華らしい内容です。チンジャオロース、ホイコーロー、エビチリ、エビマヨ、酢豚、麻婆豆腐、坦々麺、五目チャーハンなどなど、親しみのある一品料理が並び、胃袋をストレートに刺激します。
特徴的なのは、ほとんどの料理においてだしを上手く活用していること。例えば、キクラゲと、卵、豚肉を炒めたひと品『木須肉(ムースーロー)』は、だしを使ったタレを豚バラ肉に揉み込んでから調理しているとのこと。これによって、肉はやわらかくなりますし、下味がしっかり付いているので、炒める際に使用する油の量を抑えることができます。つまり、食べやすくて、体に負担がかかりにくい。筆者はこの店に来て、シンプルにしてふくよかな『木須肉』のおいしさに開眼しました。
キクラゲ、卵、豚肉のほかに、たけのこと絹さやが入った『木須肉』1,500円
開眼したといえば、『麻婆豆腐』もそうです。豆鼓は手作り! 挽肉はあらかじめ炒めて炸醤(ザージャン)にし、余計な油を切っておく。炒めるときに用いるスープには、野菜の下処理に使った旨みたっぷりの茹で汁を活用する。手間を惜しまない丁寧な姿勢が料理にさらなるコクをもたらし、ひと口、またひと口と食を進めます。
『麻婆豆腐』1,500円。自然派のオレンジワインと合わせるのがおすすめです
基本をおろそかにせず、手間ひまをかける。トミーさんの調理に対する真摯な姿勢は、お人柄にもよると思われますが、ご本人曰く「コロナ禍を経験したことが大きい」。
実はトミーさんが【香妃園】を退職して【トミーズキッチン】を開業したのは2020年、コロナ禍の真っ只中のこと。当初はデリバリーのみで開業し、お客さまの顔が見えないという環境下にあったことから、ひと皿ひと皿に心を込め、食べていただく方が笑顔になる料理を目指したいという気持ちを今まで以上に強めたそうです。
中華料理一筋33年のオーナーシェフ「トミーさん」こと富谷宗久さん
その優しさは、〆の『特製白湯鶏煮込みそば』にもよく表れていました。丸鶏とモミジをじっくりと煮込んでとったスープは穏やかにして骨太な味わい。つるりとした喉ごしの麺との相性も上々で、筆者は思わず「う〜ん」と唸ってしまいました。白ご飯を追加注文し、浸してすべて平らげたことを告白します。
人気No.1メニュー『特製白湯鶏煮込みそば』1,300円
思えば食べ過ぎました。あれやこれや気になるアラカルトをひと通り注文した後、『鶏煮込みそば』を一人前いただいたのですから(笑)。でも、驚いたことに、翌朝の目覚めは快調そのもの。体に負担がかからないとはこのことです。
営業は昼と夜。ランチのメニューは、おかずを1品選べるランチ定食(1,000円)と、2品選べる中華弁当(1,500円)の2種類。ディナーの一品料理はハーフサイズも用意されています。そして、デリバリーも継続中。なんと使い勝手がいいのでしょうか。我が家の近所にあったら、ヘビーローテーションすること間違いなし! そう断言できるお店にひさしぶりに出会ったような気がしています。
この記事を作った人
撮影/三橋 優美子 取材・文/甘利美緒
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