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更新日:2019.11.04食トレンド

【閉店】秋葉原【ホットハウス秋葉原本店】|金沢の老舗インド料理店の味をゴーゴーカレーグループが継承

金沢で40年近く愛されているインド料理店【ホットハウス】が、都内に進出。2018年横浜に関東1号店、そして2019年8月、秋葉原に2号店がオープンしました。創業者である故・五十嵐憲治さんの後継者となったのは、なんとゴーゴーカレーの代表・宮森宏和さん。「もっと多くの人にこの味を広めたい」と、味を受け継いだ想いを伺いました。

【閉店】秋葉原【ホットハウス秋葉原本店】|金沢の老舗インド料理店の味をゴーゴーカレーグループが継承

従業員もそのまま、金沢で作ったカレーを秋葉原へ

秋葉原駅から徒歩5分、中央通り沿いのビルの5階。金沢で老舗名店として知られる【ホットハウス】が8月にオープンしました。メニューには、9種類のカレーやチキン、マトンなどのタンドールグリルが並んでいます。

    『究極のマサラチキン』と『焼きたて熟成プレーンナン』のセット 1,280円(税別)

    『究極のマサラチキン』と『焼きたて熟成プレーンナン』のセット 1,280円(税別)

ゴーゴーカレー代表・宮森さん

ゴーゴーカレー代表・宮森さん

まず食べていただきたいのは、ナンとマサラチキン。これを20歳の時に食べた時本当に感動しました!
ほんのり甘みがありふわっとしているナンの秘訣は、粉の配合、そして窯です。

他のインドやネパールのカレーとは一線を画し、「インドカレーが苦手という人もハマる、どこか懐かしい味わいが潜んでいる」という思いから、メニュー名に「究極の」をつけたといいます。

宮森さん

宮森さん

『究極のマサラチキン』は100年経っても愛され続けるに違いない逸品です!
北インドのカレーをベースに、すりおろしたリンゴや2日間かけて甘みを出した玉ねぎ、鶏や野菜のだしに加えて赤ワインでコクを深めるなど、手間暇と工夫の結晶なんです。

    お好みの3種類のカレー、チキンティッカ、プレーンナン、ミニサフランライス、ミニサラダになった『スペシャルセットA』1,680円(税別)写真のカレーは、マサラキーマ(マトン)、クリーミーチキンカレー、魅惑のバターチキンカレー

    お好みの3種類のカレー、チキンティッカ、プレーンナン、ミニサフランライス、ミニサラダになった『スペシャルセットA』1,680円(税別)写真のカレーは、マサラキーマ(マトン)、クリーミーチキンカレー、魅惑のバターチキンカレー

スパイスとヨーグルトに漬け込んだ、鶏の窯焼きタンドール『秘伝のチキンティッカ』も人気の高い定番。柔らかな口当たり、スパイスの風味もマイルドながらずっと後を引くおいしさです。

宮森さん

宮森さん

この味を超えるチキンティッカにはまだ出合っていません!
ポピュラーなインド料理ですが、五十嵐さんがインドからスカウトしてきた料理人とともに、日本人の口に合うように試作を繰り返して生み出した秘伝のスパイスの調合が素晴らしいのです。

この味を引き継ぎ、守るには長年【ホットハウス】で働いてきた料理人に作ってもらうのが一番と考えた宮森さん。

宮森さん

宮森さん

特にナンは窯の条件も大切ですし、職人の技を簡単には習得できません。今は金沢で作ったものを冷凍で運び、秋葉原の店で仕上げて出しています。

また、新たに雇った料理人も金沢で味や技術を学び、定番の味をきちんと守ることに集中できるよう、増え過ぎたメニューを整理したのだそうです。

    秋葉原本店の店内は、カウンターほか、ベンチシートのテーブル、奥にはゆっくりくつろげるテーブル席などTPOで使い分けできる造り

    秋葉原本店の店内は、カウンターほか、ベンチシートのテーブル、奥にはゆっくりくつろげるテーブル席などTPOで使い分けできる造り

宮森さん

宮森さん

秋葉原の店は、場所柄一人で利用される方もいると思い、カウンター席を作ったり、電源を完備したり。
インドカレーというとちょっと謎めいた入りにくい内装の店が多い中、明るく清潔感のある雰囲気を心がけています。

    左:自家製ラッシーカクテル(カシス)600円、右:自家製ラッシーカクテル(ピーチ)680円(共に税別)。1年にカレーを8000色食べるという料理研究家の一条もんこさんが監修

    左:自家製ラッシーカクテル(カシス)600円、右:自家製ラッシーカクテル(ピーチ)680円(共に税別)。1年にカレーを8000色食べるという料理研究家の一条もんこさんが監修

宮森さん

宮森さん

秋葉原店限定の『自家製ラッシーカクテル』は、カレー料理研究家・一条もんこさんに監修してもらいました。地域性に合わせて “ここならでは”の新たなメニュー開発もやっていけたらと思っています。

「愛された味を未来につなぐプロジェクト」とは

    「お客様の元気のため、最高の味とサービスでカレー世界一を目指す」、ゴーゴーカレーグループ代表・宮森宏和さん

    「お客様の元気のため、最高の味とサービスでカレー世界一を目指す」、ゴーゴーカレーグループ代表・宮森宏和さん

「おいしいカレーを世の中に広め、カレーで世界一を目指し、かつ世界を元気にする」のがゴーゴーカレーグループのミッションだという宮森さん。人々に愛されながらも、後継者不在で店を閉めてしまう、カレー店を救うプロジェクトを考案しました。その最初の店となったのが、奇しくも宮森さんの地元である金沢の名店【ホットハウス】だったのです。

宮森さん

宮森さん

2017年に「名店の味を未来につなげるプロジェクト」を立ち上げ、SNSで宣言したところ、なくなって欲しくないというお店の情報がどんどん寄せられるようになりました。いろいろ食べに行きましたが、まずは私自身が大好きな味であり、行く末が気になっていた金沢の【ホットハウス】を訪ねたのです。

    1979年創業、石川県で最古参のインド料理点【ホットハウス】。2017年に宮森さんが事業を継承した(写真提供:ゴーゴーカレーグループ)

    1979年創業、石川県で最古参のインド料理点【ホットハウス】。2017年に宮森さんが事業を継承した(写真提供:ゴーゴーカレーグループ)

宮森さん

宮森さん

私が【ホットハウス】に出合ったのは20歳の時でした。初めてのインドカレーでしたが、その美味しさに衝撃を受けたのです。その後店に足繁く通うようになり、オーナーの五十嵐さんとも親しくなりました。

    写真左が【ホットハウス】の創業者・五十嵐憲治さん。事業譲渡で会長となったが、2019年6月に永眠された(写真提供:ゴーゴーカレーグループ)

    写真左が【ホットハウス】の創業者・五十嵐憲治さん。事業譲渡で会長となったが、2019年6月に永眠された(写真提供:ゴーゴーカレーグループ)

2003年にゴーゴーカレーグループを創立した後も、地元に帰った時には五十嵐さんとカレーの話をしたり、東京にお店を出して【ホットハウス】の味を知ってもらうべきじゃないかと提案していた宮森さん。名店の味を引き継ぐプロジェクトを考えついた時に、まずは五十嵐さんのところへ向かったそうです。

宮森さん

宮森さん

話を聞くと、年齢的にしんどいけれど、従業員の行く末や、常連さんが悲しむことを思うと店をやめるにやめられないと悩んでいたんですね。それで、私の会社に五十嵐さんの味を引き継がせてもらえないかと事業譲渡を申し出たのです。

継承することで、ますます広がる可能性

    今後は、ゴーゴーカレーだけでなく、名店の味を世界へ広めることに力を入れていきたいと語る宮森さん

    今後は、ゴーゴーカレーだけでなく、名店の味を世界へ広めることに力を入れていきたいと語る宮森さん

2019年10月1日には、【サムラート】とも事業譲渡。東京のインド料理店の草分けとして1980年に創業したこの店も、実は後継者不在だったのです。

宮森さん

宮森さん

【サムラート】は製造工場も持っていて、冷凍やレトルトの技術はもちろん、ナンを冷凍しないで美味しさを保つ技術を持っています。なので【ホットハウス】のカレーやナンも東京で作り、スーパーなどでの販売も始めます。

宮森さんが独立前に修行した【ターバンカレー】も高齢化でやはり、後継者が不在となり、今年10月からゴーゴーカレーグループが味を引き継ぐことになりました。

宮森さん

宮森さん

【ゴーゴーカレー】は、私が子どもの頃からずっと食べてきた老舗【ターバンカレー】の味が元になっています。事業を立ち上げた時は自分が後継者になるとは想像もしていませんでした。不思議なご縁ですが、私が愛する味が守るべき味となり、それを引き継ぎ、世界の人々に味わってもらう。そして多くの人々に「おいしい」と喜んでもらえるのが何よりです。

全国各地にまだまだあるに違いない「継承すべき味」を今後も探していきたいと話す宮森さん。

宮森さん

宮森さん

とはいえ、【ホットハウス】を超える味でなければ世界一は目指せません。店舗数ではなく、味で世界一と言われたいからです。2020年までにあと2店舗は継承できそうですが、焦らず【ホットハウス】のような地方の名店との出合いを大切にしたいと思います。

宮森 宏和 プロフィール

  • 1973年石川県金沢市生まれ。専門学校を卒業後、旅行会社に勤務するも、学生時代に旅をした「NYで仕事をしたい」という夢を忘れられず、起業。2004年5月5日、新宿にゴーゴーカレー1号店を、2007年5月5日NY1号店をオープン。現在、国内約70店舗、海外はアメリカ・ブラジルに9店舗を持つ。

この記事を作った人

撮影/岡本 裕介 取材・文/藤田 実子(フリーライター)

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