ヒトサラマガジンとは RSS

3代受け継ぐ伝統の技と、モダンな趣向を織り交ぜて|京都・祇園【京星(きょうぼし)】

祇園・花見小路から東へ入った閑静なエリアにある天婦羅専門店【京星】。1947年創業の老舗であり、現在は秘技を継承する3代目 榊原 俊徳さんが切り盛りしています。音と泡の様子を五感で見定めて供される天婦羅は、粉と水のみを用いた衣を、絹のような薄さとなめらかさで食材に纏わせる〝京星流“。一子相伝で伝えられてきた技の賜物です。

京星のぐじ

温かな笑顔に迎えられ、白木のカウンターでゆったりと

    京星の外観

    煉瓦造りの壁とシンプルな暖簾が目印

祇園四条駅から徒歩4分。花見小路にほど近い、隠れ家のような天婦羅専門店が【京星】です。かつては知る人ぞ知る名店でしたが、2010年から2021年の現在まで12年連続ミシュラン一つ星を獲得し、国内外から広く知られるようになりました。メニューは、17~18品が付くおまかせのコースのみ。食材の旨みを上質な油が引き出す、軽やかな風合いの天婦羅が次々に登場します。

    京星の内観

    全9席だが満席にはせず、1席は必ず空けるという。隣の声や気配が気にならないのがうれしい

暖簾の向こうに広がるのは、白木のL字型カウンターが主役のレトロで温かい空間。椅子は9席用意されていますが、1組ごとに間隔を置いてゆったり客人を迎えるため、1日数組限定の特等席です。名店ですが気取りなく、ご主人夫婦がやさしい笑顔で迎えてくれるので、一見さんでもどうぞ安心して入店を。

卵不使用の極薄衣で、軽く旨み際立つ揚げ上がりに

    京星のいんげん豆

    いんげん豆を立体に組んだり、魚を泳がせたり三つ編みにしたりと、メリハリのある趣向も楽しみ

この店の天婦羅の最も大きな特徴は、衣に卵を使わないところにあります。だからこそ揚げ上がりは軽く、素材の風味がこの上なく生きた仕上がりに。この風味を損なわないようにあえて天つゆは使わず、粉雪のようにサラサラで甘みと旨みのある自家製塩、レモンなど柑橘の果汁、そして、柑橘の汁を加えた大根おろしでさっぱりと味わうスタイルです。

ここからはその中でも、お店オススメのメニュー3つをご紹介します。

    京星のぐじ

    パリパリッとした皮目の食感が心地いい『ぐじ』

味にうるさい京都人が特にこだわるという『ぐじ』は、うろこが立ったパリッとした食感がやみつきに。一転、身はふっくらとやわらかで、これぞぐじの醍醐味。食材はすべて、店主自らが毎朝中央市場に足を運び、鮮度や質は当然のこと、“天婦羅にしてこそおいしくなる”大きさややわらかさ、時季などを見極めて仕入れているそうです。

    京星の人参

    まるでスナック菓子!? 意外性と素材の甘さでサプライズ感満点の『人参』

このクルクル、なんだと思われますか? 実は、人参なんです。一見するとスナック菓子のようですが、味わってみると予想以上にやわらかで甘く、人参嫌いのお客様も、「これだけは別もの」と笑顔を見せるのだそう。こういった見た目の楽しさや、ひと手間かけた趣向も、この店が人気の理由です。

    京星のワカサギ

    優雅に泳いでいるような盛り付けで登場する『ワカサギ』

泳いでいるかのような姿に会話が弾む『ワカサギ』は、ほのかな甘みのある自家製塩と相性抜群! このほかに稚鮎など、旬の小魚が季節ごとに登場します。一見何気なく見えるかも知れませんが、ヒレを広げてくっつかないよう衣をくぐらせて揚げる、高度な技術が使われています。

天婦羅に最適な食材だけを、食通の眼鏡にかなう美食に

    京星のクルマエビ

    車海老など定番ものこそ、常にいいものが提供できるよう心がけている

「自分の目で見て、天婦羅に最適と納得したものだけを仕入れています」と語る榊原さん。なかでも、定番である活けの車海老と、京都を代表する魚「ぐじ」は、お客様の期待値も高いため、それに応えられるよう厳しい目で選んでいるそうです。3代にわたって守られる高いクオリティは、こういったお客様によって支えられているのかも知れません。

コースは、食パンに海老のすり身を挟み素揚げにした『海老パン』から始まります。これは、油のよさを知ってもらうための演出なんだそう。続くラインナップは、長き伝統を守る天婦羅に、さつま芋の天婦羅をブランデーと砂糖で味わう一品など、榊原さんによる新しい趣向が織り交ぜられており、まさにこの店でしか味わえない食体験。訪れたら、〝天婦羅“の概念が覆ってしまうかも!?

料理人プロフィール:榊原 俊徳 さん

    京星の榊原さん

    1969年生まれ。祇園に創業した【京星】が東京へ移転したことから自身は東京に生まれ育つ。高校卒業後、兵庫の有名料亭で修業した後、父の下でさらに修業を重ねる。22歳で原点である祇園に開店。代々の味を守りつつ、新しい提案で新境地を開いてファン層を広げ、世界も認める1軒へと成長させた。

※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報や営業時間は店舗にご確認ください。

この記事を作った人

ヒトサラ編集部

この記事に関連するエリア・タグ

編集部ピックアップ

週間ランキング(11/14~11/20)

エリアから探す