5つ星ホテルの和食を極めた総料理長の集大成。日本料理の新たな地平を切り開く【銀座 稲葉】とは?
三重・伊勢志摩のリゾート「アマネム」や東京・汐留のホテル「コンラッド東京」で総料理長を務めた稲葉正信さんが、自身の名を冠した料理店【銀座 稲葉】を2021年7月7日にオープンしました。グローバルな視点を持ちながら日本料理とじっくり向き合ってきた稲葉さんが「キャリアの集大成」とするおもてなしは、すべてが鮮烈。感動の余韻がとても長いのです。
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ゲストの期待を高める威風堂々とした佇まい
常識にとらわれない料理の数々にとことん心酔
2021年11月1日より朝食営業をスタート
ゲストの期待を高める威風堂々とした佇まい
「季節を感じやすい路面店にこだわった」という店舗の外観にはあたたかい光が漏れる
数々の実力店がひしめく銀座8丁目にひときわ目立つ石造りの建物。此処が「アマネム」や「コンラッド東京」の総料理長として国内外のセレブリティをもてなしてきた稲葉正信さんの新店【銀座 稲葉】です。東京の象徴である皇居をイメージしたという佇まいに心地よい緊張感を覚えながら格子戸を引くと、目に飛び込むのは大きな柱に書かれた「融通無碍」の文字。考え方や行動が何物にもとらわれず、自由でのびのびしているという意味の言葉に触れ、これから繰り広げられるひとときに自ずと期待が高まります。
筆を執ったのは書道家の武田双龍氏。力強くも優しい筆致が印象的
廊下の右手には白木のカウンター8席、左手には2部屋に仕切られる8名までの個室。初めて訪れる方にはカウンター席をお勧めします。と申しますのも、この店のカウンターの向こうには「おくどさん(かまど)」が設けられており、稲葉さんの華麗な手さばきとともに料理が出来上がっていく様を眺めることができるのです。
「おくどさん」では和食の要であるだしを用意。ゆらゆらと立ち上る湯気が食欲を刺激する
常識にとらわれない料理の数々にとことん心酔
席に着いてしばらくすると、その日のお料理に使用される主な食材が運ばれてきます。その内容が豪華なこと。毛ガニ、ウニ、伊勢海老、アワビ、シャトーブリアンなどが鉢から溢れんばかりに盛られ、思わず目が釘付けになります。
この日の北海道産の毛ガニとウニ、三陸産のアワビ、千葉県産の太刀魚と伊勢海老、信州牛のシャトーブリアンなど
夜のメニューは10品で構成されるおまかせ1本(3万3,000円~/税込)。先付、お椀、お凌ぎ、お造りと日本料理の流れを汲んだ構成になっていますが、「融通無碍」を座右の銘とする稲葉さんは「日本料理の基本を重んじながらも、自由な発想で食材の魅力を活かしたい」と語り、日本料理の新しい地平を見せてくれます。
では、その一部をお目にかけましょう。
お椀
伊勢志摩で腕を振るった稲葉さんのキャリアを感じさせる一品『いちご煮 鮑雲丹 芋茎 蓴菜 青柚子』
関東ではなかなかお目にかかる機会のない、青森県の伝統料理「いちご煮」。「アマネム」時代に伊勢志摩の名産品であるアワビをよく使っていたことから閃いた一品だそうです。稲葉さん曰く「ウニは調味料になる」。口にしてみると、真昆布で丁寧に取っただしと、ウニの甘み、旨み、磯の香りがふくよかなハーモニーを奏で、それが真であると実感します。
お凌ぎ
稲葉さんの名刺代わりの一品『トリュフ蕎麦 鵜玉 青葱』
稲葉さんがホテル「コンラッド東京」の日本料理「風花」の料理長だった10年ほど前から提供し、「アマネム」ではわざわざそれを目がけに来る人がいたほど評判を取ったトリュフ蕎麦。日本蕎麦とポーチドエッグにしたうずらの卵、細かく削ったトリュフをよく混ぜていただくと、口の中に充満したトリュフの香りが鼻に抜け、多幸感に包まれます。
小鍋
中華料理の食材としてお馴染みのフカヒレを使った意欲的な一皿
フカヒレを主役にしたこの一皿が運ばれてきたとき、筆者は稲葉さんが【銀座 稲葉】でやろうとしていることをうっすらと理解し、「融通無碍」という言葉に想いを馳せました。熱々のスープは鶏白湯、毛ガニのスープ、ハマグリのスープを合わせたもの。旨みが凝縮したそれは五臓六腑に染み渡り、自ずと目尻が下がります。今後は、鶏白湯をベースに、旬の食材からスープを取っていくとのこと。たとえば秋はマツタケから、冬は牡蠣やスッポンから。想像するだけで胃袋をつかまれます。
食事
信楽の名窯として名高い雲井窯の当主、中川一辺陶氏の作による土鍋とともに炊きたてが登場
「かつて愛媛県を訪ねたときに鯛めしにもさまざまなバリエーションがあることを知り、自分ならどう作るか考えたのです」。そう語る稲葉さんが【銀座 稲葉】で提供する鯛めしには上品な味わいの甘鯛を使用。おろした身は一杯醤油で炭火焼きにし、骨やアラはごはんを炊き込むスープに。京都産の万願寺唐辛子や九条葱など、季節の青野菜を割甘醤油で軽く炒り煮にして合わせています。これがまあおいしいのなんの。此処に至るまでさんざんいただいてきたのに、醤油の香ばしさにそそられていくらでも食べられてしまうのです。今後はすき焼きのタレでしゃぶしゃぶした黒毛和牛をトリュフご飯といただく牛丼を出す考えもあるそうですが、この鯛めしがことのほか好評なので迷っているとか。牛丼も大いに気になりますが、しばらくは迷っていていただきたい。それが、鯛めしの感動に再び包まれたいと願う筆者の率直な感想です。
【銀座 稲葉】店主・稲葉正信さん。その幅広い活躍にも注目です
ホテルから街場に進出した稲葉さんは語ります。「ホテルはルールがある中で攻めることを求められますが、街では自分の世界観を受け入れてもらえるかどうかに尽きる。私にとっては挑戦となりますが、素材をおいしく提供することに心を砕く料理屋をただひたすらに目指していきたい」。そうかもしれません。そして、【銀座 稲葉】で出会ったお料理は稲葉さんの志が伝わってくるものばかりでした。その想いをこれからどう進化し、深化させるのか。目が離せなくなりそうです。
そうそう。ひとつ朗報があります。【銀座 稲葉】では「食の原点は朝食ではないか」との発想から、2021年11月1日より朝食営業をスタートさせるそうなんです。炊きたてのご飯、焼きたての魚……だし巻き玉子もお客様がいらしてから巻くとのこと。作りたての贅沢を朝から都心で享受できるなんて、幸せな一日がスタートしそうではありませんか。早めに体験したいと思っています。
禅の世界観をイメージし、応量器で提供される【銀座 稲葉】の朝食。丁寧に作られたおばんざいに心が躍る
撮影/今井 裕治 取材・文/甘利 美緒(フリーライター)
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