名フレンチが手掛けた、新しくて楽しいイノベーティブおでん|三越前【平ちゃん】
ミシュランの星に輝くフランス料理店【ラペ】が手掛けた新店は、なんとおでん屋さん! 開店にあたりクラウドファンディングにも挑戦、瞬く間に目標を達成したことからも注目度の高さがうかがえます。「フレンチが始めたおでんって⁉」と訪れる前から膨らむ期待に、新しくも楽しい一皿一皿で応えてくれる【平ちゃん】です。
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澄んだだしをベースに、一品ずつ供される革新的なおでん
【ラペ】譲りのドリンクペアリングが料理を引き立てます
次の世代へ、次の時代へ、繋げたいという思いを込めて
澄んだだしをベースに、一品ずつ供される革新的なおでん
おでん屋さんというよりビストロのようなキッチンを囲むカウンターは全8席
日本橋室町にあるフレンチ【ラペ】のほど近く、2021年6月にオープンした【平ちゃん】。と聞くと、ピンとくる人も少なくないかもしれません。毎年【ラペ】が年始に開催していた期間限定企画が「おでん屋 平ちゃん」。年一度、わずか1週間しか登場しないおでんコースが評判となり、予約が取れないほどの大人気に。そのおでんをもっと多くの人に楽しんでほしいと店舗開業を目指し、満を持して登場したのが【平ちゃん】なのです。
コンクリートに塗り壁と格子戸をあしらい、和モダンに仕上げた個室。2室を繋げて最大8人で利用可能
【ラペ】のオーナーシェフ、松本一平さんの原点となるのが、和歌山のご実家で営んでいた【おでん割烹 平ちゃん】。その味の根幹となる鰹節・昆布・白醬油のだしを使い、具材ごとに仕上げて一品ずつ提供するスタイルは継承しつつも、見て食べて驚かされる【平ちゃん】のおでんを紹介します。
日本各地の農園から届く旬野菜をたっぷりと盛り込む『おでんサラダ』
一見すると「どこにおでんの要素が?」と思わせるサラダ。存在感のある半熟卵とじゃがいものフリットはおでんだしで煮たものなのです。さいたま榎本農園の「ぜいたくトマト」はそのままでフレッシュに、みょうがは甘酢漬けにしてなど、7~8種類入った野菜はそれぞれの味わいが引き立つように工夫されています。からすみパウダーとパルミジャーノをふりかけてコクをプラス、添えた和からしで味の変化を楽しめます。
おでんダネを包んだ春巻きという斬新なアイデア。『おでん春巻き』1,210円
スペシャリテとなる一皿も実にユニーク。コースメニューにプラスしてオーダーできる『おでん春巻き』です。中には豚肉と大根がゴロリと交互に入っています。
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豚肉と大根は、食べ応えのあるサイズの角切りに
豚は千葉県産「オリヴィアポーク」を塩麴でマリネに、大根はおでんだしが染み染みになったもの。かぶりつくと皮のパリパリ食感も楽しく、熱々のだしと肉汁がじゅわっと広がります。火傷に気を付けながら召し上がれ。
松本さんのご実家「平ちゃん」での定番「治部煮」がジビエを使った新しい一品に
こちらは【おでん割烹 平ちゃん】でも定番メニュー、松本さんのお母さんの得意料理だったという治部煮。鳥取県産の夏鹿のロースを使い、揚げ浸しにした丸ナスとともにいただきます。だしを纏った鹿肉と丸ナスがなんとも滋味深く、少々のわさびが味を引き締め、コース終盤でも優しくお腹に収まります。
ご飯はおでんだしで炊き上げて。ほんのりと効かせたペルノ酒が隠し味に
〆の段階で、もうひと盛り上がりする土鍋ご飯。具材には柔らかく煮たタコ、ししとうとパプリカを掛け合わせた「よさこいハニー」と赤パプリカの素揚げを。エディブルフラワーを散らして、華やかな赤い仕上がりはインパクト絶大! メニュー名の『タコライス』に【ラペ】譲りの遊び心が垣間見えます。
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雑味ないおでんだしをかければ、さらりといただけてしまう
まず土鍋で登場した後は、お茶椀によそってサーブされます。一膳目はそのままで、二膳目はおでんだしをかけていただくお茶漬けだから、おかわりは必食です。デザートには、【ラペ】の名物である韃靼そば茶のブランマンジェやパフェでフレンチらしさを感じて。
ディナーは全11品のおまかせコースが9,900円、ランチは鯛茶漬けが〆になった全8品のコースで4,950円(ともに別途サービス料10%)。【ラペ】では年始の1週間限りだったため、冬の食材でしか味わえなかったおでん。これからは、四季折々の素材を駆使したどんなおでんが登場するのか、季節ごとに訪れる楽しみが増えました。
【ラペ】譲りのドリンクペアリングが料理を引き立てます
左から「マム・グラン・コルドン」、「ドメーヌ・フィリップ・シャヴィ ピュリニー・モンラッシェ」、「ドメニコ・クレリコ ネッビオーロ カピズメ・エ」。アルコールペアリングセット7,865円、グラスワイン1,210円~
ペアリングに定評のある【ラペ】同様、【平ちゃん】でもアルコールとノンアルコールでペアリングを提案していただけます。シャンパーニュをはじめ、ワインはフランスに限らずイタリア、アメリカ、ニュージーランドなどのものも取り揃えています。もちろん、おでんに合うこと間違いなしの日本酒もあり。料理に合わせて、支配人の平田路也さんがセレクトしてくれます。
ワイングラスでいただくノンアルコールドリンクは、お酒のような高揚感が楽しめる
ノンアルコールドリンクは、創意工夫が楽しいものばかり。例えば、サラダには有機ミントをブレンドした緑茶を。瑞々しい野菜に清涼感あるドリンクがぴったりです。春巻きにはクランベリージュースにレモンとミントのフレーバーを効かせた一杯。豚肉とベリーの甘酸っぱさが好相性で、揚げ物には嬉しい爽やかな飲み口です。
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ノンアルコールペアリングセットは4,840円
アルコールペアリングセット(全6種類)とノンアルコールペアリングセット(全5種類)の他、ビールやハイボールなども含めて単品でオーダーできるので、自分のペースの合わせて飲み進めることができます。
次の世代へ、次の時代へ、繋げたいという思いを込めて
様々な人が"平"を書き寄せて完成したアート作品がメインフロアを飾っている
カウンター席を構えたメインフロアの壁面には、"平"の字で円を描いたアートが飾られています。一文字ずつ、生産者さんやお客さん、松本さんはじめスタッフの皆さんなどが書いたもの。食材を手掛けて、料理に仕立て、レストランで味わうまでの繋がりを通して、平和への願いを表した作品となっています。
左から、【ラペ】オーナーシェフの松本一平さん、【平ちゃん】シェフの根内大和さん
【平ちゃん】に込められているのは、松本さんが大切にしている"繋がり"への思い。1つは、次の世代へ活躍の場を繋げること。【平ちゃん】の厨房を取り仕切るのは、1990年生まれという若きシェフ、根内大和さん。【ラペ】で「おでん屋 平ちゃん」が実現したのも和食経験を有する根内さんの腕があってこそ。自身も30歳でシェフに就いたという松本さん、次世代が夢を持てるような環境をつくりたいと【平ちゃん】は根内シェフを中心とした若いスタッフに任せる体制にしたそうです。若手メインだからこそ【ラペ】にはないオープンキッチンにして、活気あふれる空間にしたのもこだわりでした。
松本さん曰く「賄いで作ってくれた和食がおいしくて、彼ならば」と腕を見込まれた根内さん
もう1つは、次の時代へ食資源を繋げること。【平ちゃん】はサスティナブルシーフードのトレーサビリティを確保するためのCoC認証を取得。適切に獲られた魚介、未利用魚などを活用して、限りある水産資源を守っていくよう取り組んでいます。またスタッフ一同で生産者さんのもとへ足を運ぶことも積極的に。生産者さんの思いを汲み、食材の大切さを実感するからこそ、ロスのない調理に努め、さらにそれを食べ手に伝えることができるはず、と松本さん。
松本さんの原点【おでん割烹 平ちゃん】に【ラペ】のエッセンスを加え、さらに季節を感じるおでんへと魅力を広げた【平ちゃん】。ほっとするだしをベースに、選りすぐりの素材と楽しい発想で仕上げた、新しいおでんに出会えます。
撮影/今井 裕治 取材・文/首藤 奈穂(フリーライター)
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