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更新日:2022.03.10食トレンド

料理人からも人気。蕎麦から一品料理まで、工夫と個性が光る新世代蕎麦割烹|田原町【浅草 ひら山】

名店として名高い両国の【ほそ川】で修業を積んだのち、【銀座小十】で蕎麦を打ち、その後は独立に向けて料理の幅を広げるべく割烹などで仕事をする傍ら、納得のいく物件を探し、店造りをしていた平山周氏が2021年11月にオープンさせました。「ゆったりできる雰囲気と驚きのある蕎麦、料理を愉しんでもらえたら」と話す平山氏。さっそくお店に伺ってみました。

浅草ひら山のせいろ蕎麦

「人と同じではつまらない。自分の頭で考える」が信条

子どもの頃からモノ作りや料理に興味があったという平山さん。研究気質もあり、当時からレシピ通りというよりも、あれこれ試作しながら自分の味を生み出していくのが好きだったそうです。高校時代から飲食店でアルバイトをして、料理もよく作っていた平山さんですが、建築にも興味があり進路を迷うなか、人と同じではなく、自分なりの何かを探すために海外も見てみたいとNYへ渡りました。

「滞在中に蕎麦店でアルバイトをした時、蕎麦打ちを見て日本の食文化ってカッコいいと感じ、帰国したら蕎麦屋さんに弟子入りしようと決心したんです」と平山さん。

    浅草ひら山の平山シェフ

    「一度海外に出ることで、日本の食文化の格好良さに気がつくことができた」と平山さん

帰国後、都内の蕎麦店を食べ歩き、「こういう蕎麦を打ってみたい」と思ったのが、両国の【ほそ川】でした。「世間の評判などまったく関係なく、自分の好みだけで決めたのですが、空間はもちろん、師匠が打つ美しく繊細でありながらも力強い蕎麦に感動し、弟子入りさせてもらいました」。

師匠である細川貴志さんは、「見て学べ」タイプ。自分の頭で考える、ということを信条にしている平山さんにとっては、ひとつ一つの手間に対して「なぜそうするのか」を考え、自分で答えを見つけていく良い機会になったと言います。

    浅草ひら山のせいろ

    コシが強く、エッジもキリッと立った、喉越しの良い『せいろ』900円

その後、【銀座小十】で蕎麦打ちをしながら日本料理の研鑽を積み、NY店でも働いた平山さん。帰国後は独立も視野に、一品料理も充実させたいと割烹料理店などでも経験を積み、日本料理の知識や技術を幅広く吸収しました。

オープンする半年前には【ほそ川】にも手伝いに行き総仕上げをしてもらったそうです。「この時ばかりは、見て覚えろではなく、細かいところまでしっかり教えてくださいました」

慣れ親しんだ東京の下町エリアで、ゆったりできる蕎麦屋をやりたい

開業の5年ほど前から物件探しを始めていた平山さん。慣れ親しんだ下町エリア、地下鉄田原町の駅近ながらもお寺が集まる閑静なエリアでここぞと思う一軒家と出会うことができました。

    浅草ひら山の外観

    植栽まで気を配られた情緒ある外観

「僕は師匠の店の雰囲気が大好きだったので、同じ設計士に頼んで、壁の素材や色、カウンターやテーブルの木やデザイン、前庭の植栽まですべてそれぞれの職人さんたちと打ち合わせをして1から自分で決めさせてもらいました」とこだわりの空間について話す平山さん。

左官、鍛冶師、庭師などそれぞれの専門家に相談しながら理想のスタイルを実現してもらったそうです。

    浅草ひら山の内観

    1軒家を改装。2階は個室として利用することができる

お客様の多様なスタイルに対応できるよう、せいろ、かけの定番だけでなく、季節の蕎麦も2、3品用意されています。また、天ぷらや一品料理も充実。

    浅草ひら山の『あん肝煮』

    蕎麦つゆで煮て優しい食感、味わいに仕上げている『あん肝煮』1,300円

しかも『あん肝煮』『穴子煮こごり』などお品書きは一見普通ですが、食べてみるとひとつ一つ工夫があり、他では味わえない美味しさに驚かされるのです。

    浅草ひら山の『穴子煮こごり』

    煮穴子の煮汁だけでなく、身を三層に重ねた豪華な『穴子煮こごり』)500円

父親の故郷・石川県の食材をテーマにここならではのメニューを考案

お品書きには、【ほそ川】の時に作っていた煮穴子や牡蠣蕎麦などもありますが、「自分ならではの思い入れのある食材も使っていきたい」と、父親の故郷であり、自身も何度も訪れたことのある石川県の食材にもフォーカスしています。

「ブランドだから選ぶのではなく、僕自身が美味しいとか、生産者の姿勢に感動したものだからこそ生み出せる味を大切にしたいと思っています。なので、蕎麦はもちろん、野菜、魚介など、もっともっと産地、生産者を訪ねて知識と経験を増やしていきたいですね」と意欲的です。

    浅草ひら山の『白海老のかき揚げ』

    『白海老のかき揚げ』 髭や尾の先など口の中で当たると食感を損ねてしまうからと、一尾一尾切って下処理してから揚げている。1,200円

食材の選び方にもこだわりがある平山さんですが、「どうやったらもっと美味しくできるか」ということも常に考えています。富山湾の春の風物詩として人気の『白海老のかき揚げ』は、ねっとりとした甘い身や殻の香ばしさを堪能できるよう、なんと一尾一尾尖った部分を切っているそうです。

また、『白魚天のせそば』は、辛味大根だけでなく、赤紫蘇の梅塩味をアクセントにすることで、辛さだけでなく紫蘇の甘く爽やかな風味が白魚のやわらかく繊細な質感と身ぴったり。いずれも季節限定の人気メニューになるに違いありません。

    浅草ひら山の『白魚のぶっかけ蕎麦』

    白魚の天ぷらと赤紫蘇の風味が好相性を見せる『白魚天のせそば』1,800円

蕎麦は、カウンター奥に据えられた電動の石臼で自家製粉にし、つなぎは使わず十割で打っています。コシと喉越しの良さを出すために、力を込めて練りこんでいるとのことで、見た目からにきりっとエッジの効いた美しい麺は、喉の通りも抜群に綺麗です。

一品料理は、おひたし、和え物、煮物、揚げ物、玉子焼きなどなど美味しい蕎麦前が揃っているだけに、日本酒と共にゆっくり飲みたくなるのは必至。

    浅草ひら山の日本酒

    石川県のお酒をはじめ日本酒好きのツボを押さえたセレクト

「料理もお酒も増やすと大変になるよ」と師匠である細川さんにアドバイスされていたとそうですが、常連客が増えてくると「いつも同じでは申し訳ないと思ったり、これも食べてほしいなど色々作りたくなったり。気持ちが抑えきれなくて」とメニューは増加傾向。

「何度も試作を重ねた新メニューです」と『白魚天のせそば』を考えた過程を楽しそうに話す平山さんの表情を見ていると、探究心の強さだけでなく、お客様に喜んでもらいたいというサービス精神に溢れた方なのだと実感。

居心地が良すぎてあまりに長居されても大変なのでは?と心配になりますが「いいんです。僕も注文が集中するとお待たせしてしまうこともありますが、ゆっくり愉しんでもらえたら嬉しい」と平山さん。料理人のコミュニティでも評判になっているだけに、今後目が離せないお店になりそうです。

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この記事を作った人

撮影/中込涼 取材/藤田実子(フリーライター)

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