極上のカジュアルでもてなす、料理人とゲストが暖を取るような距離感が魅力のフランス料理店|池ノ上【DAN(ダン)】
【メゾン ポール・ボキューズ】や【レストランひらまつ 広尾】をはじめ、ひらまつの系列店で研鑽を積んだ髙田有基氏が、2023年10月に【DAN】を独立開業しました。「暖・団・段」というコンセプトに繋がる店名で、「暖」を取るような距離感で、肩肘張らずに「団」欒でき、共に「段」を一つずつ上がっていくような想いが込められています。前職【L’AS】で3年半以上共に働いてきた杉山徹氏とのコンビネーションも見事。8席のD字型カウンターで繰り広げられるディナーは、お腹も心もあたたまります。
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わざわざ訪れる、という特別感ある立地
妥協なきソースを使った秀逸なフランス料理
ゲストとの距離の近さを大切にもてなす
わざわざ訪れる、という特別感ある立地
「淡島」の交差点からすぐのビルの1階にある【DAN】
昨秋誕生したフランス料理店【DAN】が店を構えるのは、世田谷区の淡島通りと梅ヶ丘通りが交差する場所。最寄り駅の池ノ上から徒歩で約10分、下北沢、三軒茶屋、池尻大橋の3つの駅のおおよそ中心に位置します。公共交通機関で近くまで行く場合、渋谷からのバスが便利です。周囲には飲食店も少なく、わざわざ訪れる立地は到着までに期待が高まります。
控えめな看板を目印に、扉を開けてください
レストランを構える場所は、決して便利な場所ではありませんが、オーナーシェフの髙田氏はこう語ります。「自分にとっては馴染のあるエリアだったのですが、あえて都心から離れた落ち着いた場所を選びました。駅からのアクセスは不便ですが、地域に根付いたお店になればという考えがありましたので、迷いなくこの物件を決めました」。
カウンターには季節の花が飾られています
扉を開けると、小さな店内が広がります。カウンターが半円のD型に8席並び、そのすぐ内側には厨房があるというコンパクトな造り。どの席からも、シェフたちが鮮やかに調理する様子を楽しむことができます。白を基調にした内装デザインですが、壁や天井など、わずかな赤色を混ぜた白なので、自然とあたたかみを感じる空間です。
妥協なきソースを使った秀逸なフランス料理
色彩の優美さも印象的な『富士山サーモン 金柑』
料理は1ヶ月半ごとに替わるおまかせコース1本で、アミューズ、冷前菜、温前菜、リゾット、魚料理、肉料理、デザート、フィナンシェ、食後のお茶という流れです。
富士山サーモンに合わせるのは『ドクター コンスタンティン フランク サーモン ラン』
『富士山サーモン 金柑』は、コース2皿目に登場する冷前菜です。静岡県産の上品な脂が特徴の富士山サーモンを、マリネして炙っています。サーモンの下の人参とオレンジのソース、上に添えているのは金柑のソースとスライス、ラペのように仕立てた人参。サワークリームやアルドイノというイタリア産のオリーブオイル、エディブルフラワーをトッピングして完成です。柑橘と人参の2種のソースがサーモンの旨みを引き立てています。
食感の良さを存分に感じる『カリフラワー セトワーズ』
温前菜として提供される『カリフラワー セトワーズ』は、シンプルながら後を引く、お酒も進む味わいです。食感のよさを大切にしたカリフラワーは、フライパンで焼き目を付け、オーブンで火入れ。そこに合わせるソースは、南仏の港町セートのイカを使った、トマトの煮込みの郷土料理をソースに仕立てたもの。細かく刻んだイカの歯応えも良く、イベリコベジョータのスライスがアクセントになっています。
髙田氏曰く「若い頃に【レストランひらまつ 広尾】で感動したソースの素晴らしさは、今でも忘れられません。【DAN】はカジュアルなレストランですが、ソースをカジュアルにすることはなく、材料にも技法にも妥協なく作っています」。
柚子胡椒の泡と青さ海苔のチップを添えた『蛤米』
メインディッシュの前に登場する『蛤米』は、国産の白米に玄米を3割混ぜることで、口当たりのいいアルデンテに仕上げたリゾット。旨みたっぷりの蛤のだしと、あおさ海苔の磯の香りをたっぷりとまとったお米が身体に染み渡ります。今回は蛤ですが、これまで蟹や白子を主役にしたものも。チーズを使用せず、和のテイストが漂う軽やかな仕上がりで、ほっと和むような箸休めのような存在です。
『蛤米』の器は、金井春樹氏による笠間焼
「器は、若手の現代作家を主軸にセレクトしています。例えば、『蛤米』の器は笠間焼なのですが、まだ23歳という若さの金井春樹氏の作品です。そういった若手の作家さんを発掘して、【DAN】から広まっていったら嬉しいです」と髙田氏。他に、佐野元春氏やkei condo氏、鷲沢ワシ子氏などの器を使用しています。
オレンジのコンフィチュールを添えた『フィナンシェ』
デザートの後に続く『フィナンシェ』は、共に料理を担当する杉山徹氏によるものです。「少し山型になったシャンティーヌ型で焼き上げているので、表面はカリッと、中はふっくらとした口当たりをお楽しみいただけます。最後の一品まであたたまる料理をお楽しみいただきたいという思いで、提供時間を逆算して、焼きたてで手で持つのが大変なくらい熱々で提供しています」(杉山氏)。
ワインは多彩な国をラインアップ
ワインは、ソムリエの資格を持つ髙田氏が厳選。「高級過ぎる銘柄は避け、フランスのほか、日本、ジョージア、ニューヨーク、ポルトガルなど、面白みのあるものをセレクトしています」。グラスワインやボトルワインでのオーダーの他、ペアリングメニューも用意。シャンパーニュ、ワイン4種で5,900円。プラス800円でデザートワインを付けることもできます。ノンアルコールでは、クロモジやヒノキなどのフレーバーが楽しめる『FOREST SODA:森の香り』がおすすめです。
ゲストとの距離の近さを大切にもてなす
座り心地のいい椅子が心地よい距離感で並びます
「店内の狭さを長所にしたいと考えています」と語る通り、【DAN】はその小さなな空間を活かしたもてなしが特徴です。カウンター席に座ると、料理を仕上げる厨房の台との距離の近さに驚くかもしれません。次々と機敏な動きで料理が完成していく様子を、ライブ感溢れる状況でじっくりと楽しむことができるのもこちらならでは。ひとりで訪れた際にも手持無沙汰になる心配もありません。
オーナーシェフの髙田氏(左)と共に働くシェフの杉山氏(右)
代官山の【メゾン ポール・ボキューズ】や【レストランひらまつ 広尾】、大阪の【ラ・フェット ひらまつ】など、日本屈指のフランス料理店である、ひらまつの系列店でおよそ10年にわたり腕を磨いた髙田氏。その後、カジュアルなレストランでの経験も積みたいという思いで、表参道の【L’AS(ラス)】で副料理長として3年半勤務しました。その際に出会ったのが杉山氏です。杉山氏は、【L’AS】で6年にわたり研鑽を積みました。そのため、息のぴったりと合ったコンビネーションでおもてなし。料理はふたりで考案しています。
ワインについてもゲストの好みに合わせて丁寧に説明
ゲストと料理人の距離の近さによって、自然と会話が生まれることも【DAN】の醍醐味です。すぐ目の前にシェフがいるので、気軽に話しかけることができます。「お客様との距離感こそ、最も大切にしたいものです。レストランで料理が美味しいことは当然。それ以上にたくさん会話をできたらと考えています。ぜひ一度訪れていただき、この空気感を味わっていただけたら嬉しいです」(髙田氏)。カジュアルで肩肘張らない雰囲気に加え、コースを9,350円に設定したのもこだわったところ。1万円を超えない設定にしたかったといいます。
コースを終え、店を出る時には心も身体も満たされ、あたたかな気持ちに満たされていることでしょう。
撮影/佐藤顕子 取材・文/外川ゆい
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