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更新日:2017.02.27食トレンド 旅グルメ 連載

金沢【高砂】~香箱ガニ(カニ面)のおでん<ヒトサラ編集長の編集後記 第10回 >

イタリアのバールや香港の屋台にも居酒屋感はありますが、やはりこの湯気と人いきれには日本独自のなごみが満ちています。

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北陸、冬の風物詩

 寒くなりました。
 紅葉の金沢を訪れました。ちょうどカニのシーズンと重なってか、かなり混んでいます。
北陸の冬を告げるといわれるカニ猟の解禁が11月6日。
 セリにかけられ、7日には店頭に並びます。派手さからいくと加納ガニといわれるズワイガニがメインでしょうが、そのメスである小ぶりの香箱ガニには、より庶民的で身近な美味しさが詰まっている気がします。

 その香箱ガニを食べようと、仕事を終えてから、予約なしで入れる居酒屋を探しました。それも香箱ガニの初物が食べられそうなところ。
 「金沢なので、ここはおでんでいきましょう」と地元の居酒屋事情に詳しいライターY氏に誘われるまま、香林坊近くの繁華街にある【高砂】まで車を飛ばします。
 【高砂】は地元のみならず、近隣でも有名なおでん中心の居酒屋で、以前訪れたときは何人かの列ができていた記憶があります。この日もあいにく満員でしたが、ちょうど何人かのグループが出ていくところで、われわれはすぐに入ることができました。

金沢おでん

 いつから金沢のおでんが「金沢おでん」を名乗り、名物化したのか知りませんが、確かに金沢にはおでんを扱う居酒屋が多いように思います。その特徴的なおでん種としては、私が知るレベルでも、昔から、バイ貝や車麩、それに今の時期ならギンナンは入っていた記憶があります。
 この時期は、それに香箱ガニが加わるわけです。香箱ガニおでんは、その最も金沢らしい食べ方と言ってもいいのかもしれません。おでんで出てくるのは香箱ガニの殻に、身や内子などを詰めて蒸し、おでんの出汁で煮た高級種で「カニ面」と呼ばれています。
 これでいっぱいやろうという話です。

  • 金沢おでん

  • カニ面

 【高砂】は天井の高い昔ながらの居酒屋で、カウンターと小さなテーブルが少しある懐かしい佇まい。カウンターの向こうでは店のご主人がおでんをつくっています。
とりあえず、おでんをいくつか頼み、ホッピーと熱燗を頼みます。すぐに冷えた体がぽかぽかしてきます。居酒屋の人いきれはすべてを和やかにしてくれます。イタリアのバールや香港の屋台にも居酒屋感はありますが、やはりこの湯気と人いきれには日本独自のなごみが満ちています。

 おでんの出汁はシンプルですが、大根などには味噌が塗られています。
大好物の牛スジはあくまでも柔らかく、ぷにゅぷにゅの歯ごたえと牛と出汁のコラボが後を引きます。バイ貝は歯ごたえはもちろん肝が旨く、しっかりと出汁を吸った車麩をひとたび味わえば、もうこれを鯉に与えようなどという邪気とはおさらばでしょう。

 お酒が進むなかお目当ての香箱ガニが登場します。
 小さな殻にその身がすべて詰め込まれています。手間のかかる一品でしょう。柔らかなおでん出汁をまとって出てくる姿には高貴なオーラを感じてしまいます。
 身もミソも内子も、それぞれがおでん出汁との絶妙な調和をみせ、雑味を感じさせない豊かな味に満ちています。われわれの会話は止まり、それぞれ目の前の一杯に向き合う幸福を味わいました。

居酒屋の底力

 どてやきを頼みます。
 豚バラの串に味噌と黒胡椒がかかっていてなかなか濃厚な旨さです。
それと、メニューでひときわ目立っているというか、級数からして扱いが違うトンカツに目がいきました。居酒屋のトンカツというのもどうも気になるものです。ソースでも味噌でもいけるということでしたが、ここは味噌でいきましょう。
 甘い生姜味噌が、なんともいえない幸せな気分にさせてくれます。かなりお酒も飲みました。外の寒さも気にならないくらい。

 お客がはけ、いつの間にかわれわれだけになってしまいました。もうかんばんのようです。あっと言う間でした。名物カレーおでんなるものも気になりましたが、今回はこれでおしまい。御飯に出汁を入れてもらってシメにしました。

 前回、冬の金沢に来たときには、やはり地元の古い居酒屋【大関】で鮒の洗いをいただきました。鯉の洗いは有名ですが、鮒の洗いはなかなか食べる機会がありませんでしたので、美味しくいただいた覚えがあります。これも寒い時期ならではの風物詩でしょう。

 前回も、今回も、またもや金沢の居酒屋の底力を感じた夜でした。

この記事を作った人

小西克博(ヒトサラ編集長)

北極から南極まで世界を旅してきた編集者、紀行作家。

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