“カクテル人生の一杯目”にぴったりの、ジントニック専門店|【The World Gin&Tonic〔Antonic〕】中目黒
中目黒駅から徒歩9分ほどのところにある【The World Gin&Tonic〔Antonic〕(ザ ワールド ジンアンドトニック アントニック)】は、「ジントニック専門」のバー。置いているお酒はジンのみで、その数なんと110種以上。バーに行ったことがないけれど行ってみたい、これからバーを知りたいという初心者にこそ行ってほしいお店です。
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定番のバーにあるものが“ない”「ジントニック専門」のバー
ジントニックで体験する世界一周の旅
バーという冒険の、“一杯目のお店”でありたい
定番のバーにあるものが“ない”「ジントニック専門」のバー
気軽に入ってもらえるようにと、アパレルのような、カフェのようなイメージでまとめられた店内
“ない”。とにかくないのだ。重厚なドア、薄暗い照明、高級なマホガニーのカウンター、ゆらめく紫煙といった、定番の「バーらしさ」がないのである。
そういった「らしさ」が演出する高級感は僕は好きなのですが、バーの初心者にとっては「何を飲めばいいの?」「どう頼めばいいの?」「高いんじゃ……」なんて思ってしまう要素にもなっていて。結果、バーに行ってはみたいけど……と、二の足を踏んでしまうこともあるかと思います。【Antonic】は初心者にこそ楽しめる場にしたくて、あえて定番のバー「らしさ」をなくしました。
と語るのは、【Antonic】のディレクター、武田光太さんだ。
とにかくジンを試してみてほしいと、気軽に入れるカジュアルな空間にした店内。「カフェのように、1杯のジントニックで歓談なんて使い方も歓迎です」
武田さんが、奥さんでありオーナーの武田留以さんと、マネージャーの宮武祥平さんの3名で手がけた【Antonic】は、道路側は店内がしっかり見えるガラス張りにし開放感・安心感を演出。店内もおよそバーとは思えないポップでカジュアルな空間に仕上げ、価格も税込800円、1000円、1200円という明朗さ。そして何よりこだわったのがお酒で、こちらで提供するのは「ジントニック」のみなのだ。
『ザ ボタニスト』800円。スコットランドの、ウイスキーの産地として有名なアイラ島。そこに自生している22種類の野生のボタニカルを人の手で採取し、BOTANIST=「植物学者」が手がけるジン。繊細なハーブのすっきりとした味わい
『マルフィ コン リモーネ』1000円。イタリア北西部のトリノで造られたジン。イタリア産ジュニパーベリーやアマルフィ産レモン等5種のボタニカルと南西アルプス山脈のモンテ・ヴィーゾ山の湧き水を使用。レモンとジュニパーベリーの香りが心地よい
1種類しかなければ、それを頼むだけ。『何を飲めばいいの?』『どう頼めばいいの?』なんていう不安はありませんよね。ジントニックだけにしたのは、世界でもっとも飲まれているカクテルだからです。日本でもどこのバーにも置いてあるので、バーの初心者が飲むのにピッタリだと思うんです。
と、定番のものが“ない”店だが、こだわりはかなり“ある”。もちろんジントニックにもこだわりが詰まっている。
ジントニックで体験する世界一周の旅
カウンターに並ぶジン。中には希少なものもあり、バー好きの人も唸らせるラインナップだ。“ジャケ飲み”するのも楽しい
バックバーに並ぶのはもちろん、すべてジンだ。向かって左側の上から下にかけて北欧~スペイン、フランスなど欧州のものを。右側上にカナダやアメリカ、下にブラジルやペルーといった南米のもの。日本をはじめアジアのものは右側の中央にと、世界地図を意識して並べている。上から下まで飲めばジントニックで世界一周もできる仕掛けだ。
ノンアルコールのものも含め、北欧から南米まで世界30ヶ国以上、110種類以上のジンを揃えています。
『TENU(テヌ)』1200円。フィンランドの奥深く、北欧最後の原生森の貴重な恵みと清冽な湧水を使い、修道士たちの手により造られている。野薔薇、リンゴンベリーなどの芳醇な香りが時間を追って変化していく、複雑みのあるユニークな味わい
また、どのジンを使ってもレシピは一緒で、ジン20ml・トニックウォーター100mlにしている。
味わいの比較がしやすいことと、完成したジントニックのアルコール度数を7~8%と少しだけ薄めにすることで、酔いすぎることなく楽しめる割合にしています。また香りがふくよかなものの場合はワイングラスを使うなど、ジンによってグラスを変えています。そしてジンを割るトニックウォーターは基本的にはシュウェップスのものですが、フレーバーのあるものなどを数種類用意してあります。
洋酒販売の会社に勤めていただけあって、お酒の知識はかなり豊富で、近隣に限らず都内のバーにも詳しい武田さん
ちなみに店舗、味わいだけでなく、中目黒という場所にもこだわったそうだ。
ジントニックは酸味、苦味、少しの甘みなど味の構成がレモンサワーと近い。なのでレモンサワーが飲まれている街に出店したかったんです。レモンサワーとジントニックのハシゴ酒も楽しそうでしょ。
お店のInstagramのメニューアカウントでは、置いているジンの丁寧な説明も。それを読んで注文するのも面白い
さて、僕はバー初心者というわけではないのだが、ジントニック専門のバーで飲んだこともなければ、ここまでこだわった1杯を飲んだこともない。
【Antonic】では、好みを伝えたり、“ジャケ買い”でジンを選んだり、あとはお店のInstagramにジンの紹介がされているので、それを見ながら注文するシステムだ。
でも、せっかくなのだから、おまかせで1杯を作ってもらうことに。そして待つこと数分。薄紫色した1杯が目の前に現れた。
『エンプレス 1908』1000円。カナダの老舗ホテル「エンプレス・ホテル」のアフターヌーンティーがモチーフのジン。トニックウォーターを注ぐとバタフライピーの花から抽出された鮮やかなインディゴブルーが美しい紫色へと魔法のように変化する
こんな色のジントニックがあるなんて! ちなみに僕が着ていたブルーの服からイメージしたものだそうだ。グラスを口元に運ぶと、柑橘の香りがふわりと漂う。口に含めば、ほのかな甘みと酸味。アルコール度数も穏やかで、これは飲みやすい。旨い!
カナダの『エンプレス1908』というジンを使ったものです。ジンの色はバタフライピーという花由来のインディゴブルーなんですが、ジントニックにすることで酸と結びつき、薄い紫に変わるんですよ。
グラスには、多くの店のようにスライスレモン(あるいはライム)ではなく、ドライグレープフルーツが添えてある。
ここで出すジントニックは、フレッシュなフルーツではなく、ジンに対する味の影響が少ない自家製のドライフルーツを使っています。この『エンプレス1908』にはグレープフルーツの皮もボタニカルとして使われているので、ドライグレープフルーツを合わせました。
味や名前を覚えるのは難しいが、青から紫、グレープフルーツ、というキーワードさえ覚えておけば、ジンの名前を忘れてしまっても、次回また注文できる気がする。
一つひとつの味を細かく説明するよりも、ジンそのものが持つ物語も楽しんでほしいので、歴史や背景、作られ方を伝えることで、ジンそのものに興味を持ってもらえればうれしいですね。
バーという冒険の、“一杯目のお店”でありたい
左から、オーナーの武田留以さん、ディレクターの武田光太さん、マネージャーの宮武祥平さん
店には武田さんだけでなく、オーナーの武田留以さん、マネージャーの宮武祥平さんと3人が立つ。みんなジンの物語が語れるうえ、「失恋した時に飲むジントニックをください」「飲んでいるとカッコいいと思われるものを作って」なんて少々無茶なリクエストにも笑顔で対応してくれる(このリクエストに何が出されるかは、行ってからのお楽しみ)。そこから生まれる会話も楽しんでもらいたいという思いがあるからだ。
『ネマ』1000円。カクテルバーNemanjaの北條氏による日本初のノンアルコールジン。長野県の無農薬栽培のバラ2種、ジュニパーベリー、ラベンダー、スパイス、八ヶ岳山麓の湧水を使用。ノンアルコールとは思えないほど重厚で華やか
ここでジントニックを飲むことで、まずはジンに。それから違うお酒にも少しずつ興味を持ってもらえればと思っています。【Antonic】にはジントニックしかありませんから、違うお酒が飲んでみたいというお客様には、近くの素敵なバーを紹介するようにもしています。
最終的には、美味しいお酒だけが増えるのではなく、バーに足を運び“お酒を楽しむ人々”が増えてほしい。その冒険の第1歩を踏み出すための店でありたいのだと武田さんは語る。
従来のバーには“ない”ものが多いが、熱き想いはどこよりも“ある”。中目黒にできたばかりの新名所。早くも名店の予感がする。
【The World Gin&Tonic〔Antonic〕】
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電話:03-6303-1729
住所:東京都目黒区東山1-9-13
アクセス:中目黒駅 徒歩9分店舗詳細はこちら >
撮影/佐藤顕子、取材・文/武内 しんじ(フリーライター)、構成/関口 潤(ヒトサラ編集部)
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