スペインの伝統×日本の食材で表現する最新モダンスパニッシュ |清澄白河【eman】
独自のスタイルを持つ飲食店が多い、東東京エリア。隅田川の東岸・清澄白河は、昔ながらの下町情緒を湛えつつも話題のレストランが続々と登場して、グルメスポットとして常に注目されています。そんな清澄白河に、一軒家のスパニッシュレストランが誕生しました。名店出身のシェフ・小林悟さんとマネージャー・原薗理志さん、2人で構えた【eman】。2021年12月23日にオープンしたこちらでは、伝統と革新が織りなす料理が味わえます。
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古き良き郷土料理を土台に、日本の素材を使用したスパニッシュ
元金庫のセラーに揃えたワインで、ペアリングを楽しむ
伝統×革新を体感できる、築60年超の建物をリノベーション
古き良き郷土料理を土台に、
日本の素材を使用したスパニッシュ
オープンキッチンを囲むカウンター。内装を手掛けたのは建築家・佐野文彦さん
清澄白河駅からわずか徒歩1分、駅近にありがちな喧騒とは無縁な、ごく日常の生活が根付く通り沿い。ひときわ時代を感じさせる建物が、2021年12月にオープンした【eman】です。築60年を超えた空間がリノベーションを経て、カウンターメインのスペイン料理店に生まれ変わりました。
店名【eman】はバスク地方の言葉で「与える」という意味。ロゴは清澄白河在住のデザイナーが手掛けたもの
【eman】を切り盛りするのは、シェフ・小林悟さんとマネージャー・原薗理志さん。銀座の人気店【アロセリア ラ パンサ】の開業時から活躍した2人が独立して、「古き良きものを大切に 新しきものを創造する」をテーマにした新店を構えました。
小林さんがつくり上げるメニューは、スペインの郷土料理を土台に据えながら、日本の季節食材を主役にしたもの。旬素材を生かした繊細さ、どっしりと骨太な味わい、新しくも楽しい仕掛けなど、さまざまな料理をコースで展開しています。
小林さんの真骨頂、日本で味わうモダンスパニッシュを堪能できる前菜『帆立/チョリソ』
塩漬け大葉に包まれた一品にナイフを入れると、中には帆立、イベリコ豚チョリソのペースト、牛のフレッシュチーズが。さっと炙った帆立は甘さが引き出され、チョリソの力強い旨み、チーズのまろやかなコク、大葉の香りが一体となった重層的な味わいが楽しめます。
カタルーニャ地方によく見られる〝マル・イ・モンターニャ=海と山の食材の組み合わせ〟を取り入れつつ、モダンに仕上げています。
2か月ごとに替わるコースの中で、定番料理として常に楽しめる
バスク地方のアサリご飯「アロス・コン・アルメハス」を【eman】流に仕立て、地元・深川地区を発祥とする郷土料理の名を付けた『深川めし/バスク』。アサリ・にんにく・パセリという要素はスパニッシュのまま、アサリは殻付きではなくむき身を使うなど、深川めし風にアレンジしています。アルデンテに炊き上げた米には、アサリと鯛だしの旨みが染み渡り、ワインを誘うこと間違いなし。
清澄白河から発信するスペイン料理。小林さんの矜持が込められた、【eman】のシグネチャーディッシュでもあります。
スペイン郷土の味を洗練させた『平目/アリオリ』は 、旬の菜の花を添えて
この日の魚料理は、ヒラメに飴色に火入れした玉ねぎ、アリオリソースを重ねたオーブン焼き。本場スペインではタラを使う伝統料理をベースにしているそうです。にんにくの効いたアリオリ、トマトのフレッシュなソースが親しみやすくも、ヒラメの繊細な味わいが生きています。
米料理が評判の【アロセリア ラ パンサ】出身ゆえ、パエリアの美味しさも抜群
鍋ごとお目見えしたのは、ホタルイカを散りばめたイカ墨のパエリア。そこから一皿ごとに取り分け、木の芽をあしらい、アリオリソースを添えて供されます。刻んだホタルイカと葉にんにくを炊き込んであり、濃厚な旨みが口いっぱいに広がります。力強い味わいの中に、木の芽の香りが心地よいアクセント。
料理は10品8,800円、12品11,000円のディナーコースより。ランチは土日祝のみ、8品5,500円のコース
元金庫のセラーに揃えたワインで、
ペアリングを楽しむ
元金庫だったスペースは、温度と湿度を整えてワインセラーに
店奥にある重厚な扉の中、元は金庫だったという空間はワインセラーになっています。ここにはスペイン産はもちろんのこと、日本の食材に合うものとして国産ワインも並んでいます。グラスやボトルでオーダーしても楽しめますが、新たな一杯に出会えるペアリングがおすすめです。
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デラウェアを皮ごと使用したオレンジワイン【フジマル醸造所】の「Tabletop 橙色」は、あさりの旨みが凝縮したご飯にぴったり。『深川めし/バスク』に、同じ清澄白河にあるワイナリーのものを合わせた粋なペアリング。
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パエリアにはイカ墨と相性のよいロゼを。ホタルイカによって増した複雑味に負けないように、スペインのワイン産地・リオハの、樽熟成させた「Alma Tobia Unico」をセレクト。
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お酒が好きならば、デザートとともにグラスを傾ける楽しみも
皮ごとローストして甘みを出した和歌山産みかんのアイスクリーム、スペイン蜂蜜のジュレ、ヨーグルトソースという一皿にはアイスシードルを。冷凍濃縮させたりんご果汁のお酒は香り高く、糖度が高めながらもクリアな味わい。さっぱりとした食後のデザートによく合います。
爽やかな酸味あるチャコリは、始めの一杯にもおすすめ
目で楽しむなら、バスク地方の白ワイン「チャコリ」をどうぞ。高いところから注ぐ技法〝エスカンシア〟でサーブされます。コース序盤のタパスをつまみつつ、チャコリをコップでいただけば、現地のバルでお馴染みのスタイルに。
300本ほどあるワインはグラス850円~、ボトル6,000円~
伝統×革新を体感できる、
築60年超の建物をリノベーション
店内を見通す大きな窓の他には、あえて手を入れなかった外観
清澄白河に縁があり、独立するならこの街と決めていたという小林さんと原薗さん。近年着目されている清澄白河の魅力といえば、東京都現代美術館を筆頭とするアートギャラリー、サードウェーブコーヒーの一大拠点、そして個性が際立つショップやレストラン。そんな新しさがある一方、水辺の街並みには、江戸の漁師町そして材木問屋で栄えた伝統が息づき、長屋形式の建物も残る下町風情があふれています。
木組み天井とモダンな照明。古民家リノベーションならではのコントラストが面白い
そこで2人が出会ったのは、印刷会社の事務所兼オーナーの住居だったという物件。60年以上の歳月を経た柱や梁、窓枠などはそのまま、オープンキッチンを囲むカウンターとテーブルからなるレストランとして生まれ変わりました。
前店からのコンビは息もぴったり。<左>小林悟シェフ<右>原薗理志マネージャー
新旧が融合する土地と空間は、【eman】が表現する料理とシンクロしています。古さの中に新しさを見出して楽しみ、今を支える確かな歴史に思いを馳せて。「古き良きものを大切に 新しきものを創造する」というコンセプトを体感できるひとときになるはず。
撮影/佐藤顕子 取材・文/首藤奈穂(フリーライター)
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