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更新日:2017.06.19グルメラボ

これぞ浪速グルメ from「ヒトサラSpecial」

旨いは当たり前。さらに上いく、楽しくて記憶に残る名店ばかり。そんな浪速の名店をご紹介します。

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【常夜燈 豊崎本家】

何料理か? という解は、歴史と評価が決めていく

 いわゆる「おでん」のことを関西では「かんとだき(関東炊き)」と、特に年配の世代はそう呼ぶ。これは今で言うB級グルメの感覚で、駄菓子屋や海の家で出される料理というイメージだ。

    海老しんじょうのようなえび天も、鱧のすり身が濃いす巻きも、練り物ひとつから全てイチからの手仕込み

    おでんダシで炊いたご飯にさらにダシをかけてサラサラいける『ちゃめし』。海苔とゴマをたっぷりで

 昭和20年11月、【常夜燈】の創業は、終戦後わずか4カ月後のことだった。創業者である先代に、消沈した界隈の雰囲気を「どうにかできないか?」と、ご近所のお初天神の宮司から相談があったという。庭師だった先代のコネクションを駆使し、市場の関係者などを集めて境内で始めた店がそのルーツ。自身も奥様お手製の手巻き寿司を携えて出店に立った。物資のない頃ではあったが、なんとかかき集めて振る舞った巻き寿司は大好評だったそうだ。後におでんも品書きに加わり、勤めていた電電公社では「あんまり稼ぎもよぉなかったから」と、二代目の池永伸氏も店に立ち始め、今に至るわけだが、鯛の頭や羅臼昆布に白味噌を加えた贅沢なダシ、その上に並べる丁寧に仕込んだ具材はいつしかB級グルメの域を完全に超えていく。

  • 「ダシがしゅんでる(染みている)なぁ」と実感できる具材の代表が、丹後の農家から仕入れる大根などの野菜

  • 今では高級食材となった明石の蛸が安定して仕入れられるのも、長く大阪の味を支えてきた信頼の証だ

「かんとだきではありません、かんさいだき(関西煮)です」
 この言葉を贈ったのは、逸品ぞろいの味を知った昭和を代表する名優、森繁久彌氏だった。他にもご贔屓筋には大物の美食家や健啖家が多い。
 庶民の味ではあるが、唯一無二の特別な味。長い歴史と、ともに向き合い、寄り添ってきた客筋が店の格を決めていく。そのお手本のような一軒である。

 

【浪速割烹 喜川】

“始末の心”を大切に、割烹の神髄を伝える老舗

「うちは、京料理とよく比較されますが、京都が利尻昆布をよく使うのに対して、浪速は真昆布を使います。文化や料理の違いはいろいろありますが、実は大切なのはそこではないんやと思います」と浪速割烹を標榜する名店【喜川】の主人・上野修氏は教えてくれる。

    『煮物 鱧出汁コンソメ風 焼目鱧・湯葉包み車海老 あしらいディル』。夏にかけて関西で人気の鱧を使った一品

 大切なのは、始末の心。食材ひとつをとっても、最初から最後まで大切にする。鯛であれば、身を焼き、かぶとはあら炊き、骨は出汁に、ウロコは唐揚げ。旬の味を余すところ無く楽しませる。それこそが開業より50年、多くの人に支持されてきた【喜川】で受け継がれる精神なのだ。結果、それはとても合理的であり、さまざまな味で多くの美食家の舌を満足させてきた。

    『創菜 千枚鮑の生姜あんと肝だれ 野生くれそんのチョイソテー 白髪葱 輪切りラディッシュ』

 さらに2代目・上野氏はフレンチ出身という自らのルーツを活かし、浪速割烹に新たな息吹を加える。お造りでは、赤貝や明石のタコにバジル酢味噌を、マコガレイには、香草ドレッシングを添える。鱧の煮物であれば、ハーブのディルをさりげなく飾る。そのひと工夫が日本酒を呼び、さらにはワインとの調和も生む。

  • 今年で50年目の節目を迎える浪速割烹の老舗。風情ある法善寺横丁の一角にのれんを構える

  • 「地に足の着いた大阪らしい味を追求しています。浪速の旬を楽しんでください」と主人の上野修氏

 「何が一番旨いか、それが一番大切。技法や食材は和食だけにこだわる必要はないと思ってます」
 天下の台所・大阪を代表する、浪速割烹の老舗。今なお受け継がれる“始末の心”はさらなる進化を遂げて、人々の胃袋を満たし続けている。

 

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