更新日:2021.09.30食トレンド
ワインのスペシャリストに聞く! ボジョレーヌーヴォーの魅力と楽しみ方②|石塚裕介さん【AU 14 FEVRIER】
毎年、秋の収穫期に解禁され、日本でもお祭りのように盛り上がるボジョレーヌーヴォー。2021年は11月18日(木)が解禁日です! そんなボジョレーヌーヴォーの魅力やおすすめの楽しみ方を、名店のソムリエやワインのインフルエンサーの方々にうかがいました。第二回目の今回は、フランス・サンタムール村の2つ星レストラン【AU 14 FEVRIER Saint-Amour Bellevue(オーキャトーズフェヴリエ サンタムール・ベルヴュ)】でソムリエ兼支配人を務める、石塚裕介さんです。
フランス・ボジョレー地方在住、ボジョレーの文化やワインなど、奥深い魅力を誰よりも知るのが石塚裕介さんだ。サンタムール村の2つ星レストラン【AU 14 FEVRIER Saint-Amour Bellevue】の支配人兼ソムリエとして、ボジョレーの生産者とともに、その魅力を世界に発信している。今回、オンラインでボジョレーヌーヴォ―の楽しさについて語ってくれた。
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ボジョレーヌーヴォーは楽しい“お祭り”!
造り手の情熱がワインに反映
“知れば知るほど楽しい”ボジョレーヌーヴォー
ボジョレーヌーヴォーは楽しい“お祭り”!
ボジョレーをこよなく愛する石塚裕介さん。「ボジョレーはとても美しい土地。いつか、ぜひいらしてください」
「毎年、11月の第3木曜日、ボジョレーヌーヴォーの解禁日が来ると、新酒を祝って村はお祭り騒ぎ(笑)。みんな自分の村のワインを誇りに思っていて、無事収穫が終わったことに感謝して、自然に人が集まってワイワイ騒ぐのが慣例になっています。今年のブドウの出来はよかったとか、天気はこうだったとか、互いに語り合いながら夜通しワインを飲む。翌日はちょっとふらついて大変ですが、これがまた楽しいんです(笑)」と石塚さんは満面の笑顔を見せる。
例年、ボジョレー・ヌーヴォーが解禁になる11月の第3木曜日に「レ・サルメンテル」というイベントが行われる
あまり知られていないが、現地には「パラディ」と呼ばれる発酵途中の果汁もあり、これを飲むのも毎年の楽しみのひとつなのだという。
「ちょっと甘いのですが、造り手によって味わいが違うので、飲んで楽しい。ボジョレーヌーヴォーに使用されるブドウ品種のガメイにはきれいな果実味があるので、この『パラディ』はジューシーに仕上がり、ついつい、みんな飲みすぎてしまうんです(笑)」。
「Beaujolais Nouveaux 2018 Paris」の様子
石塚さんによれば、フランス人は大のお祭り好き。「日本人によく似ている」という。日本では、かつて80年代から90年代にボジョレーヌーヴォーのムーブメントが大きく盛り上がり、それは日本人のお祭り好きな国民性によるところも多いといわれたが、どうやらフランス人にも同じ資質があるようで……。
「フランス人と日本人、季節感を大切にしたり、繊細なものに心惹かれたりといったところが共通していると思います。ヌーヴォーを祝うのも、日本人の新酒を寿ぐという気持ちと共通性があるように感じますね」。
「親しい人とゆっくり楽しむ」が今年のスタイル
毎年楽しみにしている“お祭り”だが、コロナの影響もあり、昨年に続き今年も難しくなるのではと、石塚さんは予測する。
「フランスでは、今、50人以上の人が集まるイベントが禁止されているので、今年は、家で家族やいつも会っている友人とゆったり過ごすことになりそうですね。ゆっくり、静かな時間が過ごせる分、皆でボジョレーヌーヴォーを持ち寄って、造り手の個性の違いを飲み比べてみるのも楽しいと思います」。
大勢で集まることが難しい今は、親しい人とゆっくり味の違いを楽しみたい
ボジョレーヌーヴォーには、村ごとのテロワールの違いは反映されるが、なにより、造り手の個性が明確にわかるのが大きな魅力なのだという。
「ワイン初心者のかたでも、これははっきりとわかります。違いがわかればうれしいし、ワインも楽しくなる。それに、どんな料理とも合うのもいい。親しみやすいので、まずは何も考えず、カジュアルに楽しんでいただきたいと思っています」。
ちなみに、石塚さんのおすすめは和食と合わせること。大手生産者が造る軽やかな味わいのものなら焼き鳥や焼き肉、醤油味の煮物などに。個性的な造り手による味わいがしっかりしたものなら、なんと味噌ラーメンや発酵食品にも合うという。ボジョレーヌーヴォーは、一般的にシャルキュトリなど気軽に合わせて楽しまれることが多いが、梅の香りを持っていたり、醤油味と親和性があったりと、実は、和食にも優しく寄り添ってくれるおおらかさがあるのだという。
「和食とのマリアージュは、その意外性が楽しい。生姜を使った料理や肉じゃがなどにも合うので、ぜひ試してみてください」。
造り手の情熱がワインに反映
レニエ・デュレットのぶどう畑 ©Etienne Ramousse
近年、多くのワイン愛好家からも再び注目されるようになったボジョレーヌーヴォーだが、その背景には著しい品質の向上があるという。かつては、「水っぽいワイン」と評されることもあったが、それは「今は昔」の話。世界的にもボジョレーヌーヴォーの評価は上がり、ブルゴーニュの有名な生産者たちも、ボジョレーヌーヴォー造りに参画するという現象が多く起きているのだ。
「生産者たちは『何より品質第一』と、情熱を持ってワイン造りに取り組んでいます。実は、ボジョレーヌーヴォーの輸出量が10年くらい前から年々減少し、最盛期の半分になっています。そこで生産者たちは『本当にいいものを造らないと売れない』と気づいたのですね。特に若い生産者たちの、畑での取り組みには目を見張るものがあります。かつては、畑の前を通ると農薬の匂いがする造り手もいたのですが、今は、どこの畑の前を通っても、農薬の匂いは全くしなくなりました。ボジョレー全体がリュット・レゾネ(減農薬栽培)やサステイナブル(環境の持続可能な農業)の方向へとシフトしているのですね。元々、ボジョレーはポテンシャルが大きい土地ですから、今後、ますますおいしいワインができると期待しています」。
ボジョレーのブドウ畑 ©Etienne Ramousse
“知れば知るほど楽しい”ボジョレーヌーヴォー
石塚さん自身“ボジョレー愛”が強いが、その理由は、「知れば知るほど、ボジョレーは面白いから」なのだという。
例えば、その造り方。ボジョレーヌーヴォーは※「マセラシオン・カルボニック」という醸造法で造られるが、これを通常のステンレスタンクでなく、樽やクヴェヴリ(土器)などで発酵するという実験的な醸造も行われるようになってきた。また、ブルゴーニュのワイン造りの手法を取り入れた、奥行きと上品さのあるヌーヴォーも増えている。その多様性も魅力のひとつだと、石塚さんは言う。
※マセラシオン・カルボニック製法
ブドウを房のままステンレスタンクに入れ、ブドウ自体の重みで果汁が流れ出て発酵が始まる。発酵が始まると、タンク内には炭酸ガス(二酸化炭素)が発生し、アルコールを生成。ここで、果皮から鮮やかな色の果汁が得られる。その後、ブドウを破砕し、果汁のみで発酵させるとフレッシュ感のあるワインが出来上がる。
モンムラ=サン=ソルランでの醸造 ©Etienne Ramousse
ちなみに、自身が住んでいるサンタムールは、力強くエレガントなワインが生まれる土地だが、“聖なる愛”という名前でバレンタインの時期などに人気が高まるという。「イメージがいいので、名前に恵まれましたね(笑)」。
最後に、ボジョレーヌーヴォーをこれから楽しむ方々へ、こんなアドバイスをしてくれた。
「初めて飲むなら、『ジョルジュ・デュブッフ』など、大手生産者のスタンダードなものがおすすめです。バランスがよく飲みやすいのがいいですね。ちょっと上級者なら、もう少し果実味が強いタイプがよいでしょう。ボジョレーヌーヴォーは“肩が凝らないワイン”。親しい人と一緒にカジュアルに楽しんでいただきたいです。また、同じ銘柄を2本買って、1年寝かせて、味の違いを楽しむのもいいと思います。ボジョレーヌーヴォーは“知れば知るほど楽しいワイン”です。ぜひ、自分なりの楽しみを見つけてください!」
プロフィール:石塚裕介さん
1976年北海道生まれ。大学進学のために上京、アルバイト先で料理とワインのすばらしさに開眼する。【アラジン】(東京・広尾)、【コート・ドール】(北海道・札幌)を経て、2002年に渡仏。リヨンのワインショップ【アンティック ワイン】、ワインバー【ジョルジュ ファイブ】に勤務後、2013年10月より【AU 14 FEVRIER Saint-Amour Bellevue】のオープンに伴い、ボジョレー・サンタムールに移住。ボジョレーの魅力を多くの人々に伝えている。
【AU 14 FEVRIER Saint-Amour Bellevue】
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電話:+33-3-85-37-11-45
住所:Le Plâtre Durand 71570 Saint-Amour-Bellevue
ボジョレーヌーヴォーの魅力と楽しみ方
取材・文/安齋喜美子
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