<タイ・ローカルフード紀行VOL.02> イサーン料理の大人気食堂【ジェーゴーイ】
夜空を見上げていただく、タイ東北部の味。ここ【ジェーゴーイ】は日本の居酒屋感覚で楽しめて、料理も絶品の人気店なんです。路上のテーブルでタイ人客に混じり、庶民的な料理に舌鼓を打つ。そんなタイ・ローカルの世界に紛れ込んでみてはどうでしょうか。
バンコク都内を走る高架鉄道、BTSに乗りこみ、ラチャテウィー駅で下車。「バンコクの渋谷」とも呼ばれるサイアム駅からひと駅なのですが、街並みはグッと庶民的になります。住宅街の狭間に夕食の惣菜を売る屋台が立ち並び、井戸端会議に花を咲かせるお母さんたちの輪があり、そこを子供たちやバイクタクシーが縫うように走り回っています。どこか懐かしさを覚える下町の光景。
そんな一角に【ジェーゴーイ】はあります。夕方になると店が開くのですが、同時に会社帰りの人々であっという間に店はいっぱいに。クリーム色のタイルをあしらったレトロな店内はすぐに埋まり、ペッブリー通りに面した歩道にまでテーブルが並んで大盛況となります。
こちらはイサーン(タイ東北部)の料理がおいしいことで知られるお店。タイ料理にもさまざまなジャンルがありますが、とりわけタイ庶民に愛され、全土に広まっている料理なんです。
優しい味わいのハーブ鍋『チムチュム』はイサーン料理の代表的なメニューだ
やはりここはタイの夜らしく、ペッブリー通りの喧騒を眺められる歩道席がいいでしょう。タイの国民的ビールであるビアシン(シンハビール)をまず注文、タイ人を見習ってグラスに氷を入れてやや薄め、夜空に向かって乾杯すれば、旅の疲れもほぐれていきます。
タイではこうした路上のお店が多く、雰囲気がいい。日本ではなかなかできない体験だ
おすすめのつまみは『サイクローク・イサーン』でしょうか。イサーン風のソーセージで、豚肉とハーブ、米を詰めて発酵させており、ほんのり酸っぱくビールに合う味。
ビアシンとタイ風ソーセージは最強の組み合わせ。ビールがどんどん進む
それから『パーク・ペット』、日本人旅行者で頼む人はよっぽどの通でしょう。これ、あひるのくちばしを揚げたものなんです。くちばしのさきっぽをつまんで、ジューシーな頬肉をいただきましょう。くちばし部分もそのままパリパリと骨ごと食べられて、これまたビールのアテにはぴったり。
カリカリでおいしい、あひるのくちばし『パーク・ペット』
夜が更けてくるにしたがって、お客の数は増えていきます。仲間同士わいわいと飲み会を開いているグループもいれば、店の奥ではシブく一人飲みをきめている地元風のおじさんも。また、ここはきわめて大衆的な食堂なのですが、高級車をペッブリー通りに路駐してやってくるハイソ層も珍しくはありません。タイはおいしければ、店のたたずまいなんて関係なくお客が来るのです。
さらに、近隣のおばちゃんたちも次々にやってきて、今夜のおかずをお持ち帰りで注文しています。できたての料理が発泡スチロールのケースにどんどん詰められて、飛ぶように売れていきます。路上に面した厨房はたいへんな忙しさですが、このあたりで必注メニューといきましょう。
手際よく料理をつくりあげていくスタッフのおばちゃん。持ち帰りにも対応しているので大変だ
まずは、これまたあまり日本人には知られていないのですが、ぜひ食べてほしいイサーン料理のひとつ『ヤム・プラードゥック・フー』。ナマズを揚げてほぐして、フレーク状にした料理なんです。これに青マンゴーとエシャロット、ミントを、ナンプラー、唐辛子とあえたサラダをかけて食べるスタイルです。油の乗ったナマズフレークと、さっぱりピリ辛サラダは本当によくマッチします。
ナマズ料理『ヤム・プラードゥック・フー』はサラダをかけて食べる
そしてどのテーブルでもたいてい注文している、イサーン鍋『チムチュム』もいきましょう。これは別名「ハーブ鍋」なんて呼ばれているほどで、レモングラスやタイショウガ、コブミカンの葉など、さまざまなハーブで出汁をとったスープがベースになっているんです。具材は豚や鶏肉、シーフード、それらのミックスから選べますが、いずれにせよこれに生卵を絡めて鍋に投入していくのがタイ人風。そこにたっぷりの空芯菜や白菜、スイートバジルなども入れて、よく煮込んでいきます。
『チムチュム』よくばりセット。すっきりしたハーブの味わいが楽しめます
ハーブの滋味が染み込んだスープは優しく、ほっとする味。野菜とハーブをたくさん摂れるのでとってもヘルシーで、タイ人女子にも人気です。ちなみにこれだけ頼んで料金は500バーツ(約1570円)ほどとリーズナブルなのもうれしいですね。
さんざめく路上のテーブルで、夜空の下で食べるタイ飯は本当にいいもんです。深夜まで営業しているので、夜遅くお腹が減ったときにも使える食堂です。
【Je Goi(ジェーゴーイ)】
電話:+08-1818-3625
住所:362-3 Petchaburi Rd.,
営業時間:17:00~深夜3:00時頃
取材・文/室橋裕和(フリーライター)
タイに10年在住し、現地日本語情報誌を中心に活動。帰国後は雑誌や書籍、ウェブなどの執筆・編集にあたり「アジアのいま」を発信している。タイ料理ではラープ・ペット(アヒル肉とハーブのサラダ)をカオニャオ(もち米)と一緒に食べるのが大好き。
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