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2016.07.30食トレンド 連載

  • ヒトサラSpecial

きょうは土用の丑の日! 名店の鰻を味わって夏を乗り切ろう from 「ヒトサラSpecial」

本来の旬は冬ですが、ビタミン含有量が多く、食せば夏負けしない身体になるといわれる鰻。きょう7月30日は今夏の土用の丑の日です。名店の逸品を味わって、本番を迎える夏を乗り切りましょう。

土用の丑の日は東京の名店で鰻を堪能

注文が入り次第捌く“特注活鰻”の蕩けるような柔らかさが【うなぎ魚政】の真骨頂

 ハラリと解ける柔らかさ。鰻を表現する際によく使われるフレーズだが、ここの鰻は、解ける程度ではない。皮目はパリッと焼かれ、箸を入れるといとも簡単に身が離れ、口に運べば“蕩ける”と表現したくなるほど柔らかい。その極上の食感たるや、上質なスイーツのごとし。やや固めに炊いたご飯とのコントラストがその食感を際立たせ、甘めのタレもまた鰻によく馴染んでいる。これこそ、【魚政】の商標登録「特注活鰻」の真骨頂。下町の名店の実力を如実に物語る名物だ。
 その旨さの秘密といえば、“活け”にこだわった鰻の質にあるといっていい。価格により国産、ブランド鰻として知られる「坂東太郎」、天然の3種に分かれるが、いずれも注文が入り次第、捌き、白焼き、蒸し、本焼きの工程を重ねていく。それゆえ、注文からうな重が運ばれてくるまでは、少なくとも40分はかかる。旨い鰻にありつくためには辛抱の時間だ。
 ただ、そんなひとときにもここではささやかな楽しみがある。それがうな重を注文すると付く「肝わさ」と「骨せんべい」。今まさに炭火の上で焼かれている鰻から取れたものだ。この2品を肴に一献楽しみ、期待に胸を膨らませながらうな重を待つ。やがて運ばれてくる極上の鰻は、そんな期待にしっかりと答えてくれるはずだ。

  • 『うな重』を注文し、程なくすると『肝わさ』と『骨せんべい』が供される。鰻が焼かれるまでの酒の肴にぴったり

  • しっかりとついた焼き目が特徴の『志ら焼』。わさび醤油でも旨いが、特製の肝塩でいただくとより味わい深い

  • 売り切れ次第閉店になることもあるので、夏場や土曜・日曜・祝日などは前もって予約をして訪れるのがベター

  • 注文が入り次第、捌かれる鰻。串打ち、白焼き、蒸してから本焼きに入るため、多少の待ち時間は覚悟したい

 

数々の名職人を輩出する鰻の総本山【入谷鬼子母神門前のだや】

幻の鰻と呼ばれる「共水うなぎ」を使用するうな重の最高峰『きょうすい(大)』。「共水うなぎ」は春夏秋冬の四季を模した池を2年で5回巡らせることで、清流に棲む天然鰻にもっとも近いといわれる身質を実現

 相撲界と同じように、鰻の世界にも部屋という制度がある。親方の元で技術を学んだ調理師が、やがて一人前となって各地の鰻屋に派遣されるのである。野田調理士紹介所は、その“職人部屋”のなかでも随一の名門。明治元年の創業以来、名だたる鰻の名店に職人を派遣し続けてきた。そしてここ【のだや】は、そんな名門の直営店。鰻業界の道しるべとなるべく、家元自らが焼き場に立つことを選んだのだ。
 【のだや】流の真髄は“万遍返し”と呼ばれる焼きの技術。炭の上に乗せた鰻を、職人は一瞬たりとも手を止めることなく返し続ける。炭の火力と火の通りを見極め、全体を均一に。身側は絶対に焦がさず、皮目はしっかりと焼き上げる。そうして焼き上げられた黄金色の鰻の、なんとふくよかなことか。身はとろけるほど柔らかく、しかし皮からはしっかりと香ばしさが感じられる。タレはどちらかというとさっぱり味だが、脂の旨みが全体に行き渡り重層的な深みも備える。食感、風味、旨み、香り、どこをとっても最高峰。まさに家元の面目躍如といった逸品だ。
 店頭に焼き手の名を掲げるのも、妥協なき職人の誇りから。その思いが詰まった素晴らしい技と味に、食通たちは惜しみない賞賛を寄せている。

  • のだや流を象徴する“万遍返し”は、手を休ませる間もなく鰻を返し続け、一切焦がすことなく焼き上げる

  • 湯引きした鰻にクリームチーズと酒盗を合わせる『鰻の酒盗和え』。家元自らが多彩な料理に挑戦した逸品

  • 【のだや】の屋号は50年以上の歴史があるが、表通りに再オープンしたのは2013年。家元が鰻業界を活気づける

  • 1階と離れはテーブル席で、2階はラウンジ風。誰でも入りやすい店にし、鰻の魅力を幅広い世代に伝える

 

一途に磨かれた熟練の技と味に出会える【明神下 神田川支店】

    鰻重、吸い物、香の物、果物が付く『鰻重御定食』。ふわりと舌に伝わる鰻の風味は素材の良さ、手仕事の確かさが感じられる。秘伝のタレのコクも絶妙な味わい。米は茨城県の農家から購入するコシヒカリを使用している

 ふわり、とろりと舌の上に広がる身は程よく脂がのり、濃すぎず深みのあるタレの風味がそこに加わる。実直に伝統を受け継いできた職人の技が息づいた鰻は、江戸時代から人々を虜にしてきた江戸前のひとつ。
 大正7年創業の【明神下 神田川支店】は、鰻問屋出身の初代店主が腕を認められ、江戸時代創業【明神下 神田川本店】から初めて暖簾分けを許された一軒。鰻屋の命とも言えるタレは暖簾分け時に本店から分けて貰ったものだが、その当時から継ぎ足してきたタレは立派な支店の味となっている。「鰻の旨さはご飯と一緒に食べてこそ」と話すのは、三代目の多辺賢一さん。「本店さんより少しまろやか」と評すタレは、鰻と白飯の巧みな繋ぎ役となっている。鰻は流通の安定性から国産養殖ものに限るが、使用するのはシラスウナギの池入れから1年以内に出荷される新仔(しんこ)のみ。絶妙な火入れによる、ふっくりやわらかい鰻を食べさせるのがこちらの信条だ。
 昭和26年築の木造家屋には先代ゆかりの力士の写真などをレイアウト。障子を配した趣ある和室で江戸時代にルーツを持つ鰻の味をじっくりかみ締めたい。

  • 蒸してから焼き上げる『白焼き』。まずはそのまま、次に好みで醤油と山葵で。鰻の大きさによって価格が異なる

  • アテにも最適な『きも焼(二本)』。ヒレ、向こう骨をキモと共に串に打ち込んでからタレで漬け焼きにする

  • ハチマキ姿がよく似合う店主の多辺賢一さん。先代より受け継いだ技を磨き、日々、鰻と真摯に向き合う

  • 戦後に建てられた木造家屋。客室は全4室からなるが、襖を開いて大人数にも対応できる和室を用意している

 

この記事を作った人

ヒトサラ編集部