2018年 グルメトレンドはどこへいく? 業界人・シェフ・グルマンが証言!~前編~
2018年、世間ではどんなお店が、どんな料理が注目されるのか、気になりますよね。そこで、グルメ業界人やシェフ、グルマンなど食の達人たちに聞いてみました。
今年はレストラン業界を巻き込むほどの大きなムーブメントは少なかった一方、「中国料理の新時代」や「ペアリング」、「モダンフレンチ」など、近年、取り上げられたキーワードが成熟。そしてなんと言っても、SNSの普及によって自己表現する場が拡大したことに注目する人が多かった。どんどん加速する飲食店を取り巻くトレンド。これからいったいどこへ向かうのか?
グルメトレンド 2017振り返り&2018予測(前編)
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中国料理の新時代
拡大するSNSの影響力
多発する人気店同士のコラボイベント
大箱レストランの復権の兆し?
店の個性が現れるペアリング
食の達人が2018トレンドを予測①
01 中国料理の新時代
『小鳩 胸肉 台湾香辛料〈馬告〉焼き/腿肉 五香脆皮仕立て』。和の技法を取り入れ、中華との融合した料理
今回のアンケートを実施した結果、〝今年を象徴するレストラン〟として実に半数弱の方から名前が挙がったのが、【茶禅華】だ。近年、様々なスタイルで大きな躍進をしている中国料理。【の弥七】や【銀座 やまの辺】といった店に代表されるように、ボーダレス化が進む中国料理の新時代が来ているのは、去年から続くトレンドの一つ。そこに今年らしいエッセンスが加わり、象徴的な存在として選ばれたのがこちらの店である。
『雉の極上スープ 雲呑添え』。澄んだ味わいの滋味深いスープ
「中華と和の絶妙な融合(山田栄一)」「異ジャンルで修業したという経歴のシェフが、新スタイルの中国料理を創造している(秋山具義)」といった評価を受ける同店は、西麻布【麻布長江】で修業を共にした川田シェフと林オーナーのふたりが、2017年の2月にオープン。〝和魂漢才〟の精神のもと、日本の豊かな食材を最適な技法を使って新たな中国料理を表現している。
【茶禅華】名物ティーペアリング。希少な台湾茶を、淹れ方、提供の仕方にもこだわり、ゲストを楽しませる
また、「お茶というトレンドを取り入れている(尾山淳)」と言われるように、こだわりの中国茶をワインや日本酒などと提案する革新的なミックスペアリングを提案。2017年のキーワードでも挙がった〝ジャンルのボーダレス化〟〝ペアリング〟など、様々な要素を絶妙に取り入れている。また、そのプレゼンテーションも美しく、SNS にアップしたくなるものばかりだ。様々なトレンドが見事にハマり、瞬く間に人気店とった【茶禅華】が、本年を代表すべきレストランであることは間違いない。
【茶禅華】-
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☎03-6874-0970
住:東京都港区南麻布4-7-5
価格:夜コース 18,000円(税・サ別)、ミックスペアリング 8,000円(税・サ別)
02 拡大するSNSの影響力
日本料理店【傳】と「アジアベストレストラン」1位のタイ【ガガン】のコラボディナー。ソースをゲストが舐めて食べる、という面白い趣向も
今回のアンケートでダントツに多かった今年のグルメシーンのキーワードは「SNS」だ。〝インスタ映え〟という言葉も一般的になり、ユーザーもインパクトのある料理を写真に撮ってはアップする事が当たり前。飲食店側も集客のツールとしての活用も日常だ。
放送作家の塩沢航氏は「お客は最新の情報を交換し、店側もドタキャンが出た席を埋めるために活用している。情報が拡散することで、交通の便が悪い地方の店まで人が殺到する。また、有名店を貸し切り、『SNS』を通じてメンバーを募集したりと、使い方も多様化しています。ただ、それによって、予約の取れない店が増えてきているのも事実。すべてが『SNS』の功と罪でしょう」と語る。
コミュニケーションツールとしての利用度の高さはご存じの通り。SNS の影響力はますます強くなるだろう。
03 多発する人気店同士のコラボイベント
【レストラン アニス】で開催された、【リストランテ ホンダ】とのコラボイベントの一幕。フレンチとイタリアンとの異業種コラボが実現
アジアベストレストランなどに代表される有名シェフたちが意気投合し、世界各地でイベントを積極的に開催している。国内でも、今年は、予約の取れない【傳】×アジアナンバーワンに輝く【ガガン】や、サステナブルを謳う【フロリレージュ】×タイのドイツレストラン【ズーリング】がイベントを開催し、多くの食通たちが集まった。そのほか、【リストランテ・ホンダ】と【アニス】など国内の飲食店同士のコラボも多数開催された。
新世代のシェフたちはジャンルや国国を超え交流し、お互いを刺激し合う。コラボイベン
トの特別メニューは、海外のフィーディーたちの訪日目的にもなっている。
04 大箱レストランの復権の兆し?
スペイン・バスク地方の三ツ星レストランのシェフがプロデュースした『ENEKO Tokyo』
ここ数年、小体なレストランの話題が多かったが、2017 年には再び、大手資本の100 席
を超える大箱の出店もチラホラ。6 月には、ニューヨークから【ベンジャミンステーキハウス】が六本木に初上陸。9 月には【ロウリーズ・ザ・プライムリブ】が国内3 店舗目を出店した。
【ENEKO Tokyo】の店内
一方で、席数は多少劣るが開放的な空間のダイニングに、多機能スペースも有する【ENEKO Tokyo】も登場。今年の後半から加速したこの流れ。過去の勢いを取り戻しつつある大箱にレストランの動向に注目。
【ENEKO Tokyo】-
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☎03-3475-4122
住所:東京都港区西麻布3-16-28 TOKI-ON 西麻布
価格:ランチ:10,000円 ~ 14,999円、ディナー:20,000円 ~ 29,999円
05 店の個性が現れるペアリング
【フロリレージュ】ではカクテルペアリングのコースを用意。ロースト玉ねぎとほうじ茶、ウイスキーをブレンドした一杯など、工夫を凝らしたカクテルと料理のマリアージュに驚きと感動が
今年のキーワードという質問に、多くの回答があったのがペアリング。以前まではワインが主流だったが、近年は【フロリレージュ】のカクテルペアリングを代表に、各レストラン独自のペアリングを提案。話題の【茶禅華】では、中国茶とワインや日本酒のミックスペアリング、【オルグイユ】のシャンパンペアリングなど、ボーダレスな考え方のペアリングが増えてきた。
グルマンたちは2017-2018年レストラントレンドをこう読む
今回のアンケートを通して、食通の方々が振り返る2017年のレストラントレンド、また予想した2018年以降のグルメトレンドを先取り! 食に長けた人たちが描くその未来予想図は?
秋山具義さん(アートディレクター)
Q 2017年のグルメシーンを一言で表現すると?
A インスタ映え!
Q 2017年、面白かったジャンルは?
A パン系。【えびすぱん】など、具材の豊富なコッペパンや、【エビス バインミーベーカリー】のように本場ベトナムの製法でつくるバインミーがブームに。パン系の面白いお店が多くできてきた。
Q 2018年、注目するレストランは?
名古屋の天ぷらの名店【くすのき】の東京進出! ほかにも、フレンチの【エクアトゥール】が夏の間だけ業態を変えるイタリアンの【カゲロウ】、【TIRPSE】が提案するとんかつフルコースの【つかんと】のような実験的なレストランが増えてきて欲しい。
秋山能久さん(【六雁】総料理長)
Q 2017年を象徴するキーワードは?
A コラボレーション。レストラン同士だけでなく異ジャンルとの交流も活発化した。
Q 2017年のグルメシーンを一言で表現すると?
A フェイスブックやインスタなど、SNSの影響力の高さ。ブロガーの仕掛けで予約が取れないお店になるという、怖い現状。
Q 2018年に秋山さんが目指すものは?
A レストランのダイバーシティ化。日本の奥底にあるものを料理人として伝えていきたい。伝統工芸なども含め、失われし者(物)にもう一度光を!がテーマだと思う。
大木淳夫さん(「東京最高のレストラン」編集長)
Q 2017年を象徴するキーワードは?
A カジュアル化とビジュアル化の拡大。実力派のシェフが、肩の力が抜けたカジュアルなレストランを成功させている。また、SNSの普及でいかに、「伝えたくなる」ビジュアルをつくれるのかも成功要素の大きな要因になっていると思う。
Q 2017年を象徴したレストランは?
A 【ペタンク】と【ボルト】。実力のあるシェフがジャンルを超えた「本物の旨いもの屋」をつくると新しいにカルチャーになると実感した。
Q 2018年のトレンドを予想すると?
A 大手フードビジネスの会社が巧妙に高価格帯のレストランを出店していく流れが増えると思う。
大橋直誉さん(【TIRPSE】オーナー兼クリエイター)
Q 2017年グルメシーンを一言で表現すると?
A インスタ! ユーザーがインスタに上げたくなる料理、例えば、鮨・とんかつ・うなぎなどが盛り上がっていると思う。
Q 2017年を象徴したレストランは?
A 【アンディ】。ベトナミアンというカテゴリーではあるが、料理、そして雰囲気を含めてガストロノミーだなと感じた。
Q 2018年のトレンドを予想すると?
Aデンマークのレストランで働いていたシェフのレストランが出来ることで『発酵』というワードが『実体験』として日本でも楽しめるようになるかもしれません。
尾山 淳さん(株式会社JO代表/【酒場それがし】ほか店舗経営)
Q 2017年を象徴するトレンドは?
A 日本茶とフュージョン。日本酒が世界を席巻し始めているように、日本茶も世界からクローズアップされた。また、【ガガン】(タイ)のように国籍などにとらわれない創作料理が増えてきている。
Q 2017年、衝撃を受けたレストランは?
A 【茶禅華】。数年勢いのある中国料理とお茶などのトレンドを絶妙に落とし込んでいた。
Q 2018年のトレンドを予想すると?
Aクラシックは永遠なり! と期待したい。
小寺慶子さん(フードライター)
Q 2017年、注目したトレンドは?
A クラフトジン。大手酒販メーカーが続々とクラフトジンを発表。街のバーでもマニアックなクラフトジンを扱うようになった。
Q 2017年、衝撃を受けたレストランは?
A 【茶禅華】。和魂漢才のテーマもセンスがよく、お茶とアルコールのペアリングも緻密だった。
Q 2018年のトレンドを予想すると?
洗練されたサーフ&ターフがブームの予感。
秋山具義(アートディレクター)、秋山能久(【六雁】総料理長)、 大木淳夫(「東京最高のレストラン」編集長)、大橋直誉(【TIRPSE】オーナー兼クリエイター)、尾山淳(株式会社JO代表【酒場それがし】ほか店舗経営)、 小寺慶子(フードライター)、小松宏子(フードジャーナリスト)、 塩沢航(放送作家「 アナザースカイ」ほか)、林亮治(【茶禅華】桃仙閣】代表)、マッキー牧元(タベアルキスト/『味の手帖』編集顧問)、 森脇慶子(フードライター)、 山田栄一(【スブリム】【コフク】オーナー)(敬称略/五十音順)
この記事を作った人
取材・文/盛岡アトム
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