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デートで行きたい町中華【ビーフン東/新橋】| ヒトサラBグルマン部 #12

“B級グルメ美食家”たちが集い、愛するお店を熱く語る「ヒトサラ Bグルマン部」。今回のテーマは、「女性と行きたいお店 ~町中華編~」です。ちまきとビーフンが大人気の、新橋のお店【ビーフン東】をご紹介します!

デートで行きたい町中華【ビーフン東/新橋】| ヒトサラBグルマン部 #12

Bグルマン部 今回のテーマ
「女性と行きたいB級グルメ店 町中華編」

こんにちは、ラグジュアリーメンズ誌『THE RAKE 日本版』のファッションエディター、藤田です。
この連載が始まってから、仕事関係や友人のみならず、週末には妻までもが町中華へ誘ってくれるもんだから、毎日、毎日、毎日、町中華。各方面から素晴らしい援護射撃を受けております。

さてさて、今回頂戴したお題は、デートで行きたい町中華。
もうね、これだけ通ってりゃ、そんなの1秒で答えがでてくるわけですよ。
迷うことなく新橋の名店【ビーフン東】です。

新橋駅前ビル1号館が竣工した
昭和41年から営業【ビーフン東/新橋】

    昭和21年、大阪でオープンし、昭和26年に東京の新橋に進出。新橋駅前ビル1号館が竣工した昭和41年にここへ移り、今も営業し続けている

    昭和21年、大阪でオープンし、昭和26年に東京の新橋に進出。新橋駅前ビル1号館が竣工した昭和41年にここへ移り、今も営業し続けている

「ビーフン東(あずま)って知ってます?」
美食家のオネエサマに尋ねたことがある。

「プロボクサー?」と彼女はまさかのカウンターパンチを返してきた。
レパード玉熊、ユーリ海老原、ピューマ渡久地あたりから連想したのだろうか。

硬直してたら間髪入れずに「それともお笑い芸人?」と被せてきた。
それって、エスパー伊東とかラッキィ池田とかチャーリー浜とかゴージャス松野的な?

確かに言われてみれば、どっちの世界にもいそうである。

あまりのオドロキに目をパチクリさせてたら、今度は「じゃあプロ野球選手?」ときた。
大好きだったジージー佐藤を筆頭に、デニー友利やデーブ大久保もいたしなぁ。

いちいち的を得ている気もしたが、これ以上クラクラしたくなかったので、「新橋のビーフン屋です!」とシャットアウトしておいた。

    プロボクサーでもお笑い芸人でもプロ野球選手でもない。【ビーフン東】は新橋のビーフン屋さん

    プロボクサーでもお笑い芸人でもプロ野球選手でもない。【ビーフン東】は新橋のビーフン屋さん

オネエサマの正体は、世界中の一流レストランを食べ歩いている、ヒトサラ編集部のヤマジフクヘン(原稿を書いている最中、名前を出していいか本人にメールしたら、スペインで爆食い中だった)。
美食家の彼女には、町中華は完全に未知のジャンルのようである。

ということで、フクヘンをビーフン東に連れていった。

    夜の部がオープンする17時前には、いつも数名の客が並んでいる。だいたい18時30分頃には満席になる。昭和情緒たっぷりの雰囲気がたまらなくいい

    夜の部がオープンする17時前には、いつも数名の客が並んでいる。だいたい18時30分頃には満席になる。昭和情緒たっぷりの雰囲気がたまらなくいい

僕がフクヘンと待ち合わせたのは、午後4時55分。

仕事で忙しい時間帯ではあるが、【ビーフン東】の、老舗ならではのピンと張り詰めた空気が漂っている開店時間17時の雰囲気が大好きだからだ。
ひとりカウンターに座してビールをちびちびやりながらビーフンを食べ、30分くらいでサッと席を立つ何十年と通ってそうなご老人とか、この時間帯は粋なひとり客もちらほら。
料理人は皆、阿吽の呼吸で寡黙に料理していて、そんな姿にもワクワクする。

    17時のオープン直後の店内。築52年のビルだが、厨房はピカピカ。木の食器棚に整然と並んだお皿が美しい

    17時のオープン直後の店内。築52年のビルだが、厨房はピカピカ。木の食器棚に整然と並んだお皿が美しい

フクヘンも同じことを嬉しそうに言っていたので、女性と行く町中華店として、お店の雰囲気に関しては合格のようだ。

まずは瓶ビール。サッポロ、キリン、アサヒ、サントリーが揃っている。

    『ザーサイの浅づけ』500円(税別)は超あっさり系。ビールがよく進む

    『ザーサイの浅づけ』500円(税別)は超あっさり系。ビールがよく進む

ビールが進むあっさり味の『ザーサイの浅漬け』、豚のバラと肩の肉に下味をつけて4日半陰干しし、ゆっくりと油で火を入れた自家製の『エンチェン』、ピータンときゅうりを豆腐で白和え風にして揚げワンタンの上にのせた『ピータン豆腐 カリカリワンタンのせ』あたりを頼んでゆ~っくりつまむのが僕のスタイルだ。

  • 『エンチェン(台湾風 豚の腸詰め)』700円(税別)は、ほとんどの人が頼んでいる、創業時からの人気メニュー。浜納豆の特製ダレがアクセント

  • カナッペ風の『ピータン豆腐 カリカリワンタンのせ』600円(税別)は、干しエビが乗っていて優しい味。上に垂らした香味甘醤油とのハーモニーが絶妙

ちなみに6時半過ぎには界隈のサラリーマンでほぼ満席になってワイワイガヤガヤの雰囲気になる。

絶対に外せない
『台湾風 黒酢の酢豚』

まったりつまんでエンジンがかかってきたら、いよいよガッツリ系に突入したい。

僕がオススメしたいのは、『台湾風 黒酢の酢豚』。
赤子の拳大サイズに切られた豚のバラ肉をさっくりとした薄めの衣で揚げて甘酢をまとっている絶品のひと皿なのだ。
かなりのボリュームで肉に油がしっかり乗っているが、思ったよりしつこくなく、僕はひとりのときでもこれをペロリと平らげる。

    『台湾風 黒酢の酢豚』1,600円(税別)

    『台湾風 黒酢の酢豚』1,600円(税別)

高級中華料理店の黒酢の酢豚が読売ジャイアンツの原辰徳だとしたら、【ビーフン東】のそれはヤクルトスワローズの八重樫幸雄といったところか。
体格のゴツさ、渋いビジュアル渋さ、圧倒的なパワーに加え、見る者を魅了するあのオープンスタンスの個性的なバッティングフォームは、当時小学3年生だった僕を大いに魅了した。

ビーフン東の【台湾風 黒酢の酢豚】は、まさに八重樫幸雄そのまんまといった感じの、強烈なインパクトを備えたひと皿なのである。

ちなみに僕が連れていった友人たちは、フクヘンを含め、皆この酢豚を絶賛していた。

看板メニューのビーフンは8種
「焼き」か「汁」かを選べる

    『五目ビーフン(焼き)』850円(税別)

    『五目ビーフン(焼き)』850円(税別)

いよいよ【ビーフン東】の主役であるビーフンの時間だ。

ビーフンは、五目、肉ロース(煮豚)、鶏肉、エビ、野菜、あんかけ、蟹玉、五色の計8種類があり、「焼き」か「汁」かを選べる。
どちらかひとつをオススメしたいところだが、甲乙つけがたいほど美味しく、ふたつを食べてこそ感動が倍増する。

僕がよく頼むのは、『五目ビーフン(焼き)』と『鶏肉ビーフン(汁)』。
どちらもあっさり薄味系だが、それでもじわりと旨味が口の中に広がる。
フクヘンと行ったときもこのふたつを注文した。

まずは、『五目ビーフン(焼き)』から。

    卓上のにんにく醤油をかけて食べるようオススメされるが、僕はそのまま食べるのが大好きだ

    卓上のにんにく醤油をかけて食べるようオススメされるが、僕はそのまま食べるのが大好きだ

具は白菜、うずら卵、豚肉、人参、ピーマン、たけのこ、しいたけ、海老。
ビーフンは鶏ガラと野菜のスープと一緒に戻してから炒めているので、旨味がうっすらしみ込んでいる。

あまりに優しい味で美味しかったのか、フクヘン自ら『鶏肉ビーフン(汁)』も食べてみたいと言ってきた。
望むところである。

    『鶏肉ビーフン(汁)』850円(税別)

    『鶏肉ビーフン(汁)』850円(税別)

『鶏肉ビーフン(汁)』の具は、ピーマン、鶏肉、ネギ。
鶏ガラと野菜のダシがしっかり出ているスープが滋味あふれる優しい味で、本当に幸せな気分になれる。

満腹気味でも、食べだしたらやめられない、止まらない。
一瞬にして完食してしまうこと必至だ。

舞台はまだ終わっていない
『バーツアン』が待っている

    『バーツアン(台湾風ちまき)』700円(税別)

    『バーツアン(台湾風ちまき)』700円(税別)

【ビーフン東】にはもうひとつの主役があるのを忘れてはいけない。

「バーツアンをお持ち帰りでお願いします」
僕は言った。

そしたら、フクヘンは「えっ、今からおばあちゃんをお持ち帰り? アフター?」と強烈な天然っぷりを発揮してきた。

お店の2人のマダムは全然お若いし、そういう店じゃないし~。

バーツアンとは台湾風ちまきのことで、ここのもうひとつの看板メニューである。

もちろん、食べて帰ってもいいが、ビーフン2発で満腹だろうし、ここはスマートにお土産にして渡してあげるのが、女性には効果的だ。

    味付けはしっかりめだが、ラードが控えめなのでさっぱり食べられる。もち米の中に、豚の角煮、うずら卵、しいたけ、ピーナッツがゴロッと入っている

    味付けはしっかりめだが、ラードが控えめなのでさっぱり食べられる。もち米の中に、豚の角煮、うずら卵、しいたけ、ピーナッツがゴロッと入っている

結論。グルメなフクヘンもかなり満足そうに「ビーフン東、また行きた~い」を連発していたし、オトナの女性を町中華に連れていくなら【ビーフン東】で決まりである。

    2代目の東 俊治さん。3代目は大阪で、昼はビーフンと中華ちまきの【ビーフン東】、夜はビストロ&中華の【Az(アズー)】として営業している

    2代目の東 俊治さん。3代目は大阪で、昼はビーフンと中華ちまきの【ビーフン東】、夜はビストロ&中華の【Az(アズー)】として営業している

【ビーフン東】

  • 電話:03-3571-6078
    住所:東京都港区新橋2-20-15 新橋駅前ビル1号館2F
    アクセス:JR線「新橋」駅 汐留口から徒歩2分
    都営浅草線「新橋」駅 A2出口から徒歩3分
    東京メトロ銀座線「新橋」駅 2番出口から徒歩3分

  • 営業時間:11:30~13:45(L.O.)、17:00~20:30(L.O.)
    土曜は11:30~13:15(L.O.)
    定休日:日曜・祝日

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この記事を作った人

藤田 雄宏(THE RAKE JAPAN)

1975年、東京都中野区生まれ。ラグジュアリーメンズ誌『THE RAKE日本版』 副編集長。ナポリの仕立て服を愛するあまり、2015年はナポリに駐在。毎日パスタを食べていた反動からか、帰国後、無類の町中華好きに。「独自の進化を遂げた町中華は日本の伝統食文化だ」が口癖。

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