アツアツの料理と楽しむなら、冷え冷えのアルザスワイン!
秋が深まり、冬の足音が聞こえてくると煮込み料理などが恋しくなります。体をほっこりと温めてくれるアツアツの料理と相性がいいのは、意外や意外、実はフランスのアルザスワイン。人気店の3人のシェフに魅惑のアルザスワインとアツアツの料理のマリアージュを教えてもらいました。この季節、新たな美味しさを発見してください。
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恵まれた気候風土から生まれる、多様性豊かなアルザスワイン
アルザスワインを、秋から冬の熱々の料理に合わせたい理由
アルザスのリースリング × 世界の肉じゃが・和風/【LU-NO-YA】
クレマン・ダルザス × 海鮮炊き込み御飯/【銀座しもじ】
アルザスのゲヴルツトラミネール × 海鮮おこげ/【赤坂四川飯店】
アルザスワインとは、フランスのアルザス地方で産出されるワインです。アルザス地方はフランスで最も北に位置し、また乾燥した産地であり、ブルゴーニュやボルドーなどとも肩を並べる銘醸地です。では、アルザスワインにはどんな特徴があるのでしょうか。これらの特徴のなかに、秋から冬の、熱々の料理に合う秘密があるのです。
ドイツ国境に位置するアルザス地方は、フランスのワイン産地の北限の1つ。冷涼な気候でありながら、ヴォージュ山脈の斜面に広がる畑で、夏から秋にかけて太陽の恵みを存分に受けてブドウが育ちます。
©VUANO-ConseilVinsAlsace
恵まれた気候風土から生まれる、多様性豊かなアルザスワイン
1つは、高緯度がもたらす冷涼な気温によって、エレガントな酸を豊富に湛えるワインが生まれることです。 そして、大陸性気候によって降水量が少ないのもこの地方の特徴。西側に位置するヴォージュ山脈の斜面に広がるワイン産地では、夏と秋が穏やかに長く続き、晴天に恵まれます。そのため、ブドウはゆっくりと成熟して熟度が高くなり、しっかりとした華やかなアロマと、どこかとろりとした酒質のワインに仕上がるのです。
さらにアルザス地方は、花崗岩や石灰質、砂岩、火山性の堆積物などがモザイク状に入り組んだ土壌を持ちます。アルザスワインはフランスでは珍しく、リースリング、ピノ・グリ、ゲヴルツトラミネールなど品種名でワイン名が表記されています。多様性のある土壌から、多様な品種の個性を引き出したワインを生み出しているのです。
食材の宝庫であり、美食の都と言われるアルザス地方。特にシュークルートなど、熱々の煮込み料理には定評があります。もちろん、そこに欠かせないのはアルザスワインです。
アルザスワインを、秋から冬の熱々の料理に合わせたい理由
煮込み料理や鍋、炊き込み御飯に揚げ物やロースト……熱々の料理を思い浮かべてみてください。口に含んだ瞬間、熱とともに脂や塩味、甘味などが強く舌を刺激します。これを冷えたアルザスワインがスッキリさせるのと同時に、エレガントな酸が塩味や甘味を緩和して見事にバランスを取ってくれるのです。また、とろりとしたワインの感触は、こってりした料理にも決して負けません。
秋から冬は滋味深い食材が豊富になり、素材に合わせてワインを選択したくなるもの。食材の香りや味わいに合わせて、個性豊かな品種のワインとの相性を試す、といった楽しみ方ができるのは、アルザスワインならではなのです。香りを楽しむ食材も増えますから、柑橘、花、スパイスなどアロマのバラエティも豊富なアルザスワインとともに、香りのマッチングを意識してみるのもとても面白い試みです。
加えるならば、アルザスワインのボトルの見目麗しさも特筆すべきものがあります。カテドラルの尖塔のように高く伸び、フィネスが備わったフルートボトルはテーブルを華やかに彩ること間違いありません。シンパシーを感じる人々と、夜の長い時間を熱々の料理とともに過ごす。そんなときにこそ、テーブルにアルザスワイン、がお勧めです。
では、実際にどんな熱々の料理をアルザスワインに合わせるべきなのでしょうか。創作料理、和食、中華の人気店に、アルザスワインに合わせる料理を紹介していただきました。
アルザスのリースリング × 世界の肉じゃが・和風/【LU-NO-YA】
1店目は、恵比寿にある創作家庭料理の店、【LU-NO-YA】です。2017年12月に開店したばかりの、渋谷の一軒家を改装した隠れ家的レストラン。宇留野智シェフのキャリアはパティシエに始まり、その後、イタリアンや居酒屋などさまざまな業態で腕を磨きました。それだけに、1つのジャンルに留まらない幅広い個性豊かな料理を楽しませてくれます。
宇留野シェフの料理人としての多様なキャリアが、多様な創作料理を生み出します。独創性の高い盛りつけには、パティシエで培ったスキルが生きています。
そんな宇留野シェフがアルザスワインに合わせてつくってくれるのは、『世界の肉じゃが・和風』。
『世界の肉じゃが・和風』
たい焼きの正体は、ジャガイモ。甘くなめらかなキタアカリを使うことで、アルザスワインとのシナジーがより豊かなものになります。
写真を見ると、「肉じゃが?」と目を疑いますが、真ん中に鎮座する「たい焼き」がジャガイモでつくられています。使っている品種は、キタアカリ。「キタアカリが持つなめらかさと甘さを強調するために、一度マッシュしたポテトを生地として使って、たい焼き風に焼き上げています」と、宇留野シェフはそのこだわりを話します。
その他の素材は、人参、タマネギ、白滝。白滝もそもそもはこんにゃくいもですから、ジャガイモも含め、ワインによく合う根菜がポイント。「ここに、アルザスワインとの相性がよい秘密があります」(宇留野シェフ)。
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AOCアルザス リースリング 2016 カミーユ・ブラウン
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今回、宇留野シェフが選んだのは、アルザスのリースリング 2016 カミーユ・ブラウン。アルザス地方のオルシュヴィール村に本拠地を置く、2005年からビオディナミに開眼し栽培を転換した、自然派ワインのつくり手です。ここでつくられるアルザスのリースリングは、熟した洋ナシやネクタリンの果実味とアロマ、酸、ミネラルが溶け込んだ上品な味わいを特徴とします。
「根菜独特のミネラル、かつお節や昆布で取った出汁のミネラルが、このリースリングの持つミネラル感と絶妙にマッチします。そして、味付けに使う砂糖や根菜由来の甘味が強い料理なので、あえて少し残糖のあるワインを選んでいます。砂糖、根菜、ブドウというそれぞれ異なる甘味が絡まり合って、より複雑な味わいになるのです」(宇留野シェフ)。
アクセントに乗せた長ネギの香りも、熱々の料理の上昇気流によって漂ってきます。「この香りと、リースリングの香りを一緒に楽しんでほしい」(宇留野シェフ)と、ミネラル、甘味、香りとその楽しみ方の広がりを教えてくれました。
クレマン・ダルザス × 海鮮炊き込み御飯/【銀座しもじ】
2店目は、和食の名店、しもじ。築地の老舗料亭・河庄双園の料理長を務めた下地智料理長が2017年3月に開業したばかりのお店です。伝統的な懐石料理の技法を取り入れながら、季節の野菜や魚介を生かした旬を感じる料理とワインのマリアージュを提案しています。
伝統的な懐石料理の技法と、ワインのマリアージュの探求に力を注ぐ下地料理長
ワインをよく知る下地料理長の提案は、海鮮炊き込みご飯。アルザスワイン、特にアルザス地方で造られるスパークリングワイン、クレマン・ダルザスに合わせるために、「さまざまな趣向をこらしています」と、下地料理長は語ります。
「ホタテ、ホッキ貝、蛤、ボイル蝦、鯛、椎茸を出汁で炊きます。この出汁は、貝類の旨味を引き出すために、羅臼昆布とサバ節で取る通常の出汁ではなく、真昆布と鰹で取った出汁を使っています。これをベースに、具材にもなるホタテとホッキ貝をあらかじめ煮出して取った貝出汁を加えています」(下地料理長)。
甘味とほどよい粘り気がある魚沼産コシヒカリとともに炊き上げたあと、蛤のあんかけをかけます。この炊き込みご飯には、何種類もの貝の旨味がギュッと凝縮され、それぞれがそれぞれの個性を高め合っているのです。
貝の旨味が凝縮された、香り高い炊き込みご飯。口中に広がるその香りをクレマン・ダルザスの香りがより高めます。同時に、クレマン・ダルザスが料理の熱を冷まして、素材の味わいをじっくりと楽しめる温度に落ち着かせます。
この料理と合わせるのは、クレマン ダルザス・ブリュット NV ジョセフ・グリュス・エ・フィス。1962年創業。エギスハイム村に本拠地を持つ歴史ある家族経営の生産者で、手摘みと自然発酵にこだわり続けています。ピノ・ブラン主体でつくったクレマン・ダルザスは、きめ細やかな気泡、フレッシュで伸びのある酸とピュアな果実味、ミネラルが身上です。
熱々のほっこりとしたお米の食感と、クレマンの泡の食感、さらに貝のこりこりとした食感……口中での食感のメリハリが楽しいマリアージュでもあります。
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AOCクレマン・ダルザス・ブリュット NV ジョセフ・グリュス・エ・フィス
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「貝とその出汁に凝縮された豊富なミネラルと旨味は、アルザスワインが持つミネラルのニュアンスにはもちろん、クレマン・ダルザス独特のアミノ酸の旨味や熟成感とよく合います。そして、貝が本来持つ酸味、薬味で散らした三つ葉の苦みが、ピノ・ブラン由来の酸味、苦みとシナジーします」と、下地料理長。
住所:東京都中央区銀座8-8-6 銀栄ビルB1
電話:03-3571-6776
営業時間: 昼 11:30~14:00、夜 18:00~23:00
定休日:日・祝日
予算:昼 6,000円~8,000円、夜 10,000円~15,000円
アルザスのゲヴルツトラミネール × 海鮮おこげ/【赤坂四川飯店】
最後は、中華の名店、赤坂四川飯店です。「四川料理にワイン?」と思う方もいるかもしれませんが、辛み、甘味、苦み、酸味、塩味など複雑な味わいで構成される四川料理は、多様性に富んだアルザスワインととても相性がいいのです。
日本に初めて本格四川料理を紹介した赤坂四川飯店は、自家製醤や香辛料を駆使した深みのある味わいの料理に定評があります。田中良司シェフは、同店で28年働く生え抜き。真髄を知り尽くした田中シェフの料理と、無津呂慶ソムリエが厳選した、多様なワインを楽しめます。
赤坂四川飯店の生え抜きとして、四川料理の真髄を知り尽くす田中良司シェフ
熱々の四川料理と言えば、おこげ。今回は、アルザスのゲヴルツトラミネールと合わせて海鮮おこげを提案してくれました。
あんかけのあんに使用するのは、ホタテ、海老、マッシュルーム、いか、枝豆、黄ニラ、筍。これを、白湯(シャンタン)とわれる鶏ガラをベースとしたスープで煮ます。
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ソムリエ 無津呂慶氏
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「四川料理の真髄とも言うべき辛味、酸味の味覚には甘味、酸味、苦味のあるアルザスのゲヴルツトラミネールがおすすめ。魚介類の旨味が出て、鶏と魚介のダブルスープのようになって、より複雑性の高い旨味で構成されたあんかけと相性は抜群ですよ」(無津呂ソムリエ)。
複雑な味わいのあんかけを、とろりとした酒質のゲヴルツトラミネールが包み込みます。白胡椒の刺激的な味わいも、ゲヴルツトラミネールの持つスパイスのニュアンスと同調します。
この複雑な旨味が、無津呂ソムリエが選んだゲヴェルツトラミネール 2016 トリンバックが持つ複雑な旨味とよく合うというのです。トリンバックは、リボヴィレ村で1626年から良質なワインをつくり続けるワイナリーです。辛口タイプのアルザスワインを世に広めた立役者でもあります。このゲヴェルツトラミネールは、果実味、酸味、ミネラルが見事に調和し、複雑なスパイス感も感じられる個性的なワインです。
海鮮のあんの味つけは、塩、酢、白胡椒。四川料理が重視する、塩味、酸味、辛味の要素が表現されています。塩味は、ミネラルと強くつながります。
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AOCアルザス ゲヴルツトラミネール 2016 トリンバック
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「この料理のバランスと、ゲヴェルツトラミネールが持つ酸味と胡椒のような苦み、ミネラルのバランスは相似形。合わせるには最適です。また、中華料理には独特のとろみ感があります。このワインが持つとろりとした酒質の強さと相まって、リッチな感覚が味わえるのも魅力だと思います」(無津呂ソムリエ)。
住所:東京都千代田区平河町2-5-5 全国旅館会館5F・6F
電話:03-3263-9371
営業時間:昼 11:30~15:00、夜 17:00~22:00
定休日:無休
予算:昼 1,000円~2,000円、夜 7,000円~10,000円
加藤 勝也
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